沈黙の断崖

2015年11月04日 水曜日

フェリックス・エンリケス・アルカラ監督、スティーヴン・セガール製作・主演の1997年の映画「沈黙の断崖(Fire Down Below)」。

環境保護局の調査官ジャック・タガートの友人が調査中に事故死したが、上司達はその友人が調査していた有毒物質の不法投棄容疑の事件ではそれ以前にも死者が出ていた為、ジャック・タガートを送り調査と証拠収集を命じた。
ジャック・タガートは協力者の牧師の下で働き、町の人々に溶け込んで情報を引き出そうとするが、多くの人は口を閉ざし、一部の人はジャック・タガートに嫌がらせをしたり、直接的な暴力も受け始める。

映画「沈黙の要塞」に続き、多分この時期スティーヴン・セガールがはまっていただろう環境問題と企業倫理を題材にした映画。
ただ、この映画までも、これ以降もスティーヴン・セガールの映画って、やたらと敵を殺しまくる陰惨な内容が多いけれど、この映画は結構ほのぼのしていて何時ものスティーヴン・セガール映画とは雰囲気が違いスティーヴン・セガール映画としては結構良い。
中盤までは町の人々との交流で、どうやって権力によって支配されている町の人々の心を開いてもらうかや、スティーヴン・セガールが気に入ったある過去があって町の人々から疎外されている女性との交流と、スティーヴン・セガールでなければ全然人間ドラマ。敵も因縁付けて来るチンピラで、スティーヴン・セガールは普通の町の人だと思っているので殴るだけに済ましたり、脅しをかけて追い払ったり、スティーヴン・セガール映画を沢山見ているとこの映画の対応は非常に柔らかい。終盤でも何時ものスティーヴン・セガール映画なら敵が無防備でも速攻で殺してしまうのに、殺す必要もないと見逃すし。
しかし、終盤まではおもしろいけれど、結局何時ものスティーヴン・セガール映画のお決まりで、敵は問題がどうしようもなくなって来たら、「とにかく殺せ!」で無茶苦茶し始め、頭の悪さが出て来て荒くなる。
でも、何時ものスティーヴン・セガール映画なら敵を皆殺しにしてめでたしめでたしになる所が、敵は裁判にかけられ罰金刑だけで終わり。そこからスティーヴン・セガールの執念の捜査が始まり、最終的に殺人等で裁判にかける所まで持って行くので、これまたスティーヴン・セガール映画らしからぬ展開だし、ただのアクション映画にしていない結末で非常に良い。ただ終盤での強引さはあるけれど。

気になるのはスティーヴン・セガールの服装。毎度の革のジャケットなんだけど、今回は女優のファッションショー映画並みに場面毎に違うジャケットを着ている。町にやって来た時は手ぶらだと思ったけれど、町に売っているジャケット買い漁ったって事なんだろうか?にしても、何で毎回毎回違うジャケットに着替えて来るのか、映画内的にもスティーヴン・セガールの衣装的にもいまいち意味が分かんない。

ヒロイン役としてマーグ・ヘルゲンバーガーが出ているけれど、「CSI」の三年前の映画なのに「CSI」の時よりも老けて見える。「CSI」のキャサリン・ウィロウズがラスベガスのシングルマザーだからの役作りか、この映画の役が田舎の女性だからの役作りなんだろか。

この映画、スティーヴン・セガール映画と思って、「毎度のとにかく皆殺し何だろうなぁ…」と期待せずに見たら、スティーヴン・セガールの人殺しも少なく、そもそもアクションは少ないけれど、スティーヴン・セガール映画なのに人間ドラマで見せていて、その意外性もあるし内容的にも全然良い。今までスティーヴン・セガールの省エネアクションだけを見せ、話がグダグダな映画ばかり見てしまった事もあるだろうけれど、スティーヴン・セガール映画らしくない映画として、これはおもしろかった。

☆☆☆★★

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