切腹

2011年12月12日 月曜日

最近「一命」と言う題名で再映画化されたから放送したのか、1962年の映画「切腹」。

老浪人が切腹の為に庭を借りたいと井伊家の屋敷へやって来る。家老の話では、先日も若い浪人がやって来て同じ様に切腹の為に庭を借り、切腹したと言う。この二人の関係は一体…?という、興味をグイグイ惹かれる導入で始まる。しかも、老浪人仲代達矢、家老三國連太郎の両人とも濃い~い演技でガッチガチにぶつかり合い、演技の鍔迫り合いが最後まで続き、これはたまらない。ただ、仲代達矢が身の上話を語り出してからが、退屈な話が長く続き、時々現代語が混ざる時代劇口調で間延びするし、段々と飽きて来ていた。始めの竹光での切腹場面がとても酷で、重々し過ぎる分もあってか、最後のチャンバラは様式的過ぎな感じがした。ただ、そのチャンバラ自体よりも、仲代達矢の迫力と圧力のあり過ぎる顔と、黙って座して動かない三國連太郎の両人の演技でゾクゾクする。
仲代達矢はこの時まだ30歳なのに、老齢にしか見えないし、恐ろしい程の顔の迫力だし、とんでもない。三國連太郎もヌボーっとしているも嫌らしい演技で、こちらも吸い込まれる様な表情。これを見て思ったのは、佐藤浩市はそっくり。表情とか、顔の動かし方なんて、意識的なのか、無意識の遺伝子制御なのかは分からないが、そっくり。そして、これが岩下志麻だったのかと見終わって気付いた程、今と昔では違う。それ以外にも、40代でも歳行ってからでも丹波哲郎な丹波哲郎や、立花のおやっさんこと小林昭二や、井川比佐志が皆若くて、そりゃあ60年代なんだからそうだけれど、少々の驚き。

この話は、誰もが自分の立場と見栄、武士道という複雑さや、クリンゴン並みに武士として生きて行く面倒臭さによって、皆の行動や言動を理解出来るし、賛同出来ないしで、主人公である仲代達矢でさえ律儀で真面目な人間にも、ただのやからにも見える複雑な側面を覗かせる非常に良く出来た映画。
画面構成や構図も意欲的に配置したり、カメラを動かしたり、奥行きのある画や、美しい外の風景、印象的なライティング等、映像的にも良い。

☆☆☆★★

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