アメリ
2012年09月04日 火曜日今でもB・C・D級映画の買い付けばかりしているアルバトロス・フィルムが、勝手に雰囲気でホラー映画だと思った社員が買い付けて来てみたら全く逆の女性受けする心温まる話で、これが当たってしまった映画「アメリ(Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain)」。
これを書くにあたってアルバトロス・フィルムのサイトを見てみたら「アメリ」のタイトルIDが1番で、やっぱり稼ぎ頭なのか一番初めに持って来ていたのでちょっと笑ってしまった。
小学生の様な、少女みたいに自分の世界で生きる女性アメリが周りの人を、自分も幸せにして行く。
一癖も二癖もある登場人物達を入り組んだ脚本と奇抜な映像で見せるけれど、ほっこりする日常の微笑ましい風景が流れ続ける。
アメリの反応が子供がそのまま大人になった様な感じで、分かり易く喜ぶし、怒るし、気が引けるしで見ていて楽しい。
そのアメリを演じるオドレイ・トトゥの可愛らしさが爆発し、オドレイ・トトゥが配役された時点で出来上がっている様な映画。
彼女の行動を見ていると自分が親でなくとも小さな娘を見守る様な心配とワクワク感でずっと持って行かれる。
話も幸せを彼方此方に撒いて行く様なアメリによって人々が徐々に結び付き、誰もが気持ち良い展開を見せる関係になり、見終わると爽快さと心地良さで満たされる。
ただ、この映画の問題は始まりから序盤で、始まってすぐ本編に関係の無い短い場面の連続で、登場人物達の紹介を誰か分からないナレーションで、後半の何かに関わって来る事も無いその人のどうでも良い細かな情報を詰め込んで来るので行き成り置いてけ堀。
更に、序盤は特に何が起こる訳でも無く、後半への登場人物達の配置の紹介と長いネタ振りなので見ていても疲れて来る。
これが見事に結実する何かの振りでも無く、厚みを見せようとただ放り込んでいるだけ。
これに乗れるかどうかでこの映画を見れるかどうかが決まって来る様に思えた。
そこで諦めかけるけれど中盤からこの物語の向かう先が見え始め、アメリを中心に展開がこねくりまわされて行く所はおもしろい。
恋愛と言うよりは気持ち良い人間関係の構築に至るグネグネな回り道を微笑みで見せる。
それと舞台がフランスなので出て来る日常の飲食物や物等の名前や正体がさっぱり分からず非常に戸惑う。
見慣れない食材と食べ物、知らない文化が多く、フランス人からしたら当たり前でもわたしには何のこっちゃで「ちょっと待って!」でつまずく。
「アメリ」と言えば、「スプーンを顔の横に掲げたオドレイ・トトゥ」の場面がポスターに使われたのかで有名だけれど、その場面は映画本編では「クレーム・ブリュレのおこげを潰すのが好き」という、これ以降何の関係も無いそこだけの場面。
これもそうだけれど印象が強い場面の連続の割に話とは関係無い場面が多く、見終わったらその場面が印象に残っていない事が多い。
映像や演出的には結構実験的な所が多い。
わざとのカメラ目線や、アクション映画みたいに「ブワッ」と音を入れてカメラをパンさせるけれど全然大した場面でも無かったりする。
手紙の偽造場面でカメラ目線で始め早回しなんてバラエティ番組を見ている様。
全体的の雰囲気がそんな感じなのでかけ離れてはいないけれど、どうにも違和感を感じた。
それとこの監督のジャン=ピエール・ジュネって、前後のカメラの寄りや移動が多い。
ただ、この人の映像での世界観の創り方、見せ方は上手い。
常にフィルターを入れてセピア調だけれど緑がかっていて、派手にも地味にも見せ、映像もお伽話的な夢想的雰囲気。
オドレイ・トトゥは非常に可愛らしく、可愛らしい女性を演じていて非常に良い。
劇中でも実際も23歳なのだけれど、もっと歳が行っている様にも見えた。
と言うか、この人がおばちゃん顔なのかもしれない。
彼女を見ていたらミスターこと、鈴井貴之を思い出してしまった。
この映画始まって30分位で「この映画二時間もあるの…」と挫けそうになるけれど、そこを超えると一気に話がおもしろくなり、ずっと釘付け。
爽やかで心地良い時間に浸れる。
脚本も序盤は耐え切れないけれど、中盤辺りからは良く出来た展開を見せ、回りくどい感じがおもしろい。
本当に序盤とそれ以降の差が激しいので30分位耐え切れば非常に良い映画。
☆☆☆☆★