ゲアトルーズ

2012年06月09日 土曜日

カール・テオドア・ドライヤーの遺作となった映画「ゲアトルーズ(Gertrud)」。

熟年夫婦の妻、ゲアトルーズの不倫話が、まったりと展開される。
始まってから暫くは、長回しのワンカットで登場人物は二人だけ。彼らが目も合わさず、静かに話し合うだけなので退屈。その後も長めのワンカットで、特に劇的、話が盛り上がる様な所も無い、グダグダと、鬱々とした会話が続く。見える映像は渇き切っているのに、話はぬかるみの様なグズグズと湿りっぱなし。自分の愛と言う言葉に各人が酔いしれる話で、それが何か引っかかる事も無い。

出て来る人物達がそれぞれ視線を合わさないと言うのは、同じ場所にい、すぐ隣にいるのに見ている方向が違う様に、視線だけでなく人生の方向もそれぞれがバラバラという演出。成程と思いつつも、視線を合わせない会話劇は奇妙。奇妙過ぎる。薄ら寒さを感じる空間。
視線を合わさず、長回しだと、カメラの動きが気になって来る。じっと正面から映していたのに、人物の動きが少しでもあるとそれを追いかけるので、その急なちょっとした動きが気になり、何か意味があるのかと勘ぐるけれど、特にはなさそう。

この映画、日本語のカタカナ表記が「ガートルード」となっていたりもするけれど、デンマーク語の発音を聞いていると「ゲアトルーズ」なので、「ガートルード」というのは英語読みの日本語表記なのか。

最近カール・テオドア・ドライヤーが監督した名作「吸血鬼」を見て、非常に感銘を受けたのでこの映画にも期待をして見たのだけれど、特に山場も無い、至ってベタな不倫劇。「吸血鬼」が非常に映像で見せ切る映画だったのに対して、これは会話劇でグダグダする映画。演出は微妙に奇妙なんだけれど、長回しの多用と、回りくどい割に何ら響かない台詞で退屈。演出部分ではおもしろみがあるけれど、話は至ってつまんない。

☆★★★★

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