SHERLOCK シリーズ2

2012年08月26日 日曜日

良い所で中途半端に思いっ切りぶった切りのクリフハンガーで終わった第1シリーズに続き、第2シリーズ
本国イギリスでは一年半後の第二シリーズらしく、視聴者はヤキモキしたままだったのだろう。このBBCの放送形態は変わってる。この「SHERLOCK」自体、一時間半を三本で1シリーズで、今回の第2シリーズも同じ放送形態。

第1シリーズからの結末はあっさりし過ぎる程さらっと描き、第2シリーズを始めてしまう。それ以外でも詳しく描かれない細かい事件は原作小説のパロディになっていたり、シャーロックがこれまでのシャーロック・ホームズらしい鹿撃ち帽(ディアストーカー)をたまたま被ったりとか、シャーロック・ホームズ好きや原作を読んでいないと分からないネタで放り出している所もあり、また、こんな事件を解決しましたと、その事件の内容が少し分かる位のほんの少しだけの見せ方を惜しげも無く散りばめたりする不親切さも、楽しさだろうし、製作陣の自信なんだろうな。

前シリーズでは冷静過ぎで完全無欠の分析機械だったシャーロックだけれども、第2シリーズでは人間的な部分を大きく取り上げて見せている。シャーロックは落ち込むし、珍しく人に対する怒りも見せるし、恋にも落ちてロマンスも見せるし、ついには「ありがとう」と言い、泣きもする。二話目では、怖がって半泣きになり、「巨大な犬!怖い!」と震えるシャーロックを可愛く描いていたりも。急にシャーロックが人間臭くなって「どうなの?」と思いつつ、シャーロックに幅が出て来た。ただ、事件が無いとイライラしまくり、事件を欲しているシャーロックって、ここ30年位のバットマンみたいに、ヒーローと犯罪者はギリギリの線の似た者同士というのと似ている。そこの危なさも、実は話の振りとして機能している上手さがある。
また、今回二人共結構笑かしにかかるし、シャーロックも意外と良く笑う。ニヤリはもちろん、ケラケラ笑うシャーロックって、逆に気持ち悪いかも。
それに、毎度のジョンいじりのネタも。シャーロックにしろマイクロフトにしろ背が高いので、彼だけ背が低いのをいじったり、ジョン本人がやたらと否定する分だけ逆に目立つ同性愛者ネタとかも良く出て来る。

見せ方的には引き続き携帯電話を主軸にハイテクで捜査もするし、更に現場検証はパソコンのカメラを使いインターネットでしたりも。現代的ギミックを見せつつ、シャーロックとジョンのやり取りは遠隔漫才。
今回はシャーロックの脳内地図を映像的に見せ、関連する言葉や映像を彼の眼前に出し、それを早い速度で次々と流して行く。ただ、手を使い映像を移動させるのは、映画「マイノリティ・リポート」の映像操作に影響受けまくりで、やり過ぎの感もあるけれど、やっぱり映像的な印象は強いし、楽しい。

あと、今回はこれまで無かった田舎での捜査があり、田舎に行くと昔ながらのシャーロック・ホームズ的な雰囲気。その分第二話だけが少し浮いた感じはあったけど。
また、その第二話では軍施設に騙して忍び込み、スパイ映画的、スパイ映画以上の緊張感とワクワク感を見せる演出だったり、結構色々実験的に作っている。映像の構図や編集の切り替え、映像的仕掛けも毎度非常に上手く、話だけでなく、映像的にも興奮させ、飽きさせず、一時間半を一気に見せる。
ただ、いつもの二人の部屋で、思いっ切り鏡にカメラマンとカメアシとマイクロフォンが映っていたので、急に現実に引き戻された。そこはきっちりしてくれと。

シャーロック役のベネディクト・”ティモシー・カールトン”・カンバーバッチは、第1シリーズでは「シャーロック・ホームズか…。」と思っていたけれど、”シャーロック”と言う新たな人物としては非常に良い。この偏屈・尊大・他人を見下し、犯罪を喜ぶけれどヒーローという人物像にぴったり。
ジョン・ワトソン役のマーティン・フリーマンは、劇中でやたらとゲイネタをするので、段々ととぼけた、愛嬌のあるおっさんになり、可愛らしさも担当してるのかと笑えてしまう。
マイクロフト役のマーク・ゲイティスって、「ドクター・フー」の脚本も書いていて、この「SHERLOCK」でも第1シリーズの「大いなるゲーム」と第2シリーズの「バスカヴィルの犬」脚本を書いている。見た目はもっちゃりしているけれど、多彩。

それと気になるのは吹き替え。実際の俳優と大分声質が違う。シャーロックはもっと野太い声だし、レストレードはもっと落ち着いたしっかりした感じだし、モリアーティも吹き替えがいまいちもっちゃりしてるし。でもしかし、元の声を知らなければ吹き替え版は人物がはっきり出ていて、これはこれで非常に良いのだけれど。

流石に畳み掛ける様な会話劇、と言うかシャーロックの説明は、毎度の驚きと楽しさと爽快さで非常に心地良い。
各話の謎の散りばめ方、振り方、そこからの二転三転の展開と、収束は毎度見事。ミステリーとサスペンスのおもしろさに加え、笑かしのコメディ要素もちゃんとある。シャーロックとジョン自体がボケ・ツッコミの漫才コンビだし。この二人は回を重ねずとも非常に良い関係だし、回を重ねれば各人がより見えて来て良いのだけれど、惜しむらくは彼らのライバルのモリアーティの人物像。調子乗ったサイコパスといった目新しくも無い、近年良くある分かり易過ぎる悪役で、シャーロックとジョンが跳ねまくって活き活きしているのに、モリアーティがいまいち過ぎる。中高生向けのドラマや漫画の悪役で、この手の悪役ばかりでいい加減うんざりしていたのに、折角上出来なこのドラマでモリアーティがこれとはなぁ。それにモリアーティが出て来ると、推理モノから急にヒーローモノになってしまうのも何だかなぁ。

すでにBBCは第3シリーズの予定は組んでいる様で、まああの終わりのままではいられないだろうなぁ。この第2シリーズで、第一部完結っぽく、次から新章に移る感じなので、次なる、更に新たなる「SHERLOCK」が楽しみ。
BBCは本当に良いドラマ、上手いドラマを作るなぁ。もっと日本でもBBCのドラマをして欲しい。

☆☆☆☆★
 
 
関連:SHERLOCK シーズン1
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