夕陽のガンマン

2013年06月09日 日曜日

荒野の用心棒」に続く「ドル箱三部作」の二作目、前作と同じくセルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の1965年の西部劇「夕陽のガンマン(For a Few Dollars More)」。

賞金稼ぎのクリント・イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフが協力し、強盗団を追いかける。

何だか前作「荒野の用心棒」に比べて、非常に王道な西部劇になってしまった感じ。「荒野の用心棒」は黒澤明監督の映画「用心棒」を非公式に西部劇化したので構成的には「用心棒」で、どっちつかずのクリント・イーストウッドの去就と最後の畳み掛ける銃撃戦が見所だったけれど、この映画は始まりでライバルになるだろう賞金稼ぎのリー・ヴァン・クリーフを見せ、クリント・イーストウッドの登場、最終的な敵になるであろうジャン・マリア・ヴォロンテ演じる犯罪者の登場、彼等が如何に凄いかをきっちり見せ、そこから後もその前振りから想像出来てしまう様な物凄い真っ直ぐな展開で話は進み、話や構成は大しておもしろくない。終盤の流れはおもしろいけれど、そこまでの前振り感が強く、終盤の盛り上がる所までが持たない。

クリント・イーストウッドはやっぱりカッコ良いけれど、ただし前作に比べると今回の役は全然大した事無い。前作だと彼一人の存在感が物凄い前面に出て来ていたのに、それ程の魅力が見て取れないし、彼に割かれる時間も多くないので主人公なのに大して目立たず、存在感が薄く、まるでリー・ヴァン・クリーフの方が目立ち主役みたい。特に一番の見せ場であるはずの最後の一対一の対決も、クリント・イーストウッドが撃ち合う訳でなく、彼はその決闘を見取る役で脇役扱いだし、結局リー・ヴァン・クリーフがカッコ良く決め夕陽に向かって去って行くなんて、邦題もそうだけれど完全にリー・ヴァン・クリーフが主役。そう言えば、リー・ヴァン・クリーフが去って行く場面は夕陽の真っ赤な空なのに、すぐ後ろにいるクリント・イーストウッドの方の空は真っ青なので繋がりがバラバラで、カッコ良いと思って夕陽の場面を無理矢理挟み込んだ感で一杯。
このクリント・イーストウッドの扱いもそうだけれど、全体的に誰か的を絞って見せる訳でもないので構成にまとまりがなく、間延びする感じで、どうにも盛り上がりに欠ける。

よく分からないのは、クリント・イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフの二人の初対決の時の帽子の動き。まだクリント・イーストウッドが銃を撃つと帽子が向こうへ飛んで行くのは分かるけれど、リー・ヴァン・クリーフが連続で帽子を撃つと地面には落ちず空中で跳ね続けるなんて、布地の帽子が銃弾でそんな動きするか?という話。そこまで結構退屈していたけれど、そこで一気に興味が失せてしまった感じ。

「荒野の用心棒」の続編と言われると、結構普通な西部劇に落ちてしまい残念な感じ一杯。これだけで見るとそれなりの西部劇なんだろうけれど、クリント・イーストウッドの魅力が抑えられしまい、リー・ヴァン・クリーフが前に出過ぎて、結局リー・ヴァン・クリーフの物語になってしまっているのも微妙。もっとクリント・イーストウッドが見たかったのに…。

☆☆★★★
 
 
関連:荒野の用心棒

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