浮雲

2012年05月17日 木曜日

林芙美子の同名の小説を原作とした映画「浮雲」。

太平洋戦争中のベトナムで知り合い、終戦後の日本で再び会ったこの二人の煮詰まらない不倫関係が続く。
この何ともならない不倫を終始描いているのだけれど、この二人の恋愛の始まりがさっぱり分からないので、一切納得しながら見る事は無い。散々森雅之が嫌味言って、高峰秀子が嫌な顔して出て行ったのに、次の日にはジャングルで行き成りキスしてしまい、それに至るフリが全く無く訳が分からない。その後もまだ若い高峰秀子が、冴えた感じも無い普通な40半ばのおっさんに惚れて、見捨てる事も無い理由はさっぱり描かれない。日本に帰って来てからこの二人のグダグダとした関係が延々と続くけれど、森雅之はただしたいだけのスケベなおっさんで、あんなに女性が惹きつけられる理由は描かれないので、もてる理由もさっぱり分からないし、高峰秀子は都合良く使われ、彼を「気持ち悪い…。」とまで言うのに、別れない理由はたぶん好きだからなのだけれど、何故別れないのか、何故そこまで惚れているのかがさっぱり分からないので、単に不倫話を描きたいが為の便利な設定に思えて白けてしまうし、見ている方はただ置いてけ堀。一番重要な部分を描かない理由は何なのだろう?
男性が強引に攻め、何でも良いから女性にキスすれば相手は惚れるって、この時代の女性ってそんなに簡単に操られるモノなのか?

高峰秀子はまだ31歳なのに、喋りや声がおばあさんみたいに老けている。役柄的に22歳で出て来ても、まあそんな年には見えず、年相応、もしくはもう少し老けて見える。なので、そのしゃがれたおばあさん声と老けた感じが、不倫をしても何ら良い事無い都合の良い女の哀しい感じがより引き立ってはいる。
これの森雅之を見ていると、冴えない感じは出ているのだけれど、彼の演技は上手くないし、時々新おにぃ並みの棒読み、棒立ちな下手さを見せるのだけれど、この時代の演技ではこんな感じが普通なのか?

あと、音楽は始まりが中東風の音楽なのに、出て来る外国はベトナム。日本でもずっと変な中東風の音楽が流れ、場違い過ぎる音楽の拙さは何だ?

やっぱりこの映画は、高峰秀子の当時の美人と、何がそこまで魅力があるのか分からない冴えない中年森雅之の関係が、どうしてそこまでなのかが描かれていないので不倫話は何ら身が入らない。それがずっと続くので、初めはそれなりに見ているのに段々とどうでも良くなって来る。最後は死んでしまい、勝手な男が無き、「花のいのちはみじかくて~」と字で締める所なんか、しょっぱい。

☆☆★★★

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