地獄門
2011年12月22日 木曜日「羅生門」に続いては1953年の「地獄門」と門が付き、平安時代の時代劇だけれど方向性としては別の映画。
「地獄門」という題なので、悲惨な話を期待して望む所なのだが、初めは平治の乱で血生臭い話と思いきや、人妻に惚れてしまい悶々とする武士の話で、期待を挫かれた。
この長谷川一夫演じる武士、初めは相手が結婚しているとは知らずに意気揚々としているが、京マチ子演じる女性が人妻と知り、自分の望みが叶わぬと分かると段々とイライラし始め、相手の夫にも喧嘩吹っかける始末。相手の京マチ子の夫妻は仲良く愛し合っている分、主人公であるはずの長谷川一夫が悪役になって行く。始めは単なる男の一方的な求愛話で「何じゃこりゃ?」だったが、長谷川一夫が「お前は俺の物だ!」「切るぞ!」と無茶苦茶し始めてからは、行っちゃった危な過ぎる男のコメディ、喜劇としてニタニタしながらおもしろく見れた。結末も、「確認せずに切りました。」という、見てしまうとしょっぱい感たっぷりで悲劇でもなし。幕引きも大仰な割りにあっさりし過ぎだし。
一番しっくり来ないのは、長谷川一夫がそこまで惚れる京マチ子が全然綺麗じゃないので、どうもすんなり話に入れない。
そして何より分からないのは何故「地獄門」なのかという事。別に地獄門が話の重要な要素でもないし、題名が「地獄門」だから地獄門を出している位の扱いで、題名ありきな感じがした。「羅生門」に対抗する意味で「地獄門」と付けたなら、完全に負けている。
大映初の総天然色映画だから、相当見える色には気を使ったと思われ、映像的には非常に綺麗。空の青も、草木の緑も映え、特に衣装の色合いは極彩色で美しい。華やかなる平安王朝を見せる。セットは照明や書き割りの背景で如何にもセットなのだけれど、これまた豪華で良く出来ている。これはデジタル・リマスター版だからなのか。
気になったのは音。録音技術がいまいちなのか、時代劇発声だからなのか、声が聞き取り難い。聞いた声を一回頭の中で理解し直すので、発声から理解するまでに0.5位遅れが出る。あと、これはわたしの視聴環境のせいなのか、良く音が割れた。背景の音と聞き辛い声が被るので、音量を上げると音が割れキンキンするし、音量を下げると更に何言っているか判り難いし…。
それに、時代としては平安時代なのに、皆の喋りが江戸時代の武家的な時代劇口調なのも違和感。
そして、長谷川一夫って顔がデカい。しかし、良く考えると、顔が小さく、足長く、八頭身の様な今の俳優で時代劇って、旧来の日本人体型からすると変で、むしろ顔が大きく、背も高くない方が時代劇的には正解。ただ長谷川一夫の演技は、時代劇だからなのか、それにしても大袈裟と言うか、上手くないと言うか…。
話はしょっぱいので、長谷川一夫をもっと壊れさせれば良いのにと思い、映像的には非常に良い分、何か残念な映画。
☆☆★★★