タクシードライバー

2013年06月07日 金曜日

マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の1976年の映画「タクシードライバー(Taxi Driver)」。

始めは、ロバート・デ・ニーロはベトナム戦争帰りの元海兵隊で、眠れないからという理由でタクシードライバーになり、夜中に欲望が道端に溢れる街を黙って流しているその虚無感を描いていて、非常に無為で現在にも通じる様な鬱積感と虚しさが溢れて良い感じの雰囲気。特にロバート・デ・ニーロの台詞で語らず、表情で語る演技が、その虚無感と苛立ちを見せて非常に良い。
しかし彼が喋り出し、何か行動し始めると、単なるサイコ野郎でしかないのが分かり始め、この人物に付いて行けなくなり徐々に置いて行かれてしまう。女性には強引に攻める様な人物で、しかも初めて女性と映画見に行くのがポルノ映画という何を考えているのか訳が分からない人物で、次第にこいつは考える事も無くただ衝動的に動く頭の弱い人物だと分かると、折角の乾いた無常観も無くなり、この人物の物語を見せられても興味はどんどん失せて行く。
誰かの為に生きたいと思うヒーロー症候群的人物とも見れるけれど、それも自分の鬱憤を吐き出す為の口実で、破滅型の暴力志向が強いだけだし、最後のヒーロー的扱われ方も皮肉でしかないないし、ポン引き殺して鬱積が解消したのでタクシードライバーに戻って、以前に惚れた女性を足蹴に扱って自己満足一杯でめでたしめでたしで終わられても、だから何?ばかり。

それに、時代性が強い水モノ映画な部分も付いて行き難い所。ロバート・デ・ニーロは自分本人をベトナム帰還兵と言っていて、帰還兵が元の社会に戻って馴染めないという苦悩を描いているとも言えるけれど、その帰還兵という事もと本当なのか嘘なのかも分からず、描き方としても帰還兵の苦悩を描いている訳でもは無く、単なるサイコ野郎にしか見えないし、そのサイコ野郎が生まれたこの鬱積した1970年代の雰囲気も経験していないと分かり難い所だし、この当時の時代の雰囲気をよく理解しないと乗り切れない事甚だしい。

ただ、ロバート・デ・ニーロの演技はやっぱり良い。黙って表情で語る演技は上手い。銃を手に入れ、ニコニコしながら鏡の前で強がって銃を出す練習をしている頭の悪さったら、流石に上手い。
この映画でのロバート・デ・ニーロの横顔から振り向く表情って、ちょっとキアヌ・リーブスが似ている。

特に理由無く無差別に殺人を犯す人間を主人公に映画を作るとこうなります…なアメリカン・ニューシネマなんで、今見ても時代性ばかりで付いて行けないし、無軌道な落伍者の暴走の話って全然おもしろくはないし、このアメリカン・ニューシネマが受けた時代性ばかりが目立つ水モノ映画だった。

☆☆★★★

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