東京物語

2012年05月18日 金曜日

小津安二郎の代表作と言われる「東京物語」。

今でも通ずる、歳行った両親が田舎から出て来、普段の生活の中に異質な者が入って来た時の別に住む家族達の対応のお話。
面倒見たいし、楽しんでもらいたいけれど自分達の生活もあるしって、核家族が続く限りはこんな事と似た様な事が延々と変わらず繰り返されるんだろうなぁと思うと、どっちの立場でも面倒臭いモノ。
描いている事は普遍的な哀しさがあって良いのだけれど、展開が非常にゆったりし過ぎていて集中力が全然続かない。
初めの一時間以上二人が田舎からやって来て東京で特に何て無い出来事が延々と続き、まあ退屈。つまらない。
特に盛り上がりも無い、今でもある様な話をただのっぺりと見せられても「あるかもなぁ…。」位で関心は向かなかった。

話す人にきっちりとカットを割って、その人が画面中央で正面を見てゆったりと話すという演出は丁寧と言えばそうなのだけれど、見ていると何だか実は話している事とは違う裏の意味を持たせている様な、含みを持たせた演出の様に見えて来てしまい、まあちょっとは腹に抱えたモノはあるのだけれど、それ以上に誰もが腹に一物抱えた胡散臭い、腹黒い人物に見えてしまう。
それに皆気の無い返答だったり、急にボーっとしたりして、それがちょっと薄ら気味悪い感じもしてしまったり。
襖や障子で区切られ、それをあえて画面に入れて手前と奥を意識させ、狭い家でも奥行きを出すという構図の作り方って今だと出来ないし、余り見ない。
低い位置にカメラを置くのも小津安二郎節満載。
あと、死んだはずのおばあちゃんが思いっ切り息吸って体が上下しているのには笑ってしまった。
周りは死んだから悲しんでいるのにおばあちゃんは顔に布乗せて普通に寝てるだけ。
それも結構頻繁に息しまくり。
少し位我慢出来なかったのか。
悲しい場面のはずが「おばあちゃん、生きてる!生きてる!」な爆笑場面に。

1953年の映画なので都会の東京なんだけれども今見ると一地方都市な感じが50年という時代の移り変わりを見せ「なるほど。」と感じてしまう。

笠智衆は何時もの落ち着いた、落ち着き過ぎた演技で、明るいけれど哀しさを誘う感じは非常に上手い。
良いおじいさんを演じているけれどこの時の笠智衆は49歳と知って驚き。
今49歳な人と言えば、ケラリーノ・サンドロヴィッチとか、浜田雅功太平かつみ松尾伴内蝶野正洋リー・リンチェイ唐沢寿明等、皆若い。
今唐沢寿明がおじいさんの役って有り得ない事を思うと笠智衆ってどんだけ老け顔なんだ。
原節子が出演する映画って初めて見たけれど確かに美人。
美人だし、人物設定も映像的にも美人に撮られている。
加賀千賀子って原節子だなぁとも。
杉村春子は嫌らしいけれど、まあ普通なおばさんを演じていて確かに大女優が見える。

小津安二郎の映画でも「秋刀魚の味」は結構おもしろく見ていたのに、この「東京物語」は退屈して流し見だった。
描かれる題材はいいけれど、のっぺりして引きの無い展開で2時間15分もあるのだからどうしても飽きてしまう。
この映画、普通な、今でも何処でもありそうな家族の話に興味を見出せないと何ら関心も無く終わって行く。
こういう映画は共感が無いと何ら楽しめないのか…。
基本的に共感で映画見ていないので展開や演出で興味が行く所が無く、果たしてわたしが歳を取ってこの映画を見て良いと思ったり、泣けたりする事になるのだろうか?

☆☆★★★

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