96時間/リベンジ

2017年04月05日 水曜日

オリヴィエ・メガトン監督、リュック・ベッソン製作・脚本、リーアム・ニーソン主演の2012年のフランス映画「96時間/リベンジ(Taken 2)」
映画「96時間」の続編。

前作で娘を誘拐されたブライアン・ミルズは、やっぱり娘が心配で自動車運転を教えたりと顔を会わせていた。
前作でブライアン・ミルズが皆殺しにした犯罪組織のボスの父親が復讐を企み、イスタンブールに仕事で来ていたブライアン・ミルズと彼の元妻と娘の誘拐を計画していた。

前作は、あのほのぼの父娘のコメディから娘の誘拐になり、電話で冷静に取るべき行動を教える父親という非常に上手く緊迫感のあった導入でおもしろかったのに、その続編はクソつまらなかった。

まず、前作で中盤以降主人公がやたらと残虐になり、とにかく皆殺しにしてしまうという展開に疑問を感じてしまったけれど、この続編で「無残に残酷に殺されてしまった息子の復讐に走る父親」という設定で結構納得。しかし、リュック・ベッソンの事だから、とにかく皆殺しで楽しいアクション映画を…と考えて、その結果でたまたま続編が作れるのでそれを活かしただけの事なんだろうけれど…。
この復讐という時点で、始まった瞬間に「また、家族が誘拐されるけれど、結局はリーアム・ニーソンが敵を皆殺しにして終わりなんでしょ…?」と思ってしまい、ほぼそれがそのまま繰り広げられるだけなので、まあただでさえ低い期待値を超える事も無く終わってしまう。

一作目が娘の誘拐で、それを助けようとするリーアム・ニーソンだったので、続編では今度は逆にリーアム・ニーソンと元妻が誘拐され、リーアム・ニーソンが動けない中で娘が助けようとすると言う展開になり、「どんだけ町の地理と自分の位置把握正確なんだよ!」というツッコミはあるにしろ、その部分だけはおもしろかった。
ただ、娘はあの細い路地の中を超一流のスタント・ドライバー並みに自動車運転してしまい白けるわ、元妻を助けに行く終盤になると一切娘が出て来ず、娘の存在がいらなくなってしまうわで、この再び誘拐は序盤は成功かな?とは思ったけれど、終盤では失敗でしょ…と思ってしまった。

それに、この映画の題材が「暴力による解決が更なる暴力を生み出す」「憎しみの連鎖」を扱っているので、そこら辺の主張があるのかと思いきや、流石はリュック・ベッソン。「問題は皆殺しにすれば全て解決し、ハッピーエンド」という酷い結末しか見せずに終わる。

脚本や展開も酷くつまらないけれど、この映画で一番酷かったのが編集。
最近のアクション映画の傾向でもあるけれど、カットを短くして早く繋いでアクションを素早く見せるというのがあるにしろ、この映画の編集は短く切り過ぎて何が行なわれているのかを把握出来ない。
例えばリーアム・ニーソンのアクション場面だと、リーアム・ニーソンが右向いていた直ぐ次の瞬間には左側からのカットになり、直ぐ次にはリーアム・ニーソンの背中側のカットになりと、数秒もない短いカットでリーアム・ニーソンの向いている方向が違ったり、やって来た敵の方向が直ぐ次のカットで別の方向になっているので、見ていても「何?何?誰が今何しているの?」と訳が分かんない。
自動車での街中を走る場面も「今自動車がどっちの方向向いていて、どっちにハンドル切ったの?」とか、見ていても混乱ばかり。
これって、その太った体でアクションをしても動けないのを誤魔化したり、最早自分がアクションをするのが面倒でスタントを多用して、それを誤魔化す為に顔を映さず手足だけのカットを連続して早く繋いで行く、省エネ・アクションの大家スティーヴン・セガールのビデオ映画の編集と同じ。
今回も前回の内容も、家族が誘拐されて自ら一人で犯罪組織に堂々と乗り込んで行って皆殺しにしまくるだけというスティーヴン・セガール映画と大して変わらず、単にスティーヴン・セガールをリーアム・ニーソンに挿げ替えて大きな制作費で作りましたという映画だし。

更に酷いのは邦題。
前作で原題は「Taken」なのに「96時間」と勝手に邦題を付けていたけれど、それは「誘拐されてから無事助けられるのは96時間…だと思う…」と言う主人公の予想からで、しかしそれも今作の元妻の「娘を72時間で助けた」という発言で、実は96時間もかかっていなかった事が分かりながらも一度勝手に付けてしまったので続編も同じ題名にしなくてはならず、しかも今回は96時間は全く関係無く、しかも「リベンジ」しようとしているのは敵側で、最早邦題は何のこっちゃ?な意味不明な題名になってしまっているし。
近年の邦題の出来の悪さ、感性の無さったらなく、日本の配給会社の体たらくしか見えて来ない。

それにしてもリュック・ベッソンって、細い路地でタクシーを走らせるのが好きだな。
彼のお家芸と言えば聞こえは良いけれど、最早そればかり、それでしか見せる事が出来ないんじゃないの?と思えて来てしまう。

この映画、一作目に比べると主人公の情報収集能力や娘を見付ける事が出来るかもしれない…という緊迫感等、あれだけ見入らせた要素を削ぎ落とし、分かり切った誘拐までの時間をかけ過ぎながら、自分が逃げ出した後に元妻を助けに行くと言う緊張も集中力も分断させる二部構成にしてしまったり、暴力が復讐を生み出すという題材なのに皆殺しにしてお終いという見終わってもスッカスカの内容に見難過ぎる編集と本当に酷い映画。
結構以前から、「一作目がおもしろかった映画は二作目の方がおもしろくなる」という傾向を感じていたけれど、ここまで二作目で落ちた映画も珍しいんじゃないだろうか?

☆★★★★
 
 
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