ヒトラーの贋札

2011年10月29日 土曜日

「ヒトラーの贋札(Die Fälscher)」と言う題名なのだから国家間の騙し合いや調査での追い駆け合いの様な、爽快なサスペンス映画を期待してしうのだけれど、そんな期待とは真反対のただ重く、淡々とした、見ていても辛いだけの映画だった。

第二次世界大戦時、実際にドイツの強制収容所行われた紙幣贋造事件「ベルンハルト作戦」に関わったアドルフ・ブルガーの証言に基づいて制作された映画。ナチスの人を人として扱わない中で、彼らの為に贋札を作らなければ殺される状況の葛藤を、結論など初めから無くドキュメンタリーの様に淡々とその出来事を見せて行く。その感情を無理やり高ぶらせようとはしない演出は、見る方の心持の状態によっては、より悲惨で身動きの取れない状況に吐き気を憶える様な落ち込みを見せる。見えないけれど聞こえてくる悲惨な外との格差の中で、安心がありもし、しかし追い詰められていて、選択を迫られる状況に気持ち悪くなって来る。しかも戦争が終わり助かりはしても、どんな豪華で可憐な場所で好きに出来ても、あるのはただの虚無感だけ。ただ踊る事で何とかその場を生きている終わりに、涙も無い渇いた哀しさしかない。

演出的に非常に抑え、しかしカットは早く行き、映画としては観やすいが、題材や内容は登場人物達と同じ様に見る方にとってもどうしようもない縛られた感じしかないので人には薦め難い映画ではある。しかし、確かに良く出来た映画である。見終わっても嫌な感じしか残らないが。

☆☆☆★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply