DS9 終了
2010年03月17日 水曜日ついに「スタートレック ディープ・スペース・ナイン」最終シーズンの第七シーズンを見終えてしまった。
一気見だったけれど結局8ヶ月程かかりはしたが、あっという間。
そして、物凄くはまった、はまった。
スタートレックシリーズの中では一番、海外ドラマの中でも上位五つには入るおもしろさで、たのしい再見だった。
なのだけれど、どうも第七シーズンはその直前の第六シーズンに比べるといまいち盛り上げに欠けた様な…?
一番大きいのは新レギュラーとしてエズリが入って来た事。第六シーズンまではレギュラー、準レギュラーで積み重ねてきた人間関係を更に発展して行っていたのに、エズリがダックスになった事で各人間関係をまた新たに積み重ねて行かなくてはならないので、結構今さらな展開が多かった所がある様に思えた。
エズリにしろ、ヴィック・フォンテーンにしろ、ブリーンにしろ、新たな登場人物は物凄く良い味を出していたので、あと一、二シーズン早く加入していたらもっとおもしろい展開になっていたんだろうなぁ…と、ちょっとおしい感じ。
しかし、最後の十話連続の展開は、DS9お得意の「人間関係とそこから来る国際関係と戦争のたたみ掛け」で濃いいドラマを見せて、DS9の楽しい所爆発!十話と言わず、もっと細かくドラマを描いて、そこに浸りたかったくらい。
DS9って、今までのスタートレックではあまり描いていなかった所を描こうとし、個人的にも対外政治的にも微妙な立場の多数の登場人物達を描く群像劇で、SF要素はあくまで設定や背景で人間ドラマを中心に描いた野心的なシリーズだったと改めて見て思ったしだい。
以下、各登場人物の感想など。
・ベンジャミン・シスコ
ダックス、息子のジェイクに次ぐ、一話と最終話では見た目の変化が大きかった人。顔の毛が上から下へと移動して逆さ絵みたいに変化。
もともとは心に傷を負ってはいるが、なんとかベイジョーとカーデシアの間に入ってやりくりしていたある程度模範的連邦士官だったけれど、中盤辺りから「私情の人」という面が前面に出て来て凄く人間臭かった。この「ぶちぎれて、自分の感情で周囲を巻き込んで大騒動」というのが連邦士官的じゃあないので好かれない所ではあるのだろうけど、普通に感情的に行動するし、欠点も持った人間として描かれていて人間ドラマの登場人物としてなかなか良かった。
その結構普通な人だったのだけれど、後半の「選ばれし者」が強くなるにつれ、暴走の行動理由を何ら示さず周囲の人も視聴者も置いてけ堀だったのはちょっと残念。
終盤になると主人公と言うより、主役色が強い一登場人物だったのが群像劇のDS9らしさで、大きな流れの中の人間模様を出していて、そこは良かった。
・キラ・ネリス
改めて見て、キラがこんなに魅力的なキャラクターだったのかという事に気付かされた。
スタートレックでは余り描かれない政治・宗教の部分担当で、はっきりと政治的に圧力かけたり、信仰心をバリバリ前に出してくるしで、初めから複雑な立場のキャラクターだったけれど、ガル・デュカットとの一連の国際政治的な部分も重複する愛憎劇でより深いキャラクターへとなって行った所など本当に良く出来ていた。後半はキラ主役の話を待ち望んでたし、「ぶちぎれて、相手をメッタ撃ちしないかな~?」と、今か今かと楽しみにしていた。
あと、シーズンごとにやたらと髪型を変えるのがこの人。
そして気付いたのは、ナナ・ヴィジターがとても美しい!!
・オドー
DS9でも一番と言ってよい程精神的に変化した人。
初めは融通の利かない堅物だったのが、柔軟に対応、笑うし、冗談言うし、飲食までするし、恋愛成就まで。
でも、キラとの恋愛はずっと馴染めなかったけど。
オドーは常に「言いたくても言えない…。黙って心に隠し止める。」という、頑固で奥手で異形の切なさ担当でも。
・ジャッジア・ダックス
この人もキャラクター変化が大きかった。
初めは何百歳の若い女性で、落ち着きのある大人な女性だったのが、いつの間にか初期ジュリアンの様な周りの空気を読めない妙に陽気で無邪気な子供みたいな軽い人になっていたからなぁ…。深刻な状況下でも皮肉や冗談を言いすぎてベンジャミンに怒られていたし。
そして、極端に熱烈な恋愛をする女性でも。「全てを捨ててでもあなたと…」というのが何度もあったし。
いきなりの退場だったし、やたらな感情の落差は一体何だったのだろうと、ちょっと変わった人物。
・マイルズ・オブライエン
そう!我らがチーフ!
演じるコルム・ミーニー自身がTNGのゲストから準レギュラー、そしてDS9のレギュラーと来た様に、叩き上げのおっさん!
良く切れるし、平気で文句も言うし、偏見もあり、酒も飲む、遊びが大好きな妻子持ちの中年という、普通のドラマの登場人物としてはどこにでも居そうな普通の人なのだが、スタートレックではむしろ異質なキャラクター。周りが特殊な人々の中では、この「普通なおっさん」がとても良いんだよなぁ。家庭問題で悩んだり、でも最後はケイコとイチャイチャで終わりとか。
そして「マイルズいる所に不幸あり」と言える不幸の連続で、実際二度ほど死んでいるので「がんばれ!オブライエン!」と気になってどうしても注目してしまう。
DS9、スタートレックの登場人物の中で一番好きな人。
・ジュリアン・ベシア
変わったと言うよりも、成長したと言うべき人物。
始めは意気揚々として常に冒険を求めている若さがあったけれど、途中での出生の秘密が分かった後は冷静沈着、ニヒルな大人に。一時期は計算機キャラになっていたからなぁ。
でも、その冒険・スパイ好きがガラックとの出会いになり、セクション31、ドミニオン戦争での秘密と鍵を見つける事になるとは、上手く設定を転がしていて感心。
なりより、オブライエンとのラケットボールに始まり、ダーツ、アラモ砦など数々の遊びと、20代の若者みたいな恋愛や口げんかがほんわかしていて、見ていて笑みがこぼれる微笑ましい関係だった。
・ウォーフ
TNG後の途中参加、テコ入れ要員とも言えるウォーフが入った事によってクリンゴン関係の話がやり易くはなったが、そのクリンゴン話がDS9やカーデシアのドロッとした陰謀、愛憎劇に比べるとあっさりし過ぎ感があり、ちょっと恵まれない感じはあったかな。
ウォーフは、誰も彼も、オドーでさえ冗談・皮肉・文句を言いまくるDS9の面子の中では、寡黙な上に冗談が好きじゃあないという異質なキャラクターで、どうも馴染めていないというか、目立っていなかったような…。TNGで出来上がってしまっていたのが逆に行ってしまったのかも。
・クワーク
彼こそがDS9のコメディー担当。
面と向かって悪口浴びせられても全くへこたれない、喋る言葉は強烈な皮肉や悪口なのだけれど笑いを誘う、憎まれ役だけどDS9を明るくしていたのがクワーク。これだけ良いキャラクターだから、クワーク関係の登場人物は、準レギュラーと言うよりほぼレギュラー並みに成長した人々が多い事。ノーグ、ロム、グランドネーガス、イシュカ、リータ、ブラント。フェレンギが出て来るとどんな話でもコメディーになるし、結局はクワークが持って行くし。
そして、オドーとの仲が良いのか悪いのかの友情も良かった。「あの時『嫌いだ』と言ったけど、あれは本気で言ったんだぞ!」といってオドーと笑い合っていた場面は泣ける泣ける。
・エズリ・ダックス
結構キャピキャピして、おしゃべりな感じ。
キラにしろ、ジャッジアにしろお喋りだけれど二人とも大人な感じだったのに比べると、エズリはもっと少女っぽさがあって、新たな人間関係の展開が見られた分、一シーズンで終わったのは残念。自身関連の話はあったけれど、もっと他の関係が見たかった。
・ジェイク・シスコ
見た目は、あの小さな子供から、父親よりも実際大きく成長したのだが、キャラクター的には余り発展が無いDS9で最も不憫なキャラクター。
中盤からは幼い子供から抜け出して、小説家、報道記者と色々回り巡った挙句、シスコの息子という、結局そこへ戻ってしまっていて、もっとの活躍が欲しかった所。始めはジェイクを引き立たせる役だったはずの友人ノーグがキャラクターとして独り立ちし、終盤ではノーグ個人が主役の回が何話かあった程成長したのを見るに付け、ジェイクの薄さは…。終盤はほとんど見かけなかったし…。
たぶん「父と子」をやってしまったが為に、あれで決定された「シスコの息子」を越えられなかったのだろうなぁ。
レギュラー陣だけでも、たくさん。それに加えゲストの人々も回を重ねる毎に人物を掘り下げて行き、準レギュラー化、そしてレギュラーとも言える程頻繁に出て来る様になり、終いには話の中核にまでなってしまう、そこもDS9の見所。
カーデシアだと、悪い顔を見せつつもコメディアンだし、親として、指導者としての立場も見せるガル・デュカットや、口から出る言葉は常に真実なのか疑わざるを得ないガラック、間抜けな部下から英雄までになってしまったダマールなど、回りくどい喋りと、常に何かしら隠して計りかねる人々でDS9の重要な人々ばかり。
その他にも、ベイジョーの宗教界、国家権力を狙い、とてもいい悪役のカイ・ウィンとか、クリンゴンの良き理解者マートクとか、数限り無い。
この、それぞれの立場で、対立・利害関係の中、大きくうねる歴史に流されながら進んで行く人々の物語がDS9なんだろうな。