ゴッドファーザー

2011年10月19日 水曜日

「ゴッドファーザー(The Godfather)」は以前見たはずだけれど、すっかり忘れてしまったので見てみた。

確かに傑作と言われるのもうなずける。
始まりの結婚式は長くて間延びしてそんなにおもしろくないのだが、ファミリー間の抗争が始まってからは俄然おもしろい。余す所無く置かれた登場人物達が大きなうねりを作り出し、それに飲み込まれて行く様が淡々と描かれ、三時間近くもあるが引き込まれ、一気に見てしまった。ただ、嫌な話だし、恐ろしい。特に、息子マイケルは普通の青年だったはずが、徐々に冷酷なボスへと変わって行く様子をアル・パチーノががっちり演じ、あの笑わず、冷酷に嘘をつき、真っ直ぐ見つめる表情が非情で非常に怖い。
そして突然の殺人、しかも強烈な印象を残すやり方で、これまた恐怖。以前見たはずだけど全然内容を憶えていなかったが、マーロン・ブランドの襲撃と長男襲撃での蜂の巣はしっかりと憶えていた程。ただ、この唐突な展開は結構あり、また、一気に時間が経ち話が飛んだりするので違和感はあった。一方で、何度か出て来る結婚式は長いし、他の場面でも余韻と言うには妙に長かったり、編集での間が気になった。そこら辺は、監督のフランシス・フォード・コッポラが元々2時間程の映画として編集したにも関わらず、会社側がもっと長くしろと言う要求があり、結果三時間近くになったという事もあるのではと思う。この場合はオリジナルと言うのか分からないが、初めの二時間に編集した方を見てみたい。

マーロン・ブランドは年を取ってからしか知らないからそんなに違和感は無かったけれど、アル・パチーノを見たら若く、現在と別人の様で驚いた。でもあの目力はすでにあり、一番輝いている。マーロン・ブランドは口の中に綿を入れて演技している様で、何かフガフガしているし、大きい割に声が高くてそんなに威厳が感じられないし、ドンとしてはいまいちだけど、息子に権力移譲してからのおじいちゃんの演技の方が哀愁があり良い感じ。そして、最も目立つ脇のロバート・デュヴァルは「どっかで見た事ある様な…。」と思っていて、歳を取ってからの写真を見て「この人か!」と納得。
最後の洗礼を受ける赤ん坊がコッポラの娘ソフィア・コッポラで、今見るとそこにこのゴッドファーザーが描く様な世代の移り変わりもあり、奇妙な感覚におちいる。

意外だったのは、映画的にも一般的にも有名な「愛のテーマ」がそれ程印象的ではない場面で使われていた事。イタリアだからそれらしい曲といった位。

じっくりとファミリーを描き、映画を見ているのに歴史大河小説を読んでいる様な感覚に陥る。普通に暮らしていた人間が、やっぱり遺伝子は争えないのか、徐々にぬかるみへ足を踏み込み、立派な犯罪組織のボスになる様子や、取り巻く人は一体何だったという無常感、そして最後の扉を閉める場面が多くを物語る様に、わたしにとっては恐怖の映画だった。

この映画の中に出て来るジョニー・フォンテーンと言う歌手の名前を聞いて思ったのは、この役はフランク・シナトラを元に作られているらしいけれど、そう言えば1960年代のラスベガスのクラブの歌手のホログラムだった「スタートレック ディープ・スペース・ナイン(DS9)」のヴィック・フォンテーンってここから取られているんじゃないかなと。

☆☆☆★★

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