真昼の決闘

2011年12月11日 日曜日

ボー・ジェスト」、「モロッコ」とゲーリー・クーパー出演の映画を続けて見、今回の「真昼の決闘(High Noon)」は1952年と彼が50歳を過ぎてからの映画。

「真昼の決闘」と言う題で西部劇となれば、撃ち合いの殺伐とした映画を期待するけれど、この映画はそれとは一風違い、期待とは違うがそれ以上の人間ドラマだった。
犯罪者が12時の汽車に乗って復讐に舞い戻って来ようとしている中、今まさに結婚し保安官を辞めた男が彼らに立ち向かおうとする。初めは正義と信念の保安官だと思っているが、仲間を集め始め、町の人々が語り出すと、彼を余り好ましく思ってない人々、むしろ嫌っている人々がいる事が分かり、信頼する妻にも仲間にも愛想をつかれ、ドンドンと孤立し単なる勧善懲悪のヒーローモノではない事が見え始める。町の人々の意見も単に良い悪いでは判別出来ず、それぞれが自分や町の為に何が最も適した事なのかを考えている為、主人公でさえ保安官としての責任と町の為に奔放する善人とは言い切れず、自分への個人的な復讐の為無責任に周りまで危険に晒す迷惑な人とも見れ、恩赦を受けた犯罪者という絶対的な悪はいるが、それ以外の町の人全てが善悪では割り切れない混沌とした状況になっている。そして、血が流れる迫り来る12時を、誰もが心に何かを抱えながら迎えるという展開は非常に素晴らしいし、非常にワクワクする部分。ただ、その後の決闘場面、銃撃場面がそれ程でもないので、最後にかけて盛り上がりが行き切らない所ではあるけれど。
最後の保安官バッジを投げ捨てる所は、「今まで町の為に命張って来たのにお前達はそんな奴らか…。」という、保安官の自分勝手もあるが、侮蔑にも似た感があり、やはり主人公が最後まで単なるヒーローとして描かれていないのが良い。

徐々に明らかになって行く保安官と人々の関係や、町の状況等、なるほどと思いながら見ていたけれど、どうにも分からないのは、中年と言うか、このゲーリー・クーパーは老年に見えるのに、若くて美しいグレイス・ケリーと結婚出来たかという事。どうやらそれ程長くない期間で付き合いから結婚にまで行ったみたいだけれど、この二人の過去の話がほぼ無いのでモヤモヤする。それとは別に、「この女優綺麗なぁ…。」と思っていたらグレース・ケリーでなるほどと。

この映画邦題が良くなく、「真昼の決闘」と言うので撃ち合いの西部劇と思って見ると違和感を感じるかもしれず、原題の「High Noon」の方が良い。この映画は誰もの考えや行動が白黒をはっきりとはつけられず、情と自分の正しいと思う行動が交錯し、葛藤し、主人公でさえ正しいのか分からないまま終わる、誰もが普通の人々である人間ドラマで非常に良い映画でした。

☆☆☆☆★

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