沈黙の戦艦

2015年11月01日 日曜日

アンドリュー・デイヴィス監督、スティーヴン・セガール製作・主演の1992年の映画「沈黙の戦艦(Under Siege)」。

退役を間近に控えた戦艦ミズーリで艦長の誕生日パーティーが開かれようとしていた。パーティーの催し物を出す一団がヘリコプターでミズーリに乗船して来たが、彼らは副艦長と手を結んだテロリストだった。そして、偶然副艦長に反抗し冷蔵庫に閉じ込められていた元海軍特殊部隊で現料理長のケイシー・ライバックが立ち向かう事になる。

映画「ダイ・ハード」がテロリストが占拠したビルの中、たまたま居合わせたジョン・マクレーンが一人で何とかして立ち向かう映画だったけれど、それを海上の戦艦でやってみました…な映画。…なんだけれど、こちらは「ダイ・ハード」程の弾ける様な興奮は無いし、展開や会話等脚本の上手さも無く、閉鎖的で孤独な舞台設定を入れただけで、やっぱりスティーヴン・セガールで映画。
「ダイ・ハード」だと、敵に知られず行動しながら外との交渉も行って現状の報告と窮地を救う手助けを求めて行くおもしろさや、ブルース・ウィリスの悪態付きながらの会話もおもしろかったのに、この映画ではスティーヴン・セガールの隠密行動は敵を掻い潜って相手の裏を突いたり、敵に罠にはめられたりのおもしろさが無いし、外とも早い段階で情報のやり取りが簡単に出来てしまい、司令部とのやり取りも余り跳ねないし、スティーヴン・セガールもまだ始めの料理長の時は冗談や悪口言う結構陽気な人物だったのに、敵との戦闘が始まるとほぼ無口の何時ものスティーヴン・セガールになってしまい、会話劇がおもしろくないではなく、会話劇さえ無くなってしまうのでつまらなくなってしまう。
何より、スティーヴン・セガールが特殊な状況に追い込まれているという他のセガール映画とは違う特殊な設定なのに、スティーヴン・セガール演じるライバックは元海軍特殊部隊員なので、銃器や爆薬、特殊な機器も全て熟知していて、問題が起きても簡単に解決してしまい、肉弾戦になっても毎度の全然スティーヴン・セガールが傷付かず簡単に敵を倒してしまうので、今見てしまうと「またか…。」の、あの残念感ばかり。当時、まだスティーヴン・セガールを知らない状況で見た時は結構おもしろかったのに…。

展開も、序盤はスティーヴン・セガールが主役で彼ばかりの展開だったのに、トミー・リー・ジョーンズが正体を現してからは敵一味の話が多く、その悪役と司令部とのやり取りも多く出て来て誰が主人公だか分からなくなる様な配分になってしまっている。
始めはスティーヴン・セガール一人で行動し、それが閉鎖空間で大勢の敵と戦うと言うこの映画の特徴かと思ったら、早い段階で女性と一緒に行動し始めて、孤独な戦いではなくなるし、この女性の導入がそんなに効果的な展開を見せる訳でもないし、その後一気に仲間と合流して一人の隠密行動は無くなるのに、その仲間達の一人一人の人物が立つ程の見せ場は無いままと、何で大勢で行動する様な展開にしたのかいまいち分からない。途中でスティーヴン・セガールと同行する事になった女優は、スティーヴン・セガールが無口なので彼女に説明するからスティーヴン・セガールが喋るという事の為だけに入れ込んだ感じだし、最後までスティーヴン・セガール一人で行動し、一人で敵を倒して行く展開の方がスティーヴン・セガール映画としてもおもしろかった様におもえるのだけれど。

結局トミー・リー・ジョーンズは金の為だけの犯罪者だったけれど、サイコパス的な部分を見せたのでどっちつかずの中途半端な悪役になっているし、そう言えば残った敵一味はどうなったの?とか、CIA絡みの話が出て来たけれど、それを出した意味あった?とか、脚本の緩さが気になるばかり。この映画の脚本を書いたJ・F・ロートンって「プリティ・ウーマン」とか、「チェーン・リアクション」とか、「DOA/デッド・オア・アライブ」とかの脚本を書いた人なのか。成程。

スティーヴン・セガールは序盤こそ、セガール映画っぽくない結構明るい人だったのが、中盤以降はしかめっ面のセガール無双になるので、折角の役も毎度のスティーヴン・セガールになってしまいおもしろくはなく、クリル中佐役のゲイリー・ビジーやトミー・リー・ジョーンズが張り切っているので、段々と誰が主役なのか分からなくなる。特にトミー・リー・ジョーンズは、近年ではしかめっ面の生真面目な役柄が多いけれど、これでははっちゃけてサイコパス的な人物にしていて、彼の印象とは違う役柄で今見るとおもしろい。にしても、トミー・リー・ジョーンズって「逃亡者」とか「メン・イン・ブラック」とかでもそうだけれど、主演の方が名前が大きい様な映画での助演だと主演を喰ってしまう位の存在感と前面に出る感じは凄い。
それに良く見た顔も多く出演。「クローザー」のフリオ・サンチェス役でお馴染みレイモンド・クルス。「24」のアーロン・ピアース役でお馴染みグレン・モーシャワー。「ER」の受付フランク・マーティン役でお馴染みトロイ・エバンス。「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」のマイルズ・オブライエン役でお馴染みコルム・ミーニイ等。コルム・ミーニイって、スタートレック以外で見る時って悪役が多いよなぁ。

この映画、設定はおもしろいのに、今見てしまうと「やっぱりセガール映画かぁ…」と思ってしまう部分が多く、展開や人物がどれも緩く、スティーヴン・セガールでなかったらもっとおもしろくなっていたんじゃないの…?と、思ってしまう。ただ、スティーヴン・セガールとトミー・リー・ジョーンズのナイフでの早い近接格闘場面はおもしろい。でも、昔見た時はもっと長い間キンキンやり合っていた印象があったのに、改めて見ると結構短く、もっとやり合って欲しい部分でもある。

☆☆☆★★
 
 
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