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海底2万マイル

2017年04月04日 火曜日

リチャード・フライシャー監督、カーク・ダグラスジェームズ・メイソンポール・ルーカス出演の1954年のアメリカ映画「海底2万マイル(20000 Leagues Under the Sea)」。
ジュール・ヴェルヌのSF小説「海底二万里」が原作。

1868年、各海で謎の怪物が出現し、船舶を沈没させる事件が起きていた。
フランスの学者アロナクス教授の元にアメリカ政府の役人が訪れ、怪物の正体を突き止めて欲しいとの依頼を受け、アメリカ軍の軍艦に乗る事となった。
数ヶ月後に現れた謎の怪物に襲われて軍艦は航行不能。アロナクス教授と彼の助手コンセイユと銛打ちとして軍艦に乗船していたネッド・ランドは海に投げ出されて漂流していた所で謎の潜水艦を発見する。
潜水艦は当時の技術を遥かに超えた技術で作られた物で、その発明者でもあり艦長でもあるネモ艦長によって三人は捕虜として拘束されてしまう。
怪物だと思われていた潜水艦ノーチラス号は攻撃的で破壊的な地上の船を破壊するという信念を持ったネモ艦長によって運営されていた。

わたしは原作を読んだ事がないので、どれだけ原作に忠実なのかは分からないけれど、この映画を見た感じは非常に小説的だと思った。
教授と助手とネッドが何故ノーチラス号に乗るのかの説明を丁寧に続け、その後はネモ艦長がどの様な人物なのかを徐々に見せて行くという展開は小説的。
ただ、その分映画としては前半はダラダラとして盛り上がりに欠け、見せ場が少ない。もう少し何かが起これば集中力は続いたのに…と思う所。
後半になって、ノーチラス号の座礁。巨大イカの襲撃。島を取り囲んだ軍隊と立て続けの危機がある分、やっぱり前半の退屈さで後半の盛り上がりまで持たなかった。

三人の主要人物の描き方は、それぞれがバラバラの方向を向きながら色んな立場の代弁者であるという役割分担があり、非常におもしろかった。
ネモ艦長は自分が発明した様々な技術の危険性を良く知り、人間や国の自分勝手さや傲慢さや残酷さを知っていながら、自らやっている事はその嫌悪している相手と変わりなく、矛盾を抱えつつ苦悩しているという人物で、狂気と正義の狭間の人物としては非常に良く出来ている。
このネモ艦長が人物として立ち過ぎ、彼の理論がしっかりと響くので、外から来た三人の意見が大して響かない事になってしまい、他の主張の弱さが目立ってしまうけれど。

アロナクス教授は如何にも科学者然としていて、ネモ艦長の狂気に恐怖も感じながら見た事の無い科学技術にワクワクしっぱなしで、徐々にネモ艦長の人となりを知るという狂言回しの役割もあり、始めの頃の役割としてはおもしろい役ではあった。しかし、終盤になると余り重要さが無くなり、変に説教っぽい当時の原子力の比喩を分からせる役に落とし込んだのはいまいち。

ネッドは非常に分かりやすい役で、とにかく外に出たい。当時の映画だからかほとんど描写が無かったけれど、女を抱きたいという強い意志を持った役で、こちらはノーチラス号に問題を持って来るという狂言回し。
このネッドは前半はカーク・ダグラスの個性で役は非常に立っていたものの余り目立つ事もなかったのに、後半では彼のアクション映画的になり、映画の構成自体もそうだし、このネッドの役としても配分が不均等な感じはした。
現在の映画だとこのネッドが主人公っぽいし、クレジットもカーク・ダグラスが一番目なので主役っぽくはあるもののそうでもなく、ネモ艦長とアロナクス教授の関係が主軸で、そこに上げ下げの強調を加えるのがネッドの役割で、この関係性や立ち回らせ方は主人公がいない群像劇として中々良く出来ている。

SFとしては結構微妙な部分も多い。
ネモ艦長がどうやら一人で様々な発明をしたらしいけれど、彼は一体どうしてそんな知識や技術を持っていたのかの説明は無いし、囚人から逃げ出してひっそりとノーチラス号を作ったらしいけれど、でもあれだけの量の精錬された鉄は何処で手に入れる事が出来たのか?とか、発明してもそんな最先端を通り過ぎ、超技術を実際に作り出す為の技術を仲間の囚人達が持っていたの?とか、そこら辺の説明は一切無し。
謎のエナジーも燃料補給に関しては一切触れられないし。
それに、海底で海産物を育てたり、漁をしたりというのは良いんだけれど、魚等を捕まえた後しか映しておらず、あれだけ行動が制限された潜水服で魚をどうやって捕っているの?とかの疑問があったし。

映像や特撮については、今見ても結構良い。
流石に水面を走るノーチラス号は波の大きさで模型感や小ささが分かってしまうものの、水中での映像やノーチラス号から見る海の中の合成とかは良く出来ている。
特にノーチラス号が潜水する時に窓から見える海面から海中への変化は見ていて気持ち良い。
窓から見える海中の映像の合成も良く出来ているし、逆の海中からノーチラス号の窓越しに見える登場人物達の映像とかは非常にカッコ良い。

わたしがこの1950~1960年代位のこの時代の映画がどうにも駄目なのが音楽。
この時代の音楽って、オーケストラの楽器で途切れる事無く音楽が流れ続け、見ていると頭がおかしくなってしまいそうになる。どうにも西洋古典音楽的な音楽が延々と流れているのが駄目。
それに、「ここ、面白い所ですよ!」という場面で、ひょうきんな音楽や音楽効果を入れるのも小寒くて見ていられない。

この映画、1954年の映画としては中々良く見せるSF映画。
海中の映像も良く出来ているし、巨大イカとの戦いも意外と良かったし。
それに各人物のバラバラな立場での生き方を見せるのも良かったけれど、やっぱり映画としては前半から中盤までの退屈さが如何ともしがたく、もっと盛り上がる構成だったら…と思ってしまった。

☆☆☆★★

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