SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁

2017年07月31日 月曜日

本国イギリスBBCでは2016年1月1日に特別編テレビドラマとして放送され、日本では2016年2月から劇場公開された「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁(SHERLOCK The Abominable Bride)」。
話は「SHERLOCK」のシーズン3の後。シーズン4の前。

1895年のクリスマス。シャーロックとワトソンの元にレストレード警部がエミリア・リコレッティ夫人の奇妙な事件を持って来る。エミリア・リコレッティ夫人は自殺したのだが、その後に夫の前に現れて夫を射殺したという話だった。
興味を示したシャーロックは早速出かけたがはっきりとは事件は解決しないままマイクロフトにある人の依頼を受けて欲しいと頼まれる。
それはレディ・カーマイケルが依頼して来た夫のサー・ユースタスの前に死んだはずのエミリア・リコレッティが現れ、今夜殺されるのを阻止して欲しいというモノだった。

テレビドラマ「SHERLOCK」って、連続テレビドラマなのにやたらと新シーズンの製作が遅く、この「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」も2014年のシーズン3から二年経っての、しかもシリーズ本編ではなく特別編という形での放送。
わたしはシーズン4が開始されると知ったので、録画しておいたまま見ていなかったこの「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」を見る事にしたけれど、「SHERLOCK」って常にシーズン最終話はクリフハンガーなのに二年後にしか放送しないので、それまでの話を全く忘れてしまっている。
正直、新シーズンを全然放送しないので見るのが面倒臭くなってしまっていた。

ただ、見たらやっぱりおもしろい。
シャーロックとワトソンの掛け合いは毎度抜群におもしろいし、脇役まで立ちまくりだし、推理モノとしてもおもしろいし、映像的にも非常に凝った編集や効果を見せて、テレビドラマとしては非常に楽しい。

しかし、何で原作小説に近い時代でしたんだろう?という疑問がある。
「SHERLOCK」って、シャーロック・ホームズを現代に持って来た事が特徴だったのに、それをやっぱり元に戻したら元のシャーロック・ホームズになってしまい、「SHERLOCK」があるからこのヴィクトリア朝時代は目新しくは見えるけれど、元の「SHERLOCK」の良さを減らしている訳だし。
それに、始めは「特別編だから、こういうお遊びかぁ」と思っていたら、これは全てシャーロックの頭の中で、しかもこの事件は本当に昔にあった事件だったけれど、結局有耶無耶で終わる部分が多く、「これやる意味あった?」と感じてしまった。

それにやっぱりモリアーティが出て来ると途端につまんなくなる。
「SHERLOCK」で新たなシャーロックとワトソンを見せたのに、「SHERLOCK」のモリアーティはここ20~30年で使い古された、擦られまくった、常に上からの優位な立場で偉そうに語るサイコパスでしかなく、この安っぽい「こいつは凄いんだぞ!」と典型化された犯罪者は飽き飽きする。
そう言えば、全く覚えていなかったけれど、モリアーティの吹き替えって村治学だったんだっけ。シーズン1からそうだったけれど全然印象が無かった。今だと、テレビドラマ「エージェント・オブ・シールド」のフィル・コールソンの吹き替えの方がお馴染みになってしまい、「SHERLOCK」でのモリアーティの声が物凄い違和感。顔と全然合っていない気がしてしまった。

この話の内容的には完全にシーズン4への繋ぎで、謎も結構有耶無耶な部分が多くて微妙っちゃあ微妙だけれど、シーズンを重ねる毎に顕著となっているシャーロックのワトソン好きが増し増して行き、最早友情を越えた愛情みたいな感じで笑ってしまうし、原作のシャーロック・ホームズをあんまり知らないわたしでも知っているライヘンバッハの滝での事件を違った角度で、しかもシャーロックのワトソン愛満載でやってみたりと、やっぱりこの二人の関係がおもしろい。

あと、笑ったのはディオゲネス・クラブでの流れ。
受付での手話でのやり取りで、ワトソンの手話が間違っていて全然話が通じないって、ハンガリー人向けの英会話本が無茶苦茶で卑猥な事や意味の通じない会話になるというモンティ・パイソンの「危険なポケット英会話ブック」を思い出していたら、その次の場面でマイクロフトが無茶苦茶太っていて、これもモンティ・パイソンの映画「人生狂騒曲」に出て来たデブのクレオソートを思い出してしまった。
ここの流れと笑いは同じBBCで放送していた「空飛ぶモンティ・パイソン」仕立てで、ちょっと感動もしてしまった。

あと、話の中に女性参政権の話も出て来るけれど、これの扱いがカルト的、暴力的で、何でこんな風にしてしまったのだろう?と思ったら、これはイギリスでも批判されたみたい。

BBCのドラマって「ドクター・フー」とかも、クリスマス時期にスペシャル作っているけれど、それだったら普通に新シーズンやってよ…と思ってしまうのだけれど。

貶すべきはこれを日本で劇場公開した事。
どうやら劇場公開時にはテレビドラマの特別編としての宣伝はしてなかった様で、内容的にも中盤辺りまでは前知識無くても分かるけれど、突然現代の飛行機のシャーロックになると意味不明だと思う。これまでの「SHERLOCK」を見ていないと本当に意味不明。
「SHERLOCK」が人気なんで劇場公開して金稼ごう!の意図しか見えない酷い劇場公開で、まあ日本の映画興行界の落ち込みっぷりを象徴する様。

この特別編、シリーズの繋ぎとしては内容的にはどうでもいいっちゃあいい話で、ほんとにお遊び回の趣向が強い。
なので、シーズン4を続けて見てみる事にした。
 
 
関連:SHERLOCK シーズン1
   SHERLOCK シリーズ2
   SHERLOCK シーズン3
   SHERLOCK シーズン4

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