ネットワーク

2011年12月21日 水曜日

シドニー・ルメットが監督、フェイ・ダナウェイウィリアム・ホールデンピーター・フィンチロバート・デュヴァル等出演陣も演技派で豪華に揃えているが、内容は風刺が効いた「ネットワーク(Network)」。

最終的な締めが突然の爆破オチ的な乗りの急展開で「何じゃこりゃ?」な部分はあるけれど、テレビ番組制作の裏側を描いた、現在でも通じる様な意欲的な内容で惹きつけられ、恋愛部分では少々だれはしたが、非常におもしろい映画だった。「テレビは娯楽でしかない。」とか、「国家や思想などは古臭く、この世の全てはビジネスだ。」とか、今になっても変わらない、変わっていない事実をバンバン直球で真ん中に掘りこんで来る主張の強さ。更に、テレビ番組制作の金銭的な企業的な部分と、現場の制作者達の葛藤、おもしろいモノに飛びつき、おもしろくなければ離れる正直な視聴者、それに振り回されおかしくなってしまう人々を描き、その脅迫の様に迫るテレビというモノを無常観で溢れさせている。特に、徐々に、また急に壊れて行ってしまう人々は、その役者陣の演技で辛く、恐ろしくも哀しく見せる。ピーター・フィンチは行っちゃってる人を不安感たっぷりに演じるし、快活なフェイ・ダナウェイはやっぱり良い。ただ、フェイ・ダナウェイとウィリアム・ホールデンのベッドシーンには大爆笑。歳行った人ではなく、攻めまくりのフェイ・ダナウェイが早すぎるコント。

これは主題的には今のアメリカや日本でも通じる題材なのだろうけれど、日本だと逆の意味でしか風刺にならない様に思う。視聴者は尖ったおもしろい番組を見たいのは今も昔も変わらないと思うのだけれど、この映画や、この当時のアメリカのTV業界は過激な方に徒を進めていたのに、今の日本のTVは角を削って丸くした番組の方向に行っているので、「もっと命かけて、世間を騒がせる様な、視聴者の度肝を抜く様な、視聴率取れる様な番組が出来るのか?」といった皮肉にしかならない。
また、テレビ批判する人程テレビ信仰が強い様に見ていて思っていた。「テレビは娯楽でしかない。」と分かって見ている人は、その過激さや笑いを薄める様な今の番組に対して「もっと娯楽を!」と言う意味で批判するけれど、「つまらない番組ばかりで、もっと為になる番組を!」と批判する人は、この映画でも出て来て風刺されていたテレビへの価値が大きく、信仰が強い人でもあるんだろうなぁと。

☆☆☆☆★

正直、今の日本のTV番組を前提にこれを見るとピンと来ないのかもしれないが、かつての過激で攻めていたテレビがそうだったんだろうなぁと思って見ると、恐ろしい程の番組作りに対する人生を賭けた行動が、役者達の演技で非常に恐怖を持った良い映画になっている。

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