ラスベガスをぶっつぶせ

2014年08月10日 日曜日

ケヴィン・スペイシー製作・出演、ロバート・ルケティック監督、ジム・スタージェス主演の2008年の映画「ラスベガスをぶっつぶせ(21)」。
ベン・メズリックの小説「ラス・ヴェガスをブッつぶせ!」が原作。

大学生のベン・キャンベルはハーバード大学医学大学院に合格した数学の天才だったが、普通の母子家庭だった為に授業料と生活費が問題だった。奨学金に応募したが特筆する経験が無い為に奨学金も受けられそうにはなかった。そんな中、数学のミッキー・ローザ教授がベン・キャンベルの才能を見出し、自分と生徒数人でカード・カウンティングという捨てられたカードの暗記と残りのカードの予測をする方法を用いてブラック・ジャックで一儲けしようとする計画に誘われる。

この映画、製作総指揮に、あの「どの映画も平均点行くか行かないかの映画しか作らない」でお馴染みのブレット・ラトナーが入っていたので不安だったけれど、やっぱり「それなりにおもしろくはあるけれど、大しておもしろくもない」という映画。導入で結構つまづき、その後の意外性の無い展開でやっぱり大しておもしろくない。
分かり難いのがカード・カウンティング。作中で特に詳しい説明の無いまま進んで行くので、「だからカウントって何?」状態で、早い段階で置いて行かれる。一時停止してインターネットで調べてみて、「10以上の絵札は-1点。7~9のカードが0点。2~6のカードが0点として、捨てられたカードの合計がプラスで大きければ大きい程プレイヤー側に有利になるので掛け金を増やす」という手法だと知る。「成程ねぇ…」とは思うけれど、でもこれって、カウントの大きい時は大きく賭け、カウントの小さい時は少なく賭けてばっかりいると直ぐカジノ側にバレてしまうだろうから、その賭け具合を時々大きく負けたり、小さく勝ったりしないといけないのに、そこら辺の訓練は一切無く、本来ならそれをかつてギャンブラーだった教授が教えるはずなのにそこが無いのが疑問。そこら辺の細かい賭けの技術が描かれないので、教授がただ方法を教えて生徒が稼いだお金を巻き上げている様にしか見えない。教授って結局何してたんだろう?中盤から教授の話に何の説得力も無いし、やっぱりクソ野郎でしかなくなるし。そもそも、普通の人ならケヴィン・スペイシーが「儲かる!」と言う胡散臭い話を持って来た時点で怪しむし、普通は乗っからないよなぁ…。

話も実際に賭けをするのが大学生なので、どうしても頭の悪さの部分が出てしまい、そこでの爽快感が無くて青春映画になってしまうのもどうにも気に入らない所。初っ端からして、誕生日ケーキにフィボナッチ数を書くって、必死に頭良い感じを出してはいるけれど、その感じの頭の悪さと言うか、演出的なハッタリがどうにも安いし、大学生だから儲かればすぐ調子に乗って使いまくるし、チップの換金に大勢のストリッパーを使ったりと、どう考えてもカジノ側に怪しまれる事しかしないし。
主人公の恋愛話も、驚く程真っ直ぐ過ぎる展開でしかなく、冴えない大学生を描くにしては普通過ぎてつまらない。各人物の描写も薄いので見た目の印象は強いのに人物としての印象が結構薄いのも、更に脚本の薄さを強調してしまう。
それに構成もいまいち。初めに何かあって逃げ出し、カジノ側に捕まる場面が描かれるのに、そこに至るまでが長く、失敗するのが分かっていて、そこからの逆転劇がるのも分かり切っているのに、その予想を超えない展開が続くのは結構疲れる。意外性を狙う話なのに、脚本の構成や展開に全然意外性が無い。
賢いけれど冴えない大学生だった主人公に初めは共感性は高かったのに、徐々に金持ちになり始め、最終的に元々の友達とも何故か復縁したし、恋人も出来たし、お金も稼げる様になったし…っで、いけ好かない奴に落ちて行き、どんどん主人公に対する共感性が失われ、見ている方はシラッとして終わってしまう脚本の拙さばかりが目立つ。

主演のジム・スタージェスの演技は良い。至って真面目に生きて来た大学生の感じが本当に良く出ている。奥手な感じとか、始めのおどおどして不安な感じ、緊張しながらも小慣れて行く感じとか非常に上手い。そして驚いたのが、ジム・スタージェスはこの時30歳。おっさんなのに大学生見えるのは凄い。
ケヴィン・スペイシーはやっぱりクソ野郎を演じさせると上手い。ケヴィン・スペイシーって、実際もクソ野郎なんじゃなかろうか?とまで思わせる。

それにしても邦題は酷いな。まあ、邦題が酷いのは他の映画でもよくある事だけれど、この映画、ラスベガスをぶっつぶそうとしてないじゃん。原題の「21」って、大学卒業前の21歳とブラック・ジャックの21をかけている題名で結構意味があるのに…。

この映画、事実を基にしていて、それを脚色しているとは言え、綺麗な作り物感が見え見えな上にそれが弱いという、結構お粗末な出来。ギャンブルを扱ったサスペンスとしては序盤で示した通りで予想を超えない話とワクワクしない展開に、青春映画としてはそれが付け足し程度な薄さと、ドンドンと主人公がどうでもよくなって来る人物描写の落ち込みで、原作が売れておもしろそうな題材なのに、噛んだら直ぐ味の無くなったガムを噛み続けている様な映画になっているのは脚本の拙さなんだろうなぁ…。インターネットで映画評を見ていたら、原作はおもしろくて単に映画の出来が悪いだけみたいだし。

☆☆★★★

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