プライミーバル シリーズ5

2023年09月29日 金曜日

元々は以前地上波で放送していたのを確か何話か見た事があったはずだという記憶があり、Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだと知り、多分これを逃すともう配信はしないかもしれないと思ったので見始めた「プライミーバル(Primeval)」。
日に数話見たりもして何とか一カ月程で最後まで見終わり、内容よりも全話見終えたという方の満足感だけが先行してしまった最終シーズン5。

これまで「プライミーバル」を製作放送していたイギリスの放送局ITVが世界金融危機で倒産しかけたので製作費のかかるこの「プライミーバル」もシリーズ3で打ち切りとしたはずだったのが、ITVとUKTVの共同制作プラスBBCからの資金提供もあって更に2シリーズ13話が作られる事となり、シリーズ3から約二年後の2011年に放送されたシリーズ4が終了してから約四か月後には開始されたシリーズ5。
放送の期間を考えてもシリーズ4と5を一緒に製作したのが分かるけれど、内容もシリーズ4がシリーズ5へ向けの前振りで、シリーズ5でシリーズ4もまとめての結末になっていた。

ただ、既にシリーズ3でこれまでやって来た主人公ニック・カッターと妻のヘレン・カッターの時空の扉(アノマリー)を巡る話がほぼ終わっているのに、そこから更にシリーズを続けているのでシリーズ4から蛇足感ばかりで、その蛇足の結末となっても何とかまとめて終わらせましたとしか思わず、しかもこのドラマ全体で続けて来た、登場人物達の背景や考えをあんまり描かないのはシリーズ5でも余り変わらないので全然乗って行けないし、同じくシリーズを引っ張る謎を出しておきながら詳しい説明も無いままめでたしめでたしにしてしまい細かい部分をぶん投げて次に行ってしまうのも最後までで、どうにも最後まで脚本の雑さと言うか、適当さと言うか、不味さばかりが目立って感動の最終回!…にはならず、見出したので何とか最後まで見切った感じばかりで終わってしまった。

シリーズ4でアーク(ARK【Anomaly Research Centre】)を運営する会社の社長フィリップ・バートンが何やら怪しいと出して来て、しかしそれが中々展開せずにいたけれど、シリーズ5でもその話が大きく動き出すのも終盤になってからで、この話が引っ張り過ぎて間延びしていて興味は引かないまま。
その終盤では、今までは時空の扉は危険なので対処して何とか検知して閉じようとしていたアークの面々が、時空の扉は自然現象でどうしようもないから放っておけ。時空の扉を制御しようとするフィリップ・バートンの機械は未来を壊すから起動させるな!になり、一方のフィリップ・バートンはその機械で世界中に現れた時空の扉を消すんだ!と急に正悪の構造が逆転してしまい、話が何だかグッチャリし出して見ているこちらは置いてけ堀。
マット・アンダーソンの主張だと世界中に時空の扉が現れて古代生物が次々に現在の人達を襲う大災害になっていても時空の扉を閉じたり制御したりする事によって未来が滅亡するので、もう時空の扉を受け入れるしかない…ってなって来て、突然今までの全てを否定する様な展開にする脚本って駄目じゃないの?

しかも、同じドラマとして前の出来事も入れないといけないと思ったのか、フィリップ・バートンとヘレン・カッターに繋がりがあると言い出すのだけれど、やっぱり結局二人はどういう関係だったのかを詳しく描かないので何だかよく分からない関係性でぶん投げ、フィリップ・バートンという人物がグッチャリしてしまっていた。
まだフィリップ・バートンは世界のエネルギー問題をあの機械で解決出来ると信じての行動だったらそういう人で分からなくもなかったけれど、そこにヘレン・カッターが絡んで来るとフィリップ・バートンがそそのかされて操られただけ?になってフィリップ・バートンという人物が急激に弱くなったし、やっぱりヘレン・カッターは悪い奴だ!にしておきながらもその後ヘレン・カッターに対する話は無いので取って付けた感ばかり。
ヘレン・カッターも他の生物にとって人間は害悪だから過去に戻って人間の祖先を絶滅させようとしていたのに、あの機械だと人間だけでなく全生物が絶滅しているんだから矛盾しまくりで、最後だからって強引にヘレン・カッターを絡ませてしまった悪手にしか思えなかった。

それに今までもずっと時空の扉は謎の存在として登場し続けたにも関わらず、ドラマの中ではこの時空の扉って一体何なんだ?どうして急に発生したんだ?みたいな時空の扉の原因を究明したり説明を求めようとする素振りを見せず、見ている方としては一番気になる時空の扉のそもそもを描かない事が物凄く気になっていたのだけれど、このシリーズ5の終盤ではマット・アンダーソンが「時空の扉は自然現象」と言っており、こんな短い台詞で自然現象で片付けたって事なの?
流石にぶん投げ過ぎじゃない?
シリーズ5で、これまでは危険なので何とか閉じようとして来た時空の扉を間近で見続けて来たコナー・テンプルが自ら時空の扉を作り出してしまったという展開を見せたから、これはコナー・テンプルが時空の扉を自由に作り出してしまったのが原因で、それに反応して各時代に時空の扉が現れ始め、だからやたらと現在のイギリスに繋がり始めたという時間を扱ったSFのタイムパラドックス的な時間が前後する原因になっていて、しかもこれまでの時空の扉を制御しようとしていたのが皮肉にも現れて来た時空の扉の原因になっていたという話にするんだとてっきり思っていたのにその予想は全然違っていて、時空の扉は何だかよく分からない自然現象で終わらせてしまって非常にしょうもないままだった。

マット・アンダーソン自体も未来から来たと言う台詞だけで未来での暮らしの回顧場面とか説明が無いし、そもそも何時どうやって現在に来て現在ではどの位過ごしているのか?とかの話も一切無いし、どうやってアークに潜り込めているのか?父親と一緒に来た理由は?とか背景を一切描かないし、未来に関してもあの機械が起動したらこうなるので未来がどうなったとかの説明も一切無く、人物として物凄い雑で色々勿体無い。

シリーズ4の引っ張りの謎だった19世紀から来た人々の話も、終盤でエミリー・マーチャントが現在にやって来てチームのメンバーになるんだれどマット・アンダーソンとの関係でもう一展開あるとかも無く、この最終盤で新加入メンバーを入れる意味がさっぱり分からなかったし、もう一人の19世紀人だと思われていたイーサンもこのシリーズでその後が何か描かれるのかと思ったら時空の扉の向こうに消えた後の話が一切無く、兄のダニー・クイン含めぶん投げてしまって結局よく分からない話で終わってしまっているし。

チームのリーダーがコロコロ変わってしまうので、もうほぼ主役だと思っていたシリーズ1からのコナー・テンプルとアビー・メイトランドはシリーズ4では関係性の描きが薄く、シリーズ5でやっと少しは描いていたけれどそれでも薄く、シリーズ1・2の事思うとシリーズ5が他の内容詰め込み過ぎて、ただでさえ薄かった人物描写が足りずに二人の話はこんな感じで終わりかと思うと残念。
もっとすれ違いがあっても良かったと思うし、これまで散々お互いに気はあるけれどそれを表には出さずに同居している話をやって来たのに、シリーズ4・5では二人の同居場面は無かったし、そこら辺りのいざこざも無く素っ気無い。
何より、これまで降板せずにずっと「プライミーバル」を引っ張って来たはずのコナー・テンプル役のアンドリュー・リー・ポッツはこのシリーズ5でもオープニング・クレジットやエンド・クレジットで名前が一番に出て来ないって何だかなぁ…。

このドラマでおもしろかったのがイギリス英語。
映画や海外ドラマはほとんどアメリカモノばかりなのでイギリスモノを見るのって「ドクター・フー」以来?だと思うけれど、イギリス英語が聞き慣れないのでおもしろかった。
イギリス英語の発音で有名な「can」だと、これは人によるのか、地方の方言的な発音によるのか分からないけれど、人によって「キャン」「カン」「コン」と色々と違う感じで発音していたり、コナー・テンプルとアビー・メイトランドの同居話の時には住んでいる所を「Flat」って言っていて、アメリカだと「Apartment」の日本で言うアパートが「フラット」って言うんだとか、「What?」がアメリカだと「ワッ?」に近い発音が「ウォ?」と言う発音だったり、この「ウォ?」も関係する最後の「t」が落ちるのが顕著で、アビー・メイトランドはマット・アンダーソンの事を呼ぶ時は「マ!」と一文字だけで、これって日本だと一言で人を呼ぶなんて笑かしにかかっている感じになるけれどイギリスだと全然普通なんだろうか?とか、イギリスモノは原語で字幕で見た方がおもしろいと改めて思った。

「プライミーバル」の最後になるシリーズ5ではこれまでとは少し違う事もしてみようと思ったのか、潜水艦の中とか、19世紀に行くとか、アーク内で虫が大量発生して追い詰められる等新たな事もして、毛色が違う分だけ結構おもしろいとは思ったのだけれど、如何せん謎を色々出しておいて詳しい説明も無くぶん投げて次に行くという何時もの悪癖が最後まで続くので、やっぱり役者の契約を厳しく締まってシリーズ3の最後までニック・カッターとヘレン・カッターの時空の扉を巡る争いで行って終わらせておけばなぁ…と強く思ってしまったし、ニック・カッターが途中で退場してもシリーズ3で上手い事終わらせる事も出来たんじゃないの?と思うとシリーズ4・5は蛇足な「続プライミーバル」だったように思えたし、もっと登場人物も掘れたと思ったので終始物足りなさと雑さを感じて乗れなかったドラマだったかなぁ。
 
 
関連:プライミーバル シリーズ1
   プライミーバル シリーズ2
   プライミーバル シリーズ3
   プライミーバル シリーズ4
   プライミーバル・ニューワールド(ジュラシック・ニューワールド)

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