嵐を呼ぶ男

2014年12月17日 水曜日

井上梅次原作・監督、石原裕次郎主演の1957年の映画「嵐を呼ぶ男」。

人気が出て来た為に余所へ移ってしまったナイトクラブのバンドのドラマーの替わりに引き抜かれた若者国分正一。周りの応援もあって人気ドラマーとなるが、恋愛が絡んで来て色々揉める。

始めはナイトクラブ経営の話で、人気が出て調子乗って引き抜かれたり、スターを作り出す攻防とか、そこに愛憎の人間関係が絡んで結構おもしろいけれど、石原裕次郎の部分になると思いっ切りベタ過ぎる青春映画になって途端に覚めてしまう。まあ、当時の若者向けアイドル映画と思えば、そうりゃそうな展開なんだろうけれど。
展開としてよく分からないのは北原三枝の行動。何で演奏も聞いた事も無い石原裕次郎を見初めたのかとか、行き成り石原裕次郎を好きだと言う理由とか、見ていてもよく分からないままで、完全に石原裕次郎演じる主人公の為の都合の良い駒でしかないのがどうにも…。
あと、前半はポンポンと良い調子で進んで行くけれど、後半に行くと間延びし始め、結構退屈。最後も「えっ、これで終り?」な急な感じだし。
それに、音楽業界を描いているのに、その音楽業界が数人の知り合いの中で恋愛の利害関係も含んで回しているだけなのにスターになったりって、これって当時の音楽業界への皮肉なのだろうか?
音楽で言えば、ジャズ部分はそんなモノかな?な感じで聞けるけれど、他の部分は当時の日本の音楽なので、「んっ?」とつまずく所が一杯。始めのジャズ・クラブで歌っている歌手からして意味不明。リーゼント頭にギター抱えた人で曲調も歌い方もロカビリーなのに「♪おいらはジャズ小僧~」って、始めから「んっ?」ってなる。所でこの歌「銀座は生きている」っていうらしいけれど、歌っているのは平尾昌晃なのか。
それに、ジャズ演奏合間に突然露出の多い衣装の女性が音楽に合わせて踊るのって一体何?小林旭渡り鳥シリーズでも、毎回必ず同じ様な女性の踊る場面があったけれど、この当時はこういう所では普通にあったって事なのか?別に笑かしにかかっている訳ではないよね?
一番の見せ場だろう石原裕次郎が歌う「嵐を呼ぶ男」って、その歌う場面だけ何かで良く見た事があるけれど、この映画見たら、敵のドラマーとのドラム合戦でドラムのアドリブ叩きを交互にしている所、怪我した手をかばう為に歌い始めるという流れで、ドラム合戦だったのに急に歌謡曲を歌い出して、余りのダサさに笑ってしまった。今でもジャズ風の曲を演奏している途中で行き成りドラマーが「♪おいらはドラマ~」って歌い出したら、コントでしかないし。

その石原裕次郎は、石原裕次郎の初期の映画では必ずこの映画の場面が流されるけれど、何でこの映画で石原裕次郎がスターになったのか今見るとよく分からない。演技は下手だし、田舎の金持ちのボンボン的な垢抜けなさでカッコ良いとは思えないし、場面や角度によっては不細工にしか見えない時もあるし。今、「小栗旬ってイケメン!」と言われると「う~ん…。そうなのね…。」と思ってしまう感じに似ているかも。
岡田眞澄が出演しているけれど、あの顔と身長だと一人だけ物凄い浮いている。始めの方で北原三枝と仲良く話していて「何かな?」と思っていたら、後々北原三枝と岡田眞澄が兄弟役だったという事を知り驚いた。全然似てないじゃん。腹違いの兄弟とかなのか?それに、石原裕次郎の弟役の青山恭二も似てなくやっぱり兄弟に見えない。

「東京には新しい物が出来ている」という説明台詞で始まるけれど、全てが古過ぎて逆に目新しいという、今の人間からすると何だか訳の分からない事になっている。その時代性がおもしろくもあり、笑ってしまう所でもあり、やっぱり時代の違いって、今見ると当時の演出意図とは別のモノになってしまう。ジャズ・クラブの女性オーナーやマネージャーがバッカバカ煙草を吸っているけれど、今だと完全に悪役の分かりやすい記号だし。

この映画、石原裕次郎の代表作という部分で見たけれど、別におもしろくはなかった。始めはおもしろかったクラブ経営と音楽業界の話は後半に行くと減ってしまい、そもそもの映画全体の勢いが尻すぼんでしまい、結局おもしろくなかったという印象で終わってしまう。石原裕次郎は演技も見た目も全然惹かれるモノが無いし、「♪おいらはドラマ~」はカッコ悪いしで、色んなおもしろくなる要素はあるのに、やっぱり当時のアイドル映画なのかぁ…という認識で収まった。

☆☆★★★

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