暴走特急

2015年11月02日 月曜日

ジェフ・マーフィー監督、スティーヴン・セガール製作・主演の1992年の映画「暴走特急(Under Siege 2: Dark Territory)」。
原題を見たらけれど、「沈黙の戦艦Under Siege)」の続編。

元海軍特殊部隊のケイシー・ライバックは疎遠だった兄が死に、彼の娘と列車の旅に出た。しかし、テロリスト達が列車を乗っ取ってしまい、ケイシー・ライバックは彼等を倒そうとするのだった。

スティーヴン・セガールの映画と言えば、今でも全くシリーズでもないのに邦題に「沈黙の~」と付けて日本で勝手に沈黙シリーズにしてしまっているのに、この映画はスティーヴン・セガールが「沈黙の戦艦(Under Siege)」と同じ人物ケイシー・ライバックを演じている直接的な続編なのに、何故か「沈黙の」と付いておらず、この時点ですでにグダグダだけれど、映画も続編なのに前作とは関連性がほぼ無いという続編である必要性も無い変な続編。しかも話は「沈黙の戦艦」が結構微妙な感じだったのに、それ以下の続編になってしまっている。

「沈黙の戦艦」は、戦艦を乗っ取られ、その戦艦の乗務員としてスティーヴン・セガールが戦うという状況は分かるけれど、今回は本当に関係の無い場所でテロリストに偶然出会わせてしまい、それを排除するだけなので、そもそもの設定自体がつまらない。
敵はただ金が欲しいから衛星兵器を使って世界中で爆破を起こしいているだけのしょうもない頭のおかしい奴らで、ただスティーヴン・セガールに翻弄されるだけの頭の悪さしかない集団なので、ここもつまらない。

スティーヴン・セガールの戦いも、前半一時間位はテロリストの話ばかりで全然活躍せず、列車の外や上を伝って移動しているだけだし、機転を利かせて相手を出し抜いたりも少ないし、銃で相手を撃ち殺すばかりで肉弾戦も少なくてアクションの面白味は無い。
何より列車と言う舞台設定を特に活かしていないのも面白味が無い部分。列車だからと言って車両内が異様に狭い訳でもないので戦いに特徴が出る訳でもないし、上客が一杯いて人質にされているから彼らと何かしらの協力をして行動するかと思いきや特にそんな事もないし、別に狭く限定された列車でなくとも全然構わない内容でしかない。
そもそもテロリスト達が何で列車を乗っ取ったのかもいまいち分からない。移動していたら位置を特定されないと言うなら列車でなくて大型トレーラー内でやっとけばより自由が利いて人質等の問題も無いじゃん。「前作が列車だったから、今度は列車かなぁ?」という設定が先行して、それに合わせる為だけに脚本を作っている感じしかしないけれど、その設定を活かしていないお座なりな脚本。

他の細かい部分も大分適当。
アメリカ政府が秘密裏に作った衛星兵器は、粒子ビームを発射して対象を爆破したり、地震を起こしたり、高速飛行しているステルス戦闘機にビームを当てる事が出来たりするというSF設定と言うより、トンデモ兵器設定にする必要性が分からない。粒子ビームを発射する衛星って、それだけの高出力の電力源って何なの?とか、粒子ビーム発射するならトンデモない大きさの衛星になるんじゃないの?とか、いらない引っ掛かりばかり出て来て、各国の核兵器を遠隔操作してしまうだけで良いんじゃないのと思ってしまう無駄なSF設定。

前作と同様スティーヴン・セガールは冷蔵庫に入っていて助かるけれど、何で食堂車でケーキを作っているのか?とか、何でライバックの兄が飛行機事故で死んだ話が必要なのか?とか、姪っ子との上手く行っていない関係を出してはいるけれど、それが何かの決着や葛藤を生み出さないから何で出す必要があったのか?とか、そもそも何で姪っ子と旅行していているのか?とか、説明の無い伏線にもならない無駄にしかなっていない話が多く、真剣に見ていると馬鹿馬鹿しくなって来る。ここら辺って後から継ぎ足しただけの様な感じしかしない。
途中でスティーヴン・セガールが列車を降りてしまい、そのまま列車が走り出して置いてけ堀にされるという展開になり、どうやって列車に戻るのかと思ったら、道端に偶然あった自動車を拝借して戻るという、何でわざわざ列車を降りさせる必要があったのか分からない戻り方を出したり、テロリスト達がライバックの姪っ子を探し出すのも乗客全員を一人一人名簿と名前を言わせて確認を取っていないのに、急に姪っ子の前に行って質問したら、その子がライバックの姪っ子だったというカンにしても適当過ぎる展開。本当に脚本がグダグダしている。
この雑な脚本を書いている二人の内、マット・リーヴスって「クローバーフィールド/HAKAISHA」の監督なのか。

まだスティーヴン・セガール初期の映画なのに、一番の見せ場のテロリストの親分との一対一の対決場面では、同じカットを使い回して編集で誤魔化して一杯アクションをしている風に見せるという、これ以降量産されるビデオ映画での省エネアクションの誤魔化しと同じ事をすでにこの時からしている。

この映画、「沈黙の戦艦」の続編ではあるけれど、スティーヴン・セガールが同一人物を演じているだけで特に前作を活かす部分も無いし、前作の限定された設定を活かす様な事を再び狙ってはいるけれど乗っ取られた列車の舞台設定が活きて来ず、人物設定と舞台設定共に無駄にして面白味の無い展開にしてしまっている。
確かスティーヴン・セガール映画って、「沈黙の戦艦」で一気に注目を集め話題になって、それに便乗して全然続編でもない映画「On Deadly Ground」に「沈黙の要塞」という邦題を付けて話題を誘ったけれど、見てみると「沈黙の戦艦」と全然関係無くて「あれ…?」となり、「沈黙の要塞」から一年後のこの続編に何故か「沈黙の~」と付けずに公開して、内容もこれだったので、早くもスティーヴン・セガールが一般受けするアクションスターから転げ落ちて行ったというスティーヴン・セガール映画の歴史的な転換時期の映画として見れば、ある意味おもしろいかも…。

☆★★★★
 
 
関連:沈黙の戦艦

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