ローマの休日

2012年09月05日 水曜日

オードリー・ヘプバーン初主演の映画「ローマの休日(Roman Holiday)」。

ヨーロッパ中を親善旅行で旅周る姫様が、その過密さと堅苦しさで嫌になり、一人で街へと飛び出す。

王族が市井の人々に混ざり、羽目を外し遊び周り、恋もしと言う非常に王道な話。台無しに言ってしまうと「暴れん坊将軍」。
この映画はやっぱり、オードリー・ヘプバーンを主役に選んだ事でほぼ完成している。オードリー・ヘプバーンの仕草や表情が愛らしく、演出や演技も一つ一つ可愛らしくしていて、この彼女の魅力には男性も女性もたまらないはず。

この映画二時間位あるけれど、それもあっと言う間。始まりの登場からの脱出で一気に掴まれるけれど、それからのグレゴリー・ペックの話になるとちょっと退屈。そこは分かったから、早く二人の話に行ってよと思ってしまう。それ以降の街での買い物、髪を短く切ったり、スクーターの二人乗りでのローマの観光なんて最高に楽しい。ただ、スクーターの場面は遠目からの映像では、誰か分からない二人が乗っていて、折角の場面は台無し。
有名過ぎる真実の口は、単におちょけた場面かと思いきや、二人共が真実を隠しながら接し、その後でお互いが知り、それでどうなるのかの暗示でもあるという、実は良く出来た場面だった事に感心。
船上の乱闘場面では、オードリー・ヘプバーンがジェフ・ジャレット並みにギター攻撃したりとはしゃぎまくるけれど、でも水に落ちた人に浮き輪を投げたりする可愛らしさもありで、やっぱりオードリー・ヘプバーンの魅力が前面に出ている。
それに何と言ってもこの映画が良いのは、今時の映画だと「愛こそ全て!」で、全てを捨てて自分の気持ちを優先させ、その後が上手く行くのか分からないままハッピーエンドにするけれど、これは今までの事は一夜の夢で、ちゃんと自分の背負っている責任や立場を認識し、再び元の生活に戻って行く事。哀しくも心地良い後味が最高に良い。最後の、全員に語る言葉なのに、一人に対して話していて、しかも目でお互いに語る場面が非常良い。

ただやはり1953年の映画なので、演出的にはもっちゃりした所はある。今だと会話のやり取りは何回も人物の顔のカットの切り返しで見せる所を一場面ワンカットで見せたり、会話のやり取りや一場面が少々長かったり。それに最後に二人が抱きしめ合う所は、グレゴリー・ペックの顔じゃあなくて、オードリー・ヘプバーンの顔を映すべきだろうがと。
それに、この映画も「暴れん坊将軍」の新さんと同じく、普段の王女を気付かないなんてあるのかしら?特にこれは、散々彼女の写真も載り、その話題で持ち切り、しかもあれだけ綺麗なのだから、街の男性は幾らでも振り返るだろうに。

しかしこの映画以降、オードリー・ヘプバーンの映画は、オードリー・ヘプバーンは良いとこのお嬢さんだけど結構尻が軽い、相手役の恋に落ちる男性は中年から壮年のおっさんで、歳の差があり過ぎて違和感がある等、そればかりに思える設定ばかりなのは、この映画がそうだったからそうなったのか。

驚いたのはトレヴィの泉の中で子供が石像にぶら下がって遊んでいたりする事。やっぱり時代か。それにスペイン広場は意外と人が少ないのは、この映画の効果での集客・観光なんだろうなぁ。
何より一番驚いたのは、薄ら禿げのデブのランニングシャツのおっさんが、思いっ切りオードリー・ヘプバーンにブッチュリとキスをする。「何で!?」と驚き、オードリー・ヘプバーンが普通に微笑んでいるのも「何で!?」。
あと、船上での場面で、オードリー・ヘプバーンの肩にハエが止まり、しかも羽音まで入っているのに何で取り直しや、切らなかったのだろうか。

このオードリー・ヘプバーンは、着飾った時は気品溢れる王女に、しかし普通の時は普通な女の子で、本人はもちろん、衣装や化粧は流石。でも、これ以降の映画の方が若々しく見えるのは、映画業界で磨かれて行ったと言う事なのか。それと彼女の声が少し鼻にかかり、子供っぽさ、甘ったるさがあるのも、役にぴったり。
グレゴリー・ペックは結構歳取ってるおじさんと思って見ていたら、この映画の時は37歳。昔の俳優って、今から見ると老け過ぎ。

王道な恋愛劇だけれど、楽しさは半端無い。終始オードリー・ヘプバーンの魅力爆発で、初主演でこれだけ輝き、人々を今でも魅了するなんて本当に凄い女優。最後の締め方も、安易にしてしまわないこの切なさが名作として残る所以。映像も、展開も、後味もどれを取っても素晴らしいし、良く出来た映画。

☆☆☆☆★

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