混沌の渦
2010年04月23日 金曜日近頃、「TRPG本を読む」がわたしの流行で、ウォーハンマー関連本に続き、現代教養文庫の「混沌の渦 (原題:Maelstorm)」を読んでみた。
©社会思想社
人間のみ、中世ヨーロッパ風、どんより重い雰囲気という、まさにこの表紙絵が中身を表している派手さの無い硬い設定。
16世紀のイングランドをゲームの背景にしている為、ゴブリンやドラゴンといったモンスターは存在せず、プレーヤーは貴族や労働者、盗賊等、当時の普通に町にいる人々。この専門職、職人、商人、自由労働者等の組織や仕事内容が詳しく書かれ、むしろそちらの冒険ではない普通の生活へと導く内容で、さらに地味な印象。
魔法使いもいる事はいるのだけれど、あくまで偶然の延長線上の魔法で、「誰かが滑って転ぶ」とか、「風で火を消さない」とか、物凄く地味。
RPGと言えば何故かファンタジーアドベンチャーだけれど、この「混沌の渦」は中世ヨーロッパシュミレーションに近い。だけれども、この時代背景についてはあんまり描かれていないので、この本だけではさっぱり楽しめない
元々、わたしがこの中世ヨーロッパに興味が無いので読んでいてもあまりおもしろいさを感じないのだろうが。
この背景はあくまで背景で、戦闘ルールを使って好きな様に設定や背景創って遊んでね!という汎用性もあるのだそうだけれど、そのルールを見ていたら、荷重や武器の鋭利度、ばらばらの負傷に出血もそのラウンドで考慮したりとちょっとめんどくさそう。
この本の中で一番おもしろいのは、途中にあるゲームブック方式の一人用シナリオ。
暗殺者の話で、パラグラフが160の短い物だけれど、探検はなかなか凝っているし、話的にもこれから始まる不気味な仕事の導入としてよく出来ているし、話の締めもニンマリと出来て良い。しかし、きちんとごまかし無しですると行ったり来たりは多くなるだろうし、うっかり家を一旦出てしまうとと二度と入れず終わりとかで、アイテムチェック、フラグ立てが面倒そうではあるけれど…。
それに、一番から順番に読まないと見つからない隠しパラグラフ、お遊び要素もあり、くすぐりも。
TRPGをする人にとっては、戦闘ルールを使って全く別の世界でロールプレイを出来る汎用性の高いルール本なのだろうけれど、読み物としては途中のゲームブック方式の一人用シナリオ以外はあまりおもしろいモノではなかったという感想。