SHERLOCK

2011年09月06日 火曜日

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズを基に、現代のロンドンに舞台設定を変えた、BBSのドラマ「SHERLOCK」を見た。

1時間半の三話のミニシリーズ。
設定やガジェットは現代の物だけれど話は推理モノだし、。途中にはコメディー的な部分もあり、1時間30分を一気に魅せてくれる。
ただ、やっぱり気になるのはシャーロック・ホームズ演じるベネディクト・カンバーバッチ。本名はベネディクト・ティモシー・カールトン・カンバーバッチで役者だった父親の名前ティモシー・カールトンが入っているうえにCumberbatchと言う何だか凄い名前は置いといて、今回のシャーロックは今までのシャーロックよりも自己中心的で、協力を求めてくる警察も含め周りの人から煙たがれる、嫌われる社会不適合者という、近年よく描かれる典型的な天才型のキャラクターで、そこはコメディー要素もあって良いのだけれど、何だか私が思うシャーロック・ホームズよりも随分若い気がした。ジェレミー・ブレットの印象が強すぎるのだろうけれど、原作小説だとワトソンと同居し始めたのは20代後半だし、ベネディクト・カンバーバッチはこの時点で34歳とそれなりに歳は取っているのだけれど、それでも若い変な兄ちゃんというのが何かしっくり来ず。
ワトソン役のマーティン・フリーマンはなかなか良い。ホームズに振り回され呆れながらも、彼にはまって行く様が良く出ている。ただ、変人で退屈しのぎに殺人事件を期待する危険なシャーロックの側でコメディリリーフ的な役を見せてはいるが、お金に関しては結構しっかり稼ごうとしていたり、意外に平気に人を殺したりと、実はシャーロック以上に要注意人物だったりするワトソンの人物像が多面的でおもしろく、視聴者的にワトソン目線でも役が立っている。
マーティン・フリーマンのワトソンは、セーターにジャンパーや髪型とかでちょっとスティーブ・マックイーンの雰囲気を感じてしまった。
ワトソンのゲイネタや、食事を始めると出ていかなくてはならないというネタは好き。

吹き替え版で見たけれど、本当の声で見てみると結構人物の雰囲気が違う。シャーロックはもっと野太い鼻にかかった声で、実際のベネディクト・カンバーバッチの方が重く、不気味な感じがする。ワトソンのマーティン・フリーマンは顔通りのおっさんの感じ。吹き替え版ではシャーロックが高揚して、ワトソンが落ち着いている感じだけれど、オリジナルでは逆の、野太い声のシャーロックが落ち着いて、ワトソンが戸惑っている感じ。
それに当然原語と吹き替えではドラマの雰囲気自体も違う。元はそんなに声を張らず、近くでボソッと二人で会話している感じ。
それにイギリス英語だからか、張らない喋りだからか、結構聞き取り難かったりも。一話で呼び出した犯人を見張る為に食堂に入った時ワトソンが「恋人じゃない」と言うが、言語では「I’m not his ダイト.」と言っていて「『ダイト』って恋人を表す英語なんてあったけ?何ぞや?」と思っていたら、イギリス英語、特にロンドン周辺特有の「アイをエイと発音する」のか。だから「I’m not his date.」で、「デートじゃない」か。

携帯電話等の表示を画面の中に文字で表示するのは、一話では文字出したのに改めて口頭で説明し直したりといまいち上手く出来ていなくうっとしいだけだったけれど、話数が進むにつれて効果的に使って行って良くなって行っていた。
ロンドンの乗り物と来ればメトロか二階建てバスかブラック・キャブだけど、まさしくシャーロックとワトソンの移動はブラック・キャブ(黒タクシー)。知らなかったがそのブラック・キャブの後部座席は馬車の様に向かい合わせの座席になっていて、原作の馬車での移動を呼び起こさせる。その移動時はタクシー内のミラー越しの画だったり、窓ガラスに映るロンドンの町並みが映し出され、移動場面も印象的。ロンドンの街の造りを上手い事使った追跡もあったり。
印象的なのは場面の繋ぎもで、人物や背景の空いた構図に次の場面の一部が入り込んで来たり、笑いを起こす様な短くさっとした繋ぎとか、編集も上手い。
後、出会った人間の生い立ちや今までの行動を言い当てるというホームズお馴染みの特殊技能は、もちろんホームズの観察力と洞察力と知識の素晴らしさを表現出来るのと、人物の背景や行動を台詞で自然に表現出来るという点で、ドラマでも有効だし、小説でも使え、ドイルはこの天才と説明という後世に大きな影響を及ぼした二人の人物像もそうだけど、素晴らしい手法を編み出したんだなぁと非常に感心。

話は良く出来ているんだけれど、結構ほったらかしで終わり「あれはどうなったの?」という事も。三話の最後なんてクリフハンガーで「結末見せろや!!」で消化不良。イギリスのTVドラマはこれみたいに三話とか、はたまた六話とか、十話以上とか、一年休んで続編とか、放送形態が定まっているのか良く分からないけれど、この「SHERLOCK」も結末分からないまま一年休止で2012年にまた三話放送予定だそうだ。BBCは動きがゆっくりなのか、このドラマもそうだけどしっかりと作るためなのか、とにかく続きは見てみたい。

☆☆☆★★
 
 
関連:SHERLOCK シリーズ2
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