ジャッカル

2014年08月09日 土曜日

マイケル・ケイトン=ジョーンズ製作・監督、リチャード・ギアブルース・ウィリス共演の1997年の映画「ジャッカル(The Jackal)」。
フレデリック・フォーサイスの小説「ジャッカルの日」を原作とした1973年の映画「ジャッカルの日」のリメイクだけれど、小説「ジャッカルの日」とは時代背景等は大きく違うし、1973年の映画「ジャッカルの日」とも大きく違うそう。

ロシアでのロシア内務省とFBIの合同捜査中に弟を殺されたチェチェン・マフィアのテレクは、復讐の為に存在さえもほとんど知られていない暗殺者ジャッカルを雇った。合同捜査班はテレクがジャッカルを雇った事を突き止め、ジャッカルと会った事があると言うアメリカの刑務所に入っているIRAのスナイパーのデクラン・マルクィーンに協力を求めた。

リチャード・ギアとブルース・ウィリスという二大俳優の共演という話題性はあるけれど、話自体はおもしろくない。二人の対決が見せ場なのに後半まで二人が戦う事が無いのはいいにしても、終盤までジャッカルがどうやってアメリカまで気付かれずに入国して、無駄に大きな銃を手に入れるかという説明の話ばかり。一方のジャッカルを追って行くFBIの捜査は「こんな情報が出て来たから、ジャッカルは何処何処にいるんじゃなかろうか…」という相談ばかりで、実際に現場で追い詰めて行くおもしろさがなく、FBI側の追跡が終始ダラッと流れてしまう。本来なら映画「逃亡者」の様な、すれ違い、罠をくぐり、逃げつ追いつきの駆け引きで二人を見せる所なのに、その駆け引きが一切無いまま終盤の直接対決まで持って行くのだから、終始盛り上がりが無い。
脇役にFBI捜査官役としてシドニー・ポワチエが入っているけれどほとんど活躍もなく、テロリストであるリチャード・ギアを信じていない所から信頼出来る仲間になるまでの改心の流れがほとんど描かれもしないので、折角のシドニー・ポワチエも活きて来ない。
ロシアからのコスロヴァ少佐役のダイアン・ヴェノーラも存在感は抜群にあるけれど、彼女も思った程活躍しないまま途中退場してしまうし。彼女の役は出来る風だけれど、ジャッカルを寸での所で取り逃がしてしまったり、ロシア側に内通者がいるのに気付いていなかったりと、意外とアホな部分が多いのも変な役柄。
ジャッカルと言う凄腕の暗殺者にしても、二十年以上ほとんど人に知られず、顔を見られた事もあるのも数人だけというトンデモない設定の割に結構脇が甘い。他人のパスポートを監視カメラがあるだろう空港で盗んだり、何度も銃の自動台座の設計図を返せと言っていたのに制作者の所で設計図を探しもせずに行ってしまったので案の定リチャード・ギアに見つけられるし、作戦失敗したらとにかくそのまま銃を撃ち続けるという無能っぷりでトンズラしようとするし。この役はブルース・ウィリスだからアホっぽい…とつい思いがちだけれど、脚本の緩さだよなぁ。
リチャード・ギアの役も凄腕のスナイパーだったのに、その設定を活かした場面が無く、実際にスナイパーライフルで狙撃するのは隣について来た、今ややたらと色んなテレビドラマで見かける人ダニエル・デイ・キム演じる軍人にスナイパーライフルを渡して撃たせてしまい見せ場を放棄する始末だし。
で、結局この事件の首謀者だったマフィアのボスはそのまま?どうなったの?

この映画の一番の見せ場は、今ややたらと色んな種類の映画に顔を見せる俳優ジャック・ブラックが、半ケツで泥まみれになりながら逃げ回り、一斉射撃で撃ち殺される所。シドニー・ポワチエよりもおいしい場面があるって一体何の優遇?

これ見ていて思ったのは、リチャード・ギアとブルース・ウィリスが演じる役は逆の方が良かったかも。ブルース・ウィリスは非常に冷静で、変装・偽造等様々な手段を駆使して世界を飛び回る殺し屋で、まあまあな感じではあるけれどブルース・ウィリスのはっちゃけ感が無くて良さが全然出ていないし、一方のリチャード・ギアの方の役は捕まったテロリストという影は全然見えて来ず、復讐と真面な人生を歩もうとしている結構熱い感じの人物ではあるけれど、それも台詞で言っているだけで演技や人物像からはそんな事も見えて来ない。だったらリチャード・ギアが寡黙で冷酷な殺し屋。ブルース・ウィリスが元テロリストの粗暴さもあるスナイパーの方が良かったとしか思えない。

この映画、リチャード・ギアとブルース・ウィリス共演という話題性以上のモノが一切無い脚本の出来の悪さ。話ははつまらないし、二時間以上ある割に平板過ぎて盛り上がりが無いし、各人物を活かした展開もないし、まあそうなるだろうなぁという展開しかない。「これで行ける!」と思った製作陣は何がどうしたんだろうか?
この映画の評判は内容通りで良くないけれど、この前の映画「ジャッカルの日」の方を見てみたい。こっちの「ジャッカル」はやたらと何回も民放のテレビ局で放送している気がするけれど、「ジャッカルの日」の方は放送していたという記憶が無い。「ジャッカルの日」は上映時間が143分、二時間半近くもあるからテレビの放送枠的に難しいのかもしれないけれど。

☆☆★★★

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