狼たちの午後
2014年08月08日 金曜日シドニー・ルメット監督、アル・パチーノ主演の1975年の映画「狼たちの午後(Dog Day Afternoon)」。
1972年に実際に起きた銀行強盗を原案にしている。
銀行強盗に入った二人だったが、警察の早過ぎる包囲で立て籠もる事に。
「狼たちの午後」という題名なのでホードボイルドでキビキビした話かと思ったら、始めから強盗一味の一人が「出来ないよ…」と言ってあっさり帰ったり、顔も隠さず名前で呼び合ったり、銀行の金庫には千ドル位しかお金がなかったり、アル・パチーノが「言葉使いが悪い」と行員に説教されたり、犯人の一人が「飛行機乗った事無い」と心配したりと、緊張感のあるドキュメンタリー風な演出なのに終始話がコメディなので間が抜け過ぎ。真面目にサスペンスを見せたいのか、笑わそうとしているのかさっぱり分からない。中途半端。
それに行き成り警察が包囲したけれど、何故警察は分かって急行したのかは最後まで謎のまま。そこって結構重要な部分じゃないの?この映画、その年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したけれど、何がそんな評価する所があるのだろうか?ダラッと進み、グダグダと盛り上がりも無いままだし。登場している人々は皆抜けていたり、頭がおかしかったりで、全ての人間は馬鹿だと言う批判で、そんな人々を見て何だかんだ言ってる観客も遠巻きから騒いでいた人々と同類でしかないと言う批判という事なのだろうか?
一番の場面は、アル・パチーノが銀行の表で「アティカ!アティカ!」と煽ると周囲の群集が彼に賛同して騒ぐ所。この時代のアメリカだからなんだろうけれど、警官は何でもいいから殺そうとする悪者で、人々の不満が溜まっている時代性もあっての今見ると意外な反応に関心が行った。単なるアホな犯罪者も少し社会的な問題提議すると世間の代弁者のヒーローって、皆は非常に素直過ぎで頭おかしい時代。
それに報道の人々が直ぐ近くでテレビカメラを回したりしているのも今見ると信じられない。犯人と警察が交渉している直ぐ後ろで写真撮ったりテレビカメラ回して報道していたり、銀行の入り口直ぐ近くの二階からインタビューしたり、直通でテレビ番組から電話がかかって来て応答したり、関係無い人が簡単に犯人に近づけたりと、警察の対応の緩さは一体何なんだ?やたらと警官を周囲に配備しているけれど、銀行の外で犯人と普通に交渉してたりするのは、権威をおちょくった社会批判なのかしら?
話は特に展開もせず、ダラダラと立て籠もりとちょっとした小話を入れるだけで大しておもしろくないけれど、主演のアル・パチーノの存在感や演技力は流石に見入る。「ゴッドファーザー」「ゴッドファーザー PART II」の後の映画だけれど、アル・パチーノが若く見える。その分強烈な印象は薄れているけれど、何時もの瞬きしない恐ろしい目力は強烈にある。なので、こんな人物がこんなアホな犯罪者って、あんまり説得力は無い。
この映画で一番の発見は、アメリカでも銀行は三時に閉まるんだな…って事。
この映画もアメリカン・ニューシネマなんだろうけれど、アメリカン・ニューシネマって今見るとさっぱり良さが分からない。この映画みたいに、頭の悪い主人公が特に考えもせず尻拭い的に行動しているのを見ても「だから?」で終いなんだよなぁ。アメリカン・ニューシネマって当時の雰囲気は掴めるとしても、映画に入れられた社会批判等々は時代のあだ花的な生もので、当時に見ていないと今見てもさっぱり響かない。
☆☆★★★