遊星からの物体X
2018年08月21日 火曜日ジョン・カーペンター監督、カート・ラッセル主演の1982年のアメリカ映画「遊星からの物体X(The Thing)」
ジョン・W・キャンベルのSF小説「影が行く」が原作。
走り、逃げる犬を銃で撃ちながら追って来たノルウェーの観測隊がアメリカの南極観測基地までやって来た。
ノルウェーの観測隊員は犬だけでなくアメリカの観測隊員をも狙った為にアメリカの観測隊員達が反撃し殺害。
ノルウェーの観測隊員達は何故犬を殺そうと追いかけて来て、彼らは一体何をしているのか?と思ったアメリカの観測隊員達は、ノルウェーの観測基地に調査に行く。
ノルウェーの観測基地は全て焼け落ち、自殺した観測隊員や、体が他の人間と融合し変形した様な死体が燃やされていた。
追いかけられていた犬を保護したアメリカの観測隊員達だったが、その犬から触手が飛び出し異様な姿へと変形し人々を襲い始めた。
わたしはこの映画は確か以前地上波で見たはずなんだけれど、その時はグロテスクな場面をバッサリ切り落した所謂地上波ダイジェスト版だった事もあって、さっぱり内容を覚えていなかった。
改めて見ると、宇宙からの謎の生命体の攻撃から逃げ回るという、映画「エイリアン」的ホラー部分から謎の生命体が実は人間に擬態して「本当はあいつは偽物では?」という心理ホラーになっている、中々良く出来た映画だった。
だけれど、グロテスクで気持ちは悪い。
この「こっちの方向で行くんだな」と思った展開が、実は途中から違った方向に行くというのがジョン・カーペンターっぽく、また、本当なら知らない内に誰かに擬態して皆が疑心暗鬼になるのに、そこら辺の描きが不十分なのでいまいち怖さが不足しているという中途半端さもジョン・カーペンターっぽいのかなぁ…と。
ただ、この手の映画って、大抵は最後の場面で怪物を全て倒したと思ったら実は生き残りがいたとかで終わらせる定番があるけれど、この映画ではカート・ラッセルともう一人が生き残り、実はどちらかが擬態した生命体なのでは?と余り思わせない終わり方だし、むしろ生き残ったは良いけれど基地は全壊だし、助けが来るかも分からない状況で外に放り出されていて結局は誰も助からないのじゃないの?と思わせる終わり方で、この上手い終わり方で非常に良い映画に思えた。
登場人物達も数は多いけれど結構人物が立っており、なのにこの手の映画のお約束的な退場の仕方ではない、急に殺されたりと意外性があるのもおもしろく見れる所。
登場人物はおっさんばかりなので、怪物と対峙してもギャーギャー口うるさく騒がないのも良い。
話はもう二三歩は足りないのだけれど、カート・ラッセルが主人公というだけでやっぱり良い。
極限の状況でも有無を言わせず仕切って、未知の化け物にも怖気づに行動する姿とか、怪物映画の主人公はやっぱりこういうおっさんでないと。
このカート・ラッセル演じるR・J・マクレディを見ていると、勝手にスネーク・プリスキンの前日譚に思ってしまって、勝手にワクワクしてしまった。
あと意外だったのが、音楽担当がエンニオ・モリコーネだった事。
「♪デデン、デデン」と低いベース音とシンセサイザーの音楽がジョン・カーペンター節なので、てっきりジョン・カーペンターが音楽もしているのかと思いきや、「夕陽のガンマン」とか「ニュー・シネマ・パラダイス」とかの様な音楽の人だと思っていたエンニオ・モリコーネがこの系統の音楽もするんだと意外だった。
この映画、カート・ラッセル!ジョン・カーペンター!という部分でおもしろく、単なる追いかけ回されるだけでなく疑心暗鬼という心理サスペンスでもあるモンスター映画として中々おもしろいのだけど、心理サスペンスとしては煽りが不十分で物足りなく、逆に怪物の造形が攻め過ぎてて、あのグロテスク感がどうにも苦手で、この怪物の造形が話よりも怖いという見栄え先行だったのがいまいちだった。
☆☆☆★★