オーメン
2013年04月12日 金曜日グレゴリー・ペック主演の1976年の映画「オーメン(The Omen)」。
グレゴリー・ペックの妻が出産するが出産直後に子供が死亡し、同じ病院の同じ時刻に産まれた赤子を妻には養子とは知らせず、自分の子として育てる。しかし、乳母が自殺したり、妻が流産したり、グレゴリー・ペックに忠告しに来たイタリアの神父が死んでしまうという悲劇が起こり始めたので、神父の忠告通り自分の息子の誕生について調べ始める。
どうにもキリスト教的悪魔の恐怖映画って微妙。基本的にはダミアン本人よりも彼の周りの頭のおかしい人間が怪しい行動を取る事から来るのが原因だったり、何よりダミアンの異常性が癇癪を起す位だったり、ダミアンに黒い犬がなつく、ダミアンがいると動物が怯えるとか、恐怖や怪しさの演出が微妙過ぎる。キリスト教の悪魔って非常に回りくどいやり方で攻めて来て、それは困難に対するキリスト教への信仰心の迷いの比喩ではあるのだろうけれど、単に事故や偶然を頭のおかしな乳母がダミアンを誘導して起こしている、育児ノイローゼの夫婦がジタバタ騒いでいるだけにしか見えず、怖くも何とも無い。
むしろ、精神的に参っている人間が宗教に対する妄信が始まると、関係無い人間だけでなく、自分の子であるはずの子供さえ殺す事をためらわなくなると言う皮肉を描いていると見た方が分かり易いかも。
この映画、根本的に失敗しているのは、怖いよりも笑けてしまう事の方が多い事。屋根から飛び降り首吊りとか、神父はわざわざ避雷針が自分に当たる様に少し移動し、上を見上げたまま動かず、落ちて来る避雷針を避けもしない神父とか、ゆっくりと上手い事うつ伏せに回転しながら二階から落ちて行く奥さんとか、獣の数字も「666」じゃあなく「616」だとかあるし、彗星が見えた年の6月6日の6時生まれの子供なんてヨーロッパに何人いるんだとか、そんな弱い理由なのでもっと強い理由付けの為にダミアンの実の母親が犬とか、犬に追い駆けられて襲われるけれど、犬よりも慌てた事によって鉄柵に腕を指してしまう間抜けなグレゴリー・ペックとか、それまで幾らでも殺す機会はあったのにわざわざ病院まで出向いて奥さんを殺す行動が意味不明な乳母とか、ゆっくり下がって来たトラックの荷台に乗ったガラス板で首チョンパされるってどんだけ首は柔らか素材なんだとか、最後葬式でダミアンが振り返って笑うけれど、誰の方向いて笑ってるんだとか、そのしょっぱさに白けてしまうと言うか、鼻で笑ってしまうと言うかで、やっぱり怖くも何とも無い。
ただ、ちょっと上手いと思ったのはダミアンの年齢設定。この頃、もしくは以下の歳の子供って急に癇癪を起すけれど、大人から見たらそれが奇妙、悪魔的に映ると言う事を上手く利用して、悪魔なんじゃないか?と言う題材に持って行っている。それにダミアンは実子ではなく他人の子だと知っているから、グレゴリー・ペックが疑惑や恐怖を抱くとか、そこの不安な心理に持って行く設定は良い。
一番驚いたのは、ダミアンの父親がグレゴリー・ペックだった事。グレゴリー・ペックって「ローマの休日」「アラバマ物語」の様な優しい役から、「マッケンナの黄金」とかの西部劇の様な娯楽映画にも出ているのを見たけれど、どちらかと言うと真面目な映画に出る様な俳優だと思っていて、こんなホラー映画にも出るなんて思ってもみなかった。
他の悪魔を扱った映画でもそうなんだけれど、キリスト教の悪魔って回りくどい操作や手順で、見ていてもしょっぱくしか感じないのが面白味と映画の流れを壊してしまう。キリスト教信者がこの映画見れば成程と恐怖も良く理解出来るのだろうけれど、ホラー映画として見てしまうと、やたらと間延びしまくり、怖い場面のはずが滑稽にしか見えない、更に前半まったりと進む割に盛り上げる為の構成や時間配分から、都合良く起きる人々の急な死とか、問題はダミアンよりも頭のおかしいおばはんの方だろうがという突っ込み等々、何だこのしょっぱい上に退屈な映画は…と言う感想になってしまう。
☆★★★★