HELIX -黒い遺伝子-

2015年04月12日 日曜日

Dlifeで放送が始まった「HELIX -黒い遺伝子-」を見てみた。
アメリカではSyfyで2014年の1月から始まって、最近シーズン2の最終話が放送された。

アメリカ疾病予防管理センターへ北極にある研究所から謎の感染症が発生し所員にも死亡者出たので軍を通して調査の依頼が来た。チームを率いるアラン・ファラガットは感染してまだ生き残っているのが弟だと知り北極に向かうが、感染者は骨を残して溶けてしまい、発症すると狂暴化し見境無く人を襲うという全く未知の感染症な上、研究所の所長は協力してくれるが何かの秘密を隠している様だった…。

閉鎖隔離された環境で、謎の物体、もしくは病気に感染して行くという映画「遊星からの物体X」的な設定で、「X-ファイル」でも似た様な設定の話があったけれど、そのアウトブレイク、バイオハザードSFスリラーを1シーズン13話の連続ドラマシリーズでしてみましたなドラマ。

このドラマがアメリカで放送開始するのを知って、「こういうSFスリラーをテレビドラマでするんだ…」とか、「また怪しい日本人役で真田広之が出るんだ…」と思っていたら、一年後にはDlifeで放送が始まって期待は大きかった。
見てみると中々おもしろく、B級SFアクション映画でこの設定だと登場人物が疑心暗鬼になって暴れるか、怪物から逃げ回るだけになるけれど、このドラマでは主人公達が医者や研究者なので何がどうなっているのかを徐々に調査分析して解明して対策を練って行くので、そこの部分はハードSF的で納得しながら見てられるしワクワク感はあった。
ただ、序盤からも感染者ベクターが黒い体液流しながら襲って来るとかは、ここ十年以上流行っているバイオハザードモノやゾンビモノを狙った感じがして、ちょっとやり過ぎな感じはするし、遺伝子工学や医療分野の地味な感じでやっているのに、急に狂暴化した人間が襲って来るという場面が入るとそこで安っぽくなるので、「別に感染したら凄い致死率だけでいいんじゃないの?」と思っていたのが、中盤で疫病や北極の施設を作った黒幕である大企業イラリアの刺客が次々と現れ、閉鎖隔離された北極の研究所なのに急に新登場人物がわんさか出だすというという舞台設定が徐々に崩れ始めた頃から話はドンドン悪い意味で雑多になり始め、最終話を見終わった時には「うわぁ…。クソドラマだった…。見て損した…。」と思える位の落ちっぷり。

何がって、始めは謎のウイルスの恐ろしさで話の軸を作っていたのに中盤から対イラリア話に徐々にすり替えられ、酷い時はウイルスに対する研究も中断してイラリア対策ばかりだし、そのウイルスも感染したら人間がドロドロに溶けてしまう恐ろしさだったのが、中盤から感染すると何故か皆が狂暴なベクターになってしまい、しかもそのベクター達は言葉も発さないのに皆が共通の意図を持って行動し始め、多分一番最初に感染したであろうアラン・ファラガットの弟ピーター・ファラガットがベクター達をまとめる指導者的な立場になったりとか、その場の思い付き的な安っぽいやり過ぎ感ばかりでドンドンしょうもなくなってしまった。
中盤以降になるとそれまでじっくり進めて来た話が急展開になり始め、しかもそれがどれも粗くて、撮影に間に合わないから書き走らせたのかと思える無茶な事が多くなってしまう。不老不死だの、世界支配だのと安っぽい漫画みたいな話になって来て、それを登場人物達が結構簡単に信じてしまい、始めのハードSF的な雰囲気がぶち壊し。中盤で人間を冷凍して仮死状態にするとか、音波を発射する武器とか急に出て来るわりに、それがその後に何か発展する事も無く、出て来る事もないままその場の使い捨てとか、その場しのぎの小細工感が半端無い。
あれ程前半で…と言うか、このドラマの根本であったウイルスも、終盤で「治療薬出来ました。打ちました。速攻で元の人間に戻りました。」という、引っ張りの意味の身も蓋も無い適当展開であっさり解決してしまい、その放り投げっぷりったらありゃしない。
毎回の頭に「DAY ~」と、どうやら一話が一日になっているんだけれど、見ているとどうにも一話が一日だと他の時間何してたの?と思える一日の薄さしかない。十三話で十三日なのだったら、このドラマ内で登場人物達が睡眠を取っている様子は無いし、食事場面もほとんど無いし、ベクター以上の超人的な肉体を持っている様にしか思えない主軸の話の詰め込みようだし、人物描写の少なさ。
終盤で、見た目は少年だけれど数百歳生きた殺し屋サイスという、わたしが大っ嫌いな、小寒いとしか思わない登場人物出して来て辟易して「ここで見るの止めようか?」と思った位。しかも最終回では折角これまで作り上げて来た登場人物達の在庫処理をこの人物で一発で行ってしまうと言う粗過ぎる結末。どうやら次シーズンではアナナとかも出て来ない様なので、この「シーズン1だけのつもりがシーズン2もする事になったので、契約していない役者の役は始末しておきますね!」感しかない脚本がやっぱり酷かった。

またこのドラマも今流行の本筋の裏に何か怪しい陰謀があって、それでシーズンを引っ張って行く展開で、研究所の本当の狙いや所長と軍の関係が大きな謎になっていて、ここも始めは結構ワクワクで見られるけれど、すでにアメリカでシーズン2が放送している事を知ってしまうと、「この謎、小出しにして来シーズンも引っ張る訳?」と思うと中盤辺りから謎の引っ張りがしんどくなってしまった。この謎で引っ張られるのって、引っ張れば引っ張る程話が散漫でグダグダになって行く「LOST」や「アンダー・ザ・ドーム」でうんざりしていて、段々と見続けるのが面倒臭くなってしまった。
それに、「シーズン1の中盤までで結構登場人物達が退場してしまうのにシーズン2は大丈夫なの?」とも心配していたけれど、シーズン2ではアラン・ファラガット、ジュリア・ウォーカーサラ・ジョーダンセルジオ・バリエセロス、ピーター・ファラガット位しか残っておらず、ハタケ・ヒロシさえも降板ってシーズン2グダグダじゃん。シーズン2は舞台も北極じゃあないようだし、無理矢理続編作っている感じは否めない。始めは「連続ドラマだからじっくり描いて、描き足りないからシーズン2もかぁ…。短い時間でしか描けない映画と違っておもしろいんじゃないの?」と思っていたけれど、こんな酷い展開なら二時間位で描き切る映画の方が全然良かった。

配役も変。
アラン・ファラガット役のビリー・キャンベルって、身長191cmもあってやたらデカいけれど、弟のピーター・ファラガット役のニール・ネイピアって身長が真田広之と同じ位の170cm前後なので、二人が並ぶと兄弟なのに物凄い身長の差ばかりが気になる。…と言うか、始めから顔が兄弟なのに全然似ていない。それに、ハタケ・ヒロシとジュリア・ウォーカーが親子と言うけれど、やっぱり全然似ていない。配役も見れば見る程適当な感じしかしない。
研究所の所長ハタケ・ヒロシ役で真田広之が出ているんだけれど、真田広之ってアメリカではこんな何かを隠している、怪しい日本人役ばかり。「LOST」での役もそうだったし、映画「サンシャイン 2057」でもそんな役だったし。特に今回の窓から雪景色しか見えない施設の所長なんて、「サンシャイン 2057」での太陽ばかりの景色の宇宙船の船長だったのと良く似ている。
役柄的に何時も苦虫を噛み潰した様な、言いたい事を飲み込んでいる様な演技ばかりなので、いまいち評価し難い感じ。妄想の中で楽しく食事して笑っている場面があるけれど、そんなもっと感情豊かに出ている役も見てみたい。
真田広之にしろ、渡辺謙にしろ、怪しい謎の日本人役が多いのって、結局英語が微妙だからなんだろうなぁ。わたしはテレビドラマは日本語吹き替えでしか見ず、真田広之の吹き替えは自身でしているので当たり前にしっくりするし、安心して見れるんだけれど、原語の英語で聞くと真田広之の英語が微妙なので演技が吹き替えの時よりも下手に見えてしまう。謎の日本人役なら「そんなモノかなぁ…?」とは納得するけれど、アメリカ人と言われるとやっぱり違和感しかないだろうし。
7話で急にコンスタンス・サットン役でジェリー・ライアンが登場するのだけれど、始め「どっかで見た事あるな…?」と思っていたら、やっぱり「スタートレック:ヴォイジャー」のセブン・オブ・ナインか。もうセブン・オブ・ナインが15年から20年近く前とは言え、髪の毛を下しているとは言え、久々に見たとは言え、老けていて暫く分からなかった。ちょっとマージ・ヘルゲンバーガーっぽく見えたし。それにセブン・オブ・ナインって、クリンゴンやヒロージェン並みに大きかった印象があるけれど、このドラマでジェリー・ライアンを見ると真田広之とほぼ同じ背丈という事は170cm位なのか。そこも意外だった。確かセブン・オブ・ナインの時って、高いヒールの靴を履いていたんだったっけ?
あと、ジェリー・ライアンは2話しか出て来なかったのは何でだろ?急に出て来て、急に退場って、物凄く微妙な役だった。製作総指揮でロナルド・D・ムーアが入っているけれど、その関係という事は無いだろうし。
 
 
このドラマ、北極の閉ざされた環境でバイオハードが起こって感染者が暴れ始めるという展開で、始めはB級SFアクション映画の題材を長編SFスリラー小説かハードSF的にきっちりと連続ドラマにして徐々に見せて行ったのは見応えがあって中々良かったのに、中盤からのイラリアとの対決によってウイルスはお座なりにされ、ドンドン展開は雑で外しまくる様になり、登場人物の使い捨てや設定の使い捨ても起こって、終盤で見る気が失せてしまった。こんな展開で終わって、全然シーズン1とは違うシーズン2をするのだから、シーズン2は見る気無し。

どうやらアメリカでもわたしと同じだった人が多いらしく、視聴者数で見るとシーズン1の始まりは180万人位と、多分Syfyではそこそこな数を稼いでいたにも関わらず、早くも三話目から150万人を超える事は無いまま130万人前後を推移し、シーズン2になると一話目から100万人に落ち込み、四話以降は50万人前後にまで落ちてしまった様だ。上から下まで四分の一まで落ち込むって、シーズン2ってシーズン1以上に酷いって事か。シーズン1で打ち切りでよかったんじゃない。
 
 
関連:前期のドラマは「NIKITA 3」

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