秋刀魚の味

2012年05月11日 金曜日

小津安二郎遺作の映画「秋刀魚の味」。

物凄く不思議な雰囲気。
皆とても大人しい演技。
棒読みの様な台詞。
同じ事何度も言い直す台詞回し。
特に何か起こる訳でも無い普通な日常と、まあおもしろくない要素ばかりなのにじっと見てしまう。
まったりとした日常の中、娘が結婚するしないののどうでも良い話で全然大した話でも無いのにじっと見てしまう。
特に何かを叫ぶ様な映画でも無く、淡々とした展開なのに退屈する事も無く、心地良く最後までしっかりと見れてしまう。
人物が話す時にきっちりと画面中央に配置し、台詞割りに合わせてカット割る演出は今見ると物凄く不思議な感じ。
この映画自体落語を見ている様な感じなのだけれどこの演出もそう思わせる要因かな。
でも「~だ。~なんだよ。」と同じ事を繰り返すのは一体何なんだ。
それと、シラッと嘘を付いて、その後特に繕ったり、笑ってみたりという反応も無いボケも何なんだ。

21歳の岩下志麻は綺麗。
今はきつい感じの人の印象が強いけれどこの頃は非常にほんわかした美人。
佐田啓二を見ていると息子の中井貴一はほんとそっくり。
きっちり七三分けから演技といい、そっくり。
笠智衆はこの時58歳で、佐田啓二は36歳。
今の人が若いのか、昔の人が老けているのか、現在的な感覚で見ていると年齢が良く分からなくなって来る。

この映画、最後までサンマは一切出て来ないのに題名は「秋刀魚の味」。
何でなのか良く分からないけれどほろ苦い、一般的なモノという意味なのだろうか。
この映画の話を現在にするとこの題名は、生臭くドロドロしている高級魚化して来ていて結婚自体が高嶺の花になりつつあるという意味に変わって来るのだろうなぁ。
小津安二郎の個性が出まくっているけれど、それが自然と馴染み、見ていてもフワッと、ほんわかとさせる映像や演出は流石で、見た後に圧倒されていた事に気付いた。
日常の雰囲気に漂い、それが退屈も無く心地良い映画。

☆☆☆☆★

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