沈黙の追撃

2015年11月07日 土曜日

アンソニー・ヒコックス監督・脚本、スティーヴン・セガール製作総指揮・主演の2005年の映画「沈黙の追撃(Submerged)」。
劇場公開されていないビデオ映画。

かつて軍の特殊部隊で無茶をした為に投獄されたクリス・コーディーは軍からの依頼を受ける条件で釈放された。依頼とは、ウルグアイでシークレットサービスに米大使が殺された事件の犯人はマインドコントロールされており、その実験をしている科学者の暗殺だった。クリス・コーディーはかつての部下達と共に科学者の隠れ家へと乗り込んで行った。

スティーヴン・セガールの映画は、スティーヴン・セガールだけが目立って一人で殺しまくる映画か、大勢の人を出してスティーヴン・セガールの出番を少なくしておいてスティーヴン・セガールが省エネで映画作るのか二種類に別れるけれど、これは後者。
スティーヴン・セガールが主役なはずなのに部下達やCIA女性捜査官の方が目立ち、かつてのスティーヴン・セガール映画ではなく、まさに21世紀の省エネのスティーヴン・セガールのビデオ映画。

スティーヴン・セガールが大してアクションしないという省エネ・ビデオ映画には何作も見て慣れている所はあるけれど、それでも脚本が酷い。スティーヴン・セガール達を監視するはずだったCIA捜査官は序盤に登場してから5分も経たない内に、何の振りも説明もないままスティーヴン・セガールが裏切り者と見破ったのか、ただ単に気に喰わなかっただけなのかの理由も全く示されないまま一人置き去りにされる。そのCIA捜査官はすぐさま敵側の人間だった事が分かるけれど、振りと収束が適当過ぎる展開で序盤から駄作感が一杯。
そもそも洗脳して遠隔操作で行動するとか、設定が適当過ぎる。どうやって遠隔操作で相手の行動を操作しているのか?とか、その起動方法は?とかが一切出て来ないので、遠くから魔法で相手を操っている様にしか見えない。

酷いのはスティーヴン・セガールの衣装もで、部下達はちゃんと迷彩柄の戦闘服を着ているのに、何故かスティーヴン・セガール一人だけ薄緑色の襟のあるシャツに何時もの丈の長い革のジャケットを着ている。スティーヴン・セガールという記号的な存在や主役でさえあれば良くて、別に舞台設定とか関係無いんだろうなぁ…。
それにスティーヴン・セガールが使っている散弾銃は一切リロードせずに連発出来る謎の銃だし、スティーヴン・セガールは敵の銃弾に一切当たらない。当たらないのはスティーヴン・セガールだからという納得出来る言い訳があるにしろ、元海兵隊とか元特殊部隊だったという部下達が、前から大勢の兵士達が銃を撃って来るのに一切物陰に隠れず、敵の正面に対して棒立ちのまま銃を撃っているという酷い銃撃戦が繰り広げられるのは何なのだろう?それでもまだ、部下の誰一人として弾が当たらないならそういうモノだと納得出来るのに、一人二人は敵の弾にしっかり当たるんだから、そりゃあ隠れないからでしょ…と突っ込み入れるしかないし。
更にスティーヴン・セガールは銃撃って来る敵達に対して急に銃を撃つ手を止めて敵に向かって走り出し、その時は何故か銃を撃って来ない敵を殴り倒してしまう。太ってしまい、走ってもモタモタしているスティーヴン・セガールが敵まで辿り着ける事が何よりも不思議。

この映画での一番の見せ場は、潜水艦の厨房でスティーヴン・セガールが敵との一対一での戦いで、敵が包丁を取り、スティーヴン・セガールも包丁を取っての戦い。完全に「沈黙の戦艦」でのスティーヴン・セガール対トミー・リー・ジョーンズの戦いの再現。ただし、この映画では数秒だけの上、他の場面との行ったり来たりで何が何だか分からないまま終わってしまう。二人が包丁を手に取った瞬間は「おー!」と盛り上がったのに、数秒後にはガッカリしているというこれまた酷い場面。

笑ってしまうのが、スティーヴン・セガールが彼の元部下達が集められた部屋に入ると一人一人の寄りの画になり、名前と元の所属と得意分野が次々と字幕で表示される演出。物凄くゲームっぽい。一般的な映画じゃ、あんまりやんない演出だよなぁ。
そうやって一人一人の人物を立てようとしているのに、ほとんどの部下が全くその個人の得意分野を発揮しないまま死んで行くので、ただカッコ良い風の演出がしたいだけで全く必要が無い演出だった。
その他の場面でも、映画内では終始カメラを動かして短く切った場面を挟んで来る編集が多いので見難い事この上ない。アクション場面でも短く切ったカットを多用するので、何がどうなっているのが分かり難いし。

この映画、全てを強引にねじ伏せたままの酷い展開の連続で、これぞスティーヴン・セガールのビデオ映画。更に日本では頭に「沈黙の~」と付けておきさえすれば、それなりにレンタルやテレビ放送されるんだから「沈黙の戦艦」の影響力は凄い。

☆★★★★

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