オブリビオン

2017年08月05日 土曜日

ジョセフ・コシンスキー製作・監督・脚本・原作、トム・クルーズ主演の2013年のアメリカ映画「オブリビオン(Oblivion)」。
ジョセフ・コシンスキーが出版しなかったグラフィック・ノベルが原作というよく企画が通ったなという映画。

六十年前に異星人スカヴが地球を侵略し、地球側は戦争に勝ったが地球は核兵器で荒廃し放射能に汚染されて地球に住む事が不可能になった西暦2077年。
僅かに生き残った人間達は土星の衛星タイタンへの移住を行なっていたが、地球では海水を吸い上げエネルギーにしている施設を守る武装飛行ドローンの管理と修繕を行なう為、ジャック・ハーパーとヴィクトリア・オルセンが地球に残っていた。
ジャック・ハーパーは地上に残るスカヴ達と戦う生活だったが、ある日スカヴ達が地球外に通信を行なっている事を知り、その通信が示す座標に近付くと宇宙から謎の物体が落ちて来る所を目撃する。その物体にはジャック・ハーパーが夢で見る女性が乗っていた。

この映画、全編CGで作らず、実際の屋外での撮影で荒廃した近未来の地球を見せていて雰囲気が非常に良く出来ていて見た目には抜群に見せるし、「戦争に勝ったは勝ったが、地球から出て行かなくてはならない」という皮肉的な設定はおもしろく、そこで進んで行く前半部分は「これからどうなるの?!」で非常に引き付けられてワクワクして見ていた。
ただそれもジャック・ハーパーには何故か六十年前の侵略前の記憶らしきモノがあるとか、何故か未だに地上に残っているスカヴ達はジャック・ハーパーを襲っても殺そうとしないとかの謎を見ているけれど、それが大分早い段階からジャック・ハーパーの世界が嘘や虚構だという事は分かってしまい話的にはいまいち過ぎるし、その後は今まで何処かで見た事ある様な展開の寄せ集め感が一杯になり、ドンドンと興味は失せてしまった。

特に映画「マトリックス」的な展開が強く、「影響を受けた」と言えば聞こえは良いけれど、ほとんど「マトリックス」の二番煎じ的な展開と映像では今更感や既視感は拭えない。
主人公が夢で見る黒髪の女性と出会い、何者かも分からない敵っぽい黒人男性に真実を教えられて主人公が自分は特別な存在で機械に支配された世界を救うのだと黒人男性から言われるとか、ほぼ「マトリックス」。
テット内の無数のクローンは「マトリックス」での囚われた人間だし、生き残った地球人の基地に飛行ドローンが攻撃を仕掛け、それをガトリング砲で反撃し返す場面なんて「マトリックス レボリューションズ」でのザイオンでのセンチネルの攻撃を思い出したし。
その他にも、始めは主人公の味方だった飛行ドローンから攻撃されるとか、その飛行ドローンの形からも「2001年宇宙の旅」のスペースポッドっぽいし、この映画での宇宙船はディスカバリー号と「2001年宇宙の旅」と同じだし、最後のテット内部への飛行は「インデペンデンス・デイ」っぽく、動機も分からず攻撃して来て内部から攻撃したらあっけなく破壊出来る母船とかも「インデペンデンス・デイ」。

SFの設定も緩く、今更異星人による地球侵略は古過ぎるだろ…と思っていたら、それがミスリードにはなっているものの、テットによる攻撃は説明が無いままで、よくある異星人による地球侵略と大して変わらない。
わざわざ攻撃して来る相手がいる星にやって来てまで宇宙のあちこちに氷の形であったり宇宙に豊富にある水素と酸素とを化学反応で水を作り出すとかもしない恒星間航行も出来る科学技術を持った機械は何しているの?と言う話だし、地球人は2017年時点でコールドスリープやタイタンへ行けるだけの相当な技術があるにも関わらず、確かに脅威ではあるけれど人が扱う銃で破壊出来る飛行ドローンを戦争中には何故全然倒せなかったの?とか、ジャック・ハーパーはトム・クルーズだから最強であって、一般的な宇宙飛行士千人程度が襲って来ただけで地球が滅んじゃうの?とか思ってしまったし。
トム・クルーズよりも一歳若い宇宙飛行士の若田光一のクローンを千体作って銃持たせたら、地球は簡単に滅亡しちゃうって事?
テットも母船には物凄い数の飛行ドローンが残っているのに何でそれを送り出さないの?だし、既に全てを気付いているジャック・ハーパーをあっさり信用してしまい、ジャック・ハーパーの乗っている船を一切調べもせずに母船内の入れちゃって案の定やられてしまう間抜けっぷりで、テットがこんなアホなのによく地球を滅ぼせたなぁ…と思ってしまったし。
地球人側も60年も何してたの?だし。
あと、マンハッタンのビル群が覆われる程の土だったけれど、あれって津波や地震であれだけのトンデモない量の土砂で覆われるの?破壊された月が落ちて来たのなら、何でビルが結構綺麗に残ったままなの?だし。

それにこの主人公のトム・クルーズの配役は合っていないと思う。
見ていると、ジャック・ハーパーは記憶が消されているとは言え、少年的な好奇心旺盛さや素直さがあり、見ていると20代から30代位の若さがある役だと思ったけれど、トム・クルーズこの時51歳。見た目が若いとは言え、流石に50過ぎたおっさんがやる役ではないだろうと。
相手役のアンドレア・ライズボローオルガ・キュリレンコも30代前半だし。
トム・クルーズって、何時までも30代位の役しかしない印象。

そう言えば、この主人公のジャック・ハーパーと言う名前、直ぐにウィスキーの「ジャック・ダニエルズ」と「I.W.ハーパー」を思い浮かべてしまい、偽名、もしくは本名が無いので取って付けた様な名前かと思いきや別に全くそんな事なかった。
それにトム・クルーズはこの「オブリビオン」の前年に映画「アウトロー」でジャック・リーチャーを演じているのに直ぐ次の映画でジャック・ハーパーって、「ジャック」と呼ばれると「ジャック・リーチャー…」って思ったし。

この映画、始めは在り来たりではあるものの、二人だけで生きて、そこに謎が散りばめられ、荒廃した映像と二人が住む綺麗な住処の対比とかでおもしろく見ていたのに、中盤辺りからのネタバラシの展開が非常に在り来たりな、これまで描かれて来たSFを寄せ集めてお手軽に落とし込んだ感じしかしなくて物凄く微妙。
たった一人の自己犠牲で世界を救っちゃうとか、愛こそ全てな如何にも欧米的、ハリウッド的映画の仕様にも落とし込んだ感じもおもしろく感じなかった。

☆☆★★★

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