コラテラル

2017年08月06日 日曜日

マイケル・マン製作・監督、トム・クルーズジェイミー・フォックス共演の2004年のアメリカ映画「コラテラル(Collateral)」。

タクシードライバーのマックスが偶然乗せた男が暗殺者で、彼に強引にタクシーを運転させられながら彼の暗殺の手助けさせられる事になる。

マイケル・マン、トム・クルーズ、ジェイミー・フォックスと有名所が並び、トム・クルーズが悪役を演じた事でも話題となり、夜のロサンゼルスのお洒落な雰囲気や殺伐とした二人の会話劇等、話題性があったり、見せる映画でもあるけれど話は非常に凡庸なサスペンス。

始まりは怪しいトム・クルーズの行動を少し見せ、ジェイミー・フォックスの気だるさがありつつも女性客との小粋な会話で掴みは非常に良い。
タクシーでの移動も「緊迫感を出すべきサスペンスでどうなの?」とは思うけれど、落ち着いた雰囲気で見ていられるし、ジャズだのでイケている感じをゴリゴリと押し出して来ていて、その雰囲気の狙いは当たっている。

ただ、展開は関係無い人が無理矢理巻き込まれてしまう型のサスペンスの典型そのものでしかないし、微妙な部分も多し、設定先行のご都合的強引さが目立つ。
トム・クルーズは最初の行先で行き成り失敗をしてジェイミー・フォックスを巻き込んでしまうのだけれど、このトム・クルーズの役は非常に手慣れて慎重な暗殺者のはずなのに初っ端から大間抜けを披露。
その後も凄腕の暗殺者なはずなのに殺害した相手がいる机のグラスの指紋をふき取る訳でもないし、病院にしろ、ジャズ・クラブにしろ、クラブにしろ、監視カメラも目撃者も多数いる場所も特に気にせず堂々と入って行くし、あれだけ目撃者がいるクラブで銃撃戦を行なって自分の顔を公然としても構わず逃げ切れると思っていたりと、何処が凄腕なのか終始疑問に思えてしまう。
単に確実に標的を殺害出来るというだけで自分の正体を守る様な素振りが見られない。
しかし、自分の雇い主には絶対直接会わず、雇い主も顔を知らないという状況で、雇い主には顔バレしてはいけないけれど、町中の監視カメラや目撃者には顔バレして警察やFBIに正体を知られても全然構わないって、意味不明。

偶然乗せたトム・クルーズが暗殺者というのはそもそもの導入なので、これを「都合良過ぎ!」と否定してしまうとどうしようもなくなるのでしょうがないとは言え、トム・クルーズの役の設定として慎重な暗殺者なのに、問題が起きる事が簡単に予想出来るタクシーを何故使っているのかが意味不明。
自分でもいいし、雇い主でもいいから自分が自由に使える自動車を用意した方が全然良いじゃん。

それに初めに乗せた女性が検事で、その後直ぐに乗せたのが暗殺者で、その暗殺者が検事も標的にしていたとか、展開としては早い段階でネタがばれるし、これも都合良過ぎな展開。
真面目な人が強制的に人殺しの手伝いをさせられ、逃げ出そうとすると関係無い人が殺され、何とか敵に一矢報いようと行動しても遠回りをしただけで計画は続行し、自暴自棄になって無茶をすると敵をやっと翻弄させる事が出来、最終的に一対一の対決になるという展開なんて、これまで散々使い擦られて来た展開じゃない。

一番都合良過ぎな上、「本当に凄腕の暗殺者なの?」と疑問に思ったのが、最後の二人の銃撃場面。
片や、さっき初めて銃を撃ったタクシー・ドライバーが狙いも定めず目をつぶって無暗に銃を撃ちまくり、片や、これまで何度も銃を撃ち、正確無比な狙いの凄腕の暗殺者が銃を撃ったら、素人のタクシー・ドライバーには一発も弾が当たらず、暗殺者が致命傷を受けるとか馬鹿馬鹿しい。
これまでのトム・クルーズの銃撃は何だったの?これまでの振りを一切無視した都合だけの銃撃。

トム・クルーズは髪を白髪交じりにし、髭も生やして何時もの雰囲気とは違う悪役を演じているとは言え、やっぱり何時もの正義のヒーローのトム・クルーズ顔なので、「ああ、トム・クルーズが悪役やってんな…」以上の深みは出て来ない。
役柄も、暗殺者は色々偉そうな事を言ってジェイミー・フォックスを揺さぶって、「俺を否定出来るか?」なんて言ってはいるけれど、面倒臭くもありながら毎日母親を見舞って真面目にタクシー運転手として働いている人間なら、金の為のなのか、単に快楽殺人者なのかもそこら辺が描いていないのでさっぱり分からないけれど、どっちにしろ頭のおかしい大量殺人犯なんだから簡単に否定出来るだろう…という、これまでのハリウッド映画でよく見て来た、自分に都合の良いだけで何の共感性も無い悪役でしかない。
凄腕暗殺者なはずなのに次々と間抜けを見せびらかす上に背景が全然見えて来ないので、やっぱり深みは無い。
一方のジェイミー・フォックスは流石に一小市民をきちんと見せているなぁと。
トム・クルーズの場合は本人の演技力どうのこうのじゃあなくて、脚本の描かなさ、突っ込まなさなんだろうけれど。

この映画、監督や出ている役者、雰囲気で持ってはいるけれど、話にご都合主義がそこかしこにあり、至って普通のハリウッドのサスペンス映画でしかなかった。
この映画の雰囲気だと、こんな凡庸なハリウッド型に落とし込まずに、もっと悶々と憂鬱とした、今の自分を抜け出そうとして抜け出せないタクシー・ドライバーだけに絞り、そこに少し暗殺者が絡む位だったらば結構おもしろかったと思うのに。
そう言えば、始めにほんの少しだけ登場したジェイソン・ステイサムは何だったの?てっきり、その後で絡んで来ると思ったのに。

☆☆★★★

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