沈黙の要塞

2015年11月03日 火曜日

スティーヴン・セガール製作・監督・主演の1994年の映画「沈黙の要塞(On Deadly Ground)」。

アラスカで石油採掘所を新規建設中の企業エイジスは、その採掘所が数日後にまで完成しないと採掘権を手放してしまう事になるので不良品の部品まで使い建設を急いでいた。
エイジスで事故処理の専門家を務めているフォレスト・タフトはその事実を知った為に会社から命を狙われるがエスキモー達に助けられ、採掘所を止めに行こうとする。

スティーブン・セガールのアクション映画として見ればそこそこなんだけれど、自然環境保護という社会派の題材を中途半端に入れてしまった為にヘンテコで無茶苦茶な映画になってしまっている。

スティーブン・セガールの近年の映画と言うか、ビデオ映画を見てしまうと、ほとんど手をバタバタ動かすだけで動かず、細かく割った編集で誤魔化している省エネアクションのつまらなさと比べてしまうけれど、この映画ではまだスティーブン・セガールが良く動き、殴って蹴って投げてのアクションも派手で結構良い。石油の採掘と言う事もあり、やたらと爆発するので画面も派手だし。
しかし、話の主題でもある金の為に無茶苦茶する企業と環境保護という部分になると、アクションを見せる為に派手にしているので社会派の主題が付け足し感が出て来てしまって、アクションを入れ込む事によって逆効果しかにしかなっていないし、社会派な事を描きたいはずなのに毎度のスティーブン・セガールが無茶苦茶して解決しようとするのも逆効果だし、そんな無茶苦茶なスティーブン・セガールに「何じゃ、こいつは?」と付いて行けない。

スティーブン・セガールは初めは会社の為に働いているけれど、会社の不正に気付き、エスキモーによって神秘体験を経験して人が変わり、会社を壊滅させようとするけれど、その身の振り方がぶっ飛び過ぎ。元々お金の為に会社の悪事を見て見ぬ振りをしていた感じなんだけれど、会社の社長はやりたい放題していて部下は直ぐ銃を撃つ様な危なさがあるのに何で今までスティーブン・セガールは動かなかったのか?とか、そもそも何で正義感があるはずなスティーブン・セガールがこんな人殺しまでしている無茶苦茶な会社で働いているのか?とか全く描かれないので、見て行く内に疑問ばかり。
スティーブン・セガールの役も「過去の経歴が見つからないけれど、何か政府関係の特殊部隊だったらしい…」というスティーブン・セガール初期の映画でよくある人物設定とは言え、結局何者かさえも分からないままで、スティーブン・セガール製作・監督・主演となるとスティーブン・セガールが謎だけど強いという見ている方に説得力を与えないままでやり切ってしまう、自分自身好き放題のオナニー感が半端無い。
そんなスティーブン・セガールが会社に殺されそうになったの復讐に向かうのかと思いきや、エスキモーの所で不思議な体験をしたので採掘所をぶっ壊すという衝動が抑え切れなくなり、「銃は使いたくないけれど、現実を見ろ!」と言って、銃を撃ちまくって採掘所の人を殺しまくり、爆破させまくるという環境テロリストの中でも最も最悪な環境テロリストになってしまう。最後に、政府と繋がり、儲けの為だけに好き放題している大企業を糾弾する演説を延々とするのだけれど、その前段階で人を殺しまくり、施設を爆破させまくっていたら何の説得力もないじゃん。そんな演説をする前に、採掘所にFBIが来ていて、FBIもスティーブン・セガールが犯人だと分かっているのに何で逮捕もされていないのか不思議。仲間のおじいさんが命をかけてまで守った会社の悪事を暴くデータも、結局何処かの政府関係か報道関係に渡して悪事を暴いたのかも出て来ず、どうなったの?だし。

敵にしても、問題が起きたらとにかく爆破したり、暗殺したりで片付け様として問題が更に大きくなったり、採掘権の期限にまで間に合う様にもっと計画的に出来ないの?とか、始めから不良品を使わなければ問題にもならなかったのに…という間抜けな事ばかりで、よく会社を大きく出来たなと思えるアホな社長役をマイケル・ケインが演じている。マイケル・ケインって何でもするんだな。役の選ばなさが凄い。

この映画、毎度のスティーブン・セガールのアクション映画に自然環境とニューエイジを絡めてしまって中盤以降の方向性がぐっちゃりしてしまう。スティーブン・セガールの映画に社会派って必要?社会派を描きたいんだったら、とにかく殺しまくるアクションはいらんじゃないのとも思った映画。

☆☆★★★

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