理由なき反抗
2013年06月08日 土曜日ジェームズ・ディーン主演の1955年の映画「理由なき反抗（Rebel Without a Cause）」。
学校にも、家庭にも馴染めないジェームズ・ディーンは、引っ越して来た町でも喧嘩になり、やがてチキンレースを始めるが思わぬ事故になってしまう。
1950年代当時の若者の何か分からぬ鬱積したモヤモヤ感を描いた映画なんだけれど、そこでは非常に王道な青春の悩み映画で、おもしろい話でもない。ジェームズ・ディーンの話は良く分かるし、成程ねと思えるけれど、彼以外の登場人物達が不可解。リーダー格が死んだら何故かジェームズ・ディーンのせいで、彼に復讐のつもりらしいけれど小さい嫌がらせ以上の事もしないチンピラ。今までの彼氏は死んでしまったら速攻ジェームズ・ディーンに乗り換える様な軽過ぎる彼女。追い詰められた感も無いのに銃を撃ちまくる頭のおかしい年下の慕って来る少年等、心情の描かれなさや話の展開の唐突過ぎる感とか、結構脚本がお座なり。終盤の少年の行動や、それに対する警察の反応とか、悲劇に持って行く為に無理矢理そうした感を物凄く感じてしまい、始めは青春映画として結構おもしろく見れたのが最後には何だかしょっぱい感じで終わってしまう。
やっぱりこの映画は、ジェームズ・ディーンを見る映画。
ジェームズ・ディーンは24歳で流石に高校生には見えず、30歳位のおっさん的渋さを持っている。以前見た「ジャイアンツ」でも感じたのけれど、ジェームズ・ディーンって青春映画の男前位に思っていたけれど、彼って相当癖のある演技をする。今だと超個性派俳優と言われる様な「癖が凄い」演技。1950年代の役者っぽくなく、自然さを出す為に物凄く細かい仕草や表情等の演技を常に入れ込んで来て、非常に現代的。24歳でこの演技するって凄い役者。だからこそ、全然高校生には見えないんだけれど。
ジェームズ・ディーンは本人自体の魅力に加え、おもしろい役柄で釘付けなのに対し、彼が惚れる相手役のナタリー・ウッドが物凄くつまらない。如何にも50年代の高校生的で、不良とつるむのも父親が構ってくれないからという、ジェームズ・ディーンと比べると相当薄っぺらい人物で、ジェームズ・ディーンが惚れたのは、わたしは全然そうは思わないけれど見た目が綺麗だからというだけの理由でしかないので、しょうも無い。
この映画の中で、悩むジェームズ・ディーンに対して父親や母親が「10年経って振り返ると…。」「10年経てば忘れる…」と言う場面があるけれど、彼には10年後所か、1年後も無かった事を思うと「だからこそ、今が大事」という彼の役が物凄く響きまくるし、それがジェームズ・ディーン本人と重なり物凄く切なく、怖くなって来る。このゾワッと感がこの映画の一番の見所かもしれない。
映像はこの当時のままだからしょうがないにしても、音楽の使い方は安っぽい。まあ、これが50年代のハリウッド映画の音楽的演出なんだけども。
始めは、自分さえもよく分からぬイライラ感を感じている青春映画で、ジェームズ・ディーンの癖が凄い演技を見て楽しむ映画で見れる映画だったのに、中盤以降のジェームズ・ディーンの周りの人物の行動の説明を端折り過ぎて、何だか訳の分からぬ行動に走る人々ばかりの上、最後の場面に持って行く為だけの強引な脚本で駄目過ぎる。ジェームズ・ディーンでなければこれ程後世に名を残す映画でもない。
☆☆☆★★