ダークナイト ライジング

2022年08月31日 水曜日

クリストファー・ノーラン製作・監督・脚本、クリスチャン・ベール主演の2012年の映画「ダークナイト ライジングThe Dark Knight Rises)」
ダークナイト トリロジー三作目。

前作から八年。
ハービー・デントの犯罪が隠されたままハービー・デントを犯罪撲滅の象徴とし、デント法を施行した事によってゴッサム・シティでは犯罪が減っていた。
一方ブルース・ウェインは人目を避けて暮らし、バットマンも八年間現れていなかった。
ある日、ブルース・ウェインの屋敷に泥棒が入り、その泥棒はセリーナ・カイルで、彼女の目的はブルース・ウェインの指紋を手に入れる事だと判明。
その指紋を悪用してブルース・ウェインを貶めようとしたウェイン産業の役員が依頼しており、更にはベインと呼ばれている傭兵がゴッサム・シティの地下で暗躍し始めた。
危険を感じたブルース・ウェインは再びバットマンとなりベインの計画を探り阻止し始めた。

Amazon プライムビデオでダークナイト・トリロジーの配信が終わりそうで、確か以前に一作目の「バットマン ビギンズ」を見たはずだったけれど、それ以降は見た記憶が無かったので、一作目、二作目と見たので続けて見てみた。
前作がやたらと評判が良過ぎるの知ってから見た反動でそれ程はまらなかったけれど結構おもしろくはあったので、その続編なのである程度期待して見てみたけれど一作目と二作目を合わせて焼き直した様に思えてしまって全然だった。
一作目と同じ影の同盟が何だかよく分からない理由でゴッサム・シティを破壊しようとするという展開と、二作目でのジョーカーが常に先手を取ってバットマンや警察を翻弄し続ける展開をこの映画でも同じ様にしていて既視感ばかりを感じて全然乗って行けず。

一作目の時からラーズ・アル・グール率いる影の同盟がやたらとゴッサム・シティを壊していたがったけれど、この理由が全然ピンと来ず、今回もベインが同じ様な事を言って同じ様な事をしているので、やっぱりピンと来ず。
ラーズ・アル・グールのゴッサム・シティが悪に溢れかえり堕落した街だから破壊すると言うのもよく分からなかったけれど、今作のゴッサム・シティって犯罪が減って大分上向いているんじゃないの?と思ったら、ベインは金持がどうのこうのの話をして、とにかくゴッサム・シティの破壊が前提で話が進むので終始ベインに乗って行けず。
結局このベインの理屈や説教は何の意味も無く、惚れた女性がラーズ・アル・グールの娘タリアで、タリアは父親の復讐の為にゴッサム・シティを破壊したかったからベインはゴッサム・シティを破壊しようとしただけなので、最後になって話が非常にしょうもなくなってもいて更に乗って行けず。
この最後にミランダ・テイトが実はラーズ・アル・グールの娘タリアでしたというのも途中でラーズ・アル・グールの息子がベインでは?というミスリードが入るのだけれど、アメコミのバットマンを知っていると「流石にラーズ・アル・グールの息子がベインとか無茶し過ぎでしょ。」「ラーズ・アル・グールの子供ってタリア・アル・グールじゃん…?」となって、最後のどんでん返しまで何となく気が付いてしまうし、この身近な仲間が実は黒幕でした…って、ハリウッド映画はどれだけこの擦られまくってしょうもない展開が好きなんだろうかで大分興ざめ。

ベインの行動も、二作目で感じた常に悪者が様々な情報を持って先手を打って準備し行動し、ほとんど悪者の思い通りに進んで、バットマンと警察は間抜けかの様にもてあそばれて最後に逆転するという展開が似ていて既視感だし、これがどうにも乗って行けずで、結局はバットマンがボコボコになって、そこから立ち上がるという、正に「人はなぜ落ちるのか。這い上がるためだ」という言葉を見せる為の展開で、それを見せる為が先行しているのが気になり過ぎて乗れないまま。
ゴッサム・シティの全警官を動員して生き埋めにされる展開は流石に笑ってしまったし、あれだけ各地で多くの爆破物を仕掛けているのに誰も気付かず成功するとか、二作目のジョーカーの時もそうだったけれどゴッサム・シティの人って本当に大量の爆破物を気付かないんだよね。
そのゴッサム・シティの人々って二作目の時は市民によって正義が行われる事を信じても良いという話になっていたのに、この映画では爆弾で脅されているとは言え、ベインがゴッサム・シティを支配した後に抵抗してるのは小規模の警察だけで市民の抵抗が一切無いとか、この「市民なんて結局こんなもの。正義を行うのは警察とバットマンだけ」になってしまっていたのが物凄くガッカリだった。

このベインが簡単にゴッサム・シティを掌握出来たのって都合良過ぎるなぁ…と思っていたけれど、これ何でなんだろう?と思って少し腑に落ちたのは、多分「No Man’s Land」をやりたかったからなんだろうと思ったから。
「No Man’s Land」はバットマンの話の中でも有名で、地震で崩壊したゴッサム・シティを隔離して数か月でゴッサム・シティがヴィラン達の支配下となり、バットマンは現れないって、この映画の展開と似ている。

それに終盤でベインが支配しているのにブルース・ウェインが怪我してバットマンが現れない、何だかまごついて結構退屈な場面とかも「Knightfall」をやりたかったからなはず。
「Knightfall」も有名な話で、正にベインによってアーカム・アサイラムの収容者を全員解放し、バットマンを弱らせて襲って背骨を折って活動出来なくさせて、そこからバットマンが復活して来るという話だったけれど、これまで独自路線のオリジナル要素が多かったダークナイト・トリロジーで最後の三作目で急にアメコミの話を多用したり話の軸にしたのって何でだろ?

ベインもアメコミだとバットマンの背骨をへし折った強敵として有名ではあるけれど、いざ実際に実写化するとヘンテコなマスク付けてアフレコの様な加工した声で話す、とにかく肉弾戦のマッチョマンの感じがしょっぱくて何だかなぁ…な感じだったし、どうでもいい演説が非常にウザかった。
本来ならいよいよバットマンとベインの直接対決で一番の盛り上がり所となるはずの市庁舎前での対決が、周りは大勢過ぎる警官達と囚人達の殴り合いはコントっぽいし、しかも昼間のバットマンはやっぱり珍奇なコスプレ野郎にしか見えずでしょっぱい感じで笑えてしまった。
それに、話はずっとバットマン対ベインで煽っておいたのに、最後は突然セリーナ・カイルが現れて銃をぶっ放して、ベインは死んだの?どうなったの?も分からないままで終わって、急に黒幕になったタリアの方に話が移行するのでベインが実は当て馬だったと分かって尻すぼみ感が半端無かった。

あと、気になったのはバットマンの正体を知っている知らない問題。
二作目がバットマンの正体は誰だ?が話の重要な要素になっていたけれど、今作では大分バットマンの正体が結構な人にばれていて、ジョン・ブレイクが自分も孤児だから見ぬけたという大分無茶な理由でブルース・ウェインだと見抜いたり、セリーナ・カイルはブルース・ウェインを破滅させる情報を売っていて信用なんてあったものでもないのに何故か信用して正体もバレるのは気にしていなかったり、影の同盟側は正体を知っていて、だけれど世間にはばらさないとか、何よりあれだけ身近で行動を共にしている勘の鋭いはずのジェームズ・ゴードンがバットマンの正体に最後まで全く気付いていなかったとか何の冗談?だった。
バットマンの装備や乗り物があれだけ金かかっていたり超技術なのに資金力や技術力を考えてブルース・ウェインでは?と言う話が一切出て来ないし、ブルース・ウェインが引きこもって表に出て来なくなったらバットマンも消えてしまったのに誰も怪しまないとか、やっぱりゴッサム・シティの人々って馬鹿なんじゃないかと思ってしまった。

それと時間のいい加減さも。
最後核融合爆弾が爆発するまで後一分位なのに、ザ・バットに爆弾引っ張らせて海の沖合まで行くのに一分以上かかっているのに都合良く爆発しないとか、途中でも昼間で明るかったのに数分後には真っ暗な夜になっていたり、夜だったのが急に朝になったりと時間の扱い方が結構いい加減だった。

この映画、最後のこの後も続く様な締め方は好きでシリーズを締めるには上手い終わりだったのだけれど、一作目と二作目を足した焼き直し感を感じて結構飽きてしまったし、ベインの魅力も無いし、シリーズを通してそれまで正義だ悪だ、バットマンのその後をどうするのかをやっていたのに、結局バットマン万歳!で後継者の一人のヒーローが誕生する可能性だけで終わるのってどうなの?とは思ってしまった。

☆☆★★★
 
 
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