アラバマ物語

2011年10月28日 金曜日

特に前知識も無く、グレゴリー・ペックが出ている位を知って見た「アラバマ物語(To Kill a Mockingbird)」。これは本当に良い映画だった。

田舎の子供の日常を描いた話かと思いきや、その子供が見る人種差別を淡々と、しかし、しっかりと描く社会派でもあり、子供の頃の懐かしい思い出を描くという、嫌な話でもあり、心地良さもあるという何だか不思議な話。

子供が持つ様な好奇心や、突然襲われる恐怖、日常のちょっとした落ち込み等、子供の小ささが画面の構図の基本になるので家や町が大きく見える様に画的にも子供目線になっていて、まるで本当に子供の日々を追体験している様な感覚になる、脚本、演出も良く出来ているけれど、更に無邪気なまま変に演技をしない子供達こそがこの映画を背負っている。またグレゴリー・ペック演じる父親が、子供に対して邪険に接さず、正面から真面目に子供に分かる様にだけれど大人と話す様にきちんと説明し、幼い子供を持つ父親としての理想的な人物になっている。この父親の活躍する裁判も法廷劇として良く出来ていて、静かに熱い良心的な優しい人をグレゴリー・ペックが見事に演じている。確かにアカデミー賞主演男優賞や、アメリカ映画協会が選んだ「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」のヒーローの一位に選ばれるのも納得な演技だし、理想的な優しく力強い人になろうとする普通の人という非常に見ていても気持ちの良い人物。
後から知ったけれど、隣人ブーがロバート・デュヴァルだったとは。映画初出演でも強烈な印象を残している。

場所も時代にも今とは感覚が違い、黒人差別の描写は分かるけれど、驚いたのは「狂犬病の犬が住宅地に現れたから、銃で撃ち殺し、そのままほっぽって何処かに行ってしまった」事。日本の現在的感覚だと衝撃的なのだけれど、これも実は後の話の振りとして成り立っているのだから侮れない。

何と言っても、子供の頃の何気無い楽しさに溢れていた日常の中で、子供目線から偏見の醜さ、嫌さを描き、それでも見終わると清々しさが残る素晴らしい名作。

☆☆☆☆★

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