新幹線大爆破

2014年12月16日 火曜日

佐藤純弥監督・脚本、高倉健主演の1975年の映画「新幹線大爆破」。

新幹線に爆弾を仕掛けたと言う電話が入る。新幹線が80km以下になると爆発すると言う為、新幹線は走り続ける。

新幹線に乗っている人々、国鉄と警察、犯人一味とをそれぞれ描く構成で、群集劇と言えばそうだけれど、この人のこの行動を見せて行くという訳でもないので大分と散漫な印象。新幹線が爆発するかもなサスペンスにしては、駅を次々と越して終着駅まで時間が無い…という場面がほとんど無くて緊張感も無いし、犯人を追う警察は犯人の行動に対応して後追いしている位なので、徐々に証拠を見つけ出し追い詰めている訳でもないので緊迫感は無いし、結局どの話も中途半端な出来な上、話が分散するので終始盛り上がらないまま。
始めは新幹線を運転する人々と管制の人達による今起きている危機の回避が主軸だったのに、中盤になると犯人を追う警察が主役になり、その後は犯人達の事情ばかりが描かれる様になって話は分断され、しかも人々の行動や反応を地味に描くだけで興味を引く様な出来事も無いので終始退屈。
結局は脚本が駄目なんだろうなぁ…。始まりからして非常に説明臭い。何かしら計画を立てている健さん一味。新幹線に乗って来る人々。新幹線の仕組みをわざわざナレーションまで入れてキッチリ説明し、回想場面は音楽で始まりと終わりを示す。「観客に一から十まできちんと説明しないと分からないだろう?馬鹿だから…」ってのは最近に始まった事ではなく、日本の映像業界の伝統なのか…。流石に、机にネームプレートを置いてまでその人の役職を説明しなくちゃならない演出には吹いてしまった。その後の身代金の受け渡し場所は山の中なのに、何でかそこにどっかの柔道部員達が現れて金の受け渡し失敗とか、唐突な都合の良さはもうコントみたい。この柔道部員を出すのって本気のサスペンスでやってるのかしら?
健さんが金の受け渡しに失敗して二回目の受け渡しの為一人で高速道路に色んな物を用意していあるけれど、これが受け渡しを失敗した時の為の初めから第二案が用意してあったのか、それとも緊急に用意したのか分からないし、それだけ上手い事出来るなら初めからそうしておけよ…と。もう、二回目の健さん一人で成功しているから、仲間なんて全く必要ないじゃん…。
爆弾の解除法を記した書類を受け渡す店が都合良く火事になるとか、もうクソの様な展開。そもそも健さんが、「誰も殺さない完全犯罪」と言ってたのだから、別に新幹線に爆弾を仕掛けてなくもよくない?すでに脅しの爆破で皆が爆弾が仕掛けてあると信じているのだから、むしろ仕掛けてない方が犯人側の意図としてあってるだろ。
構成もよくなく、上映時間二時間半以上あるのにどうでもいい話が多くて、間延びもしまくり。有名俳優出す為の犯人の家族の登場とか、流産する上客とかいらんじゃん。始めに新幹線に乗って来る人々を描いた割りに、それらの人が後でほとんど効果を発揮せず、完全な振り忘れ。有名俳優を多く出す為に登場人物が無駄に多くなって散漫になっているのも、オールスター映画と言ってもしょっぱいだけ。

時代が時代なので全くピンと来ない部分も。脅迫として500万ドル要求して来るけれど、当時の日本では15億円で、この15億円が今の金銭感覚で幾ら位なのかがさっぱり分からない。
新幹線が止まらないと知ると暴動の様に文句を言って暴れ出す上客って、昔の人ってこんなに下品だったのか、単にパニック映画の記号としての群集なのかも分からない。

出ている役者陣が皆若い。もう今だとおじいさんの人が多いけれど、高倉健と宇津井健ってあんまり変わらない感じ。でも、高倉健と宇津井健はこの当時44歳。千葉真一36歳って、皆老け過ぎ。途中の台詞で「50歳以上の老人を除けば~」って出て来るけれど、50歳以上で老人という感覚なら40代は相当な老年だけれど、今と感覚が違い過ぎ。

この映画、当時のアメリカの流行だったオールスター・パニック映画を日本独自でしようという事だったのだろうけれど、設定は良いのに脚本が駄目なので話は散漫、展開はご都合主義で、まあ退屈。初めは結構おもしろい展開だった分、中盤の早い段階でグダグダし始めて、もう集中力は欠きっぱなしのまま。結局新幹線が止まれないパニックを描くのか、警察と犯人の攻防を描くのか、犯罪の理由を描くのかを絞り切れず、しかもどれもしょうもないのでこの出来か…。この映画の監督・脚本の佐藤純弥って、あの伝説と化した「北京原人 Who are you?」の監督の人なのか…。

☆☆★★★

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