ホームランド

2014年01月06日 月曜日

2011年からCBS傘下のショウタイムで放送が始まった連続TVドラマ「ホームランドHOMELAND)」。日本ではDlifeで字幕版が放送されており、ゴールデングローブ受賞だのエミー賞受賞だのと宣伝していて見てみたかったけれど、どうしても連続TVドラマは吹き替えがいいので、吹き替え版の放送開始を待って見てみた。

アメリカのイラク侵略の作戦中に発見されたのは、八年前に行方不明になっていた海兵隊の軍曹ニコラス・ブロディだった。CIAの職員キャリー・マティソンは、イラクで処刑待ちのテロリストから得た「裏切ったアメリカ兵捕虜がいる」という情報から、彼がその裏切り者ではないかと調査を始める。

映画なら二時間前後の尺に収めなくてはならないので、あっさり物事が分かって行くサスペンスになる所だろうけれど、連続ドラマだけあって非常にじっくり描き、小説を読んでいる感じ。ただ、主人公のキャリーが正体を隠す本当のニコラスに迫って行くサスペンスかと思ったら、序盤はニコラスが帰国して家に戻っても家族とは微妙な関係になっている話が中心で、それをキャリーが監視しているというのが延々描かれ退屈。その他の人物の話も振りばかりで、本題の寝返ったスパイなのかどうなのかの話が全然進まず、その本来は掴みのはずのシーズン前半は殆ど何も目立った事が起きず、つまらな過ぎる。対テロ捜査の話にしては展開がゆっくり過ぎて緊張感が無いのでブロディ一家の話が邪魔に思えてしまうし、逆にブロディ一家の話なら捜査の話が邪魔。要はどちらの話も上手く噛み合わずにダラダラ話数が進んでしまっている。家庭内の話は初めはおもしろかったけれど、徐々に何も起こらない展開に飽きて来始め、ニコラスが裸の奥さんを見ながら一人で始めた時は、もうどうしろと…。1シーズン12話しかないのに、話がおもしろくなり始めるのが6・7話辺りからという、非常に遅まきな展開。それに展開自体も、始めは「あいつが裏切り者に違いない!」という所から始まり、その後怪しい所は無く進んで行くとなれば、その後の展開で「やっぱり無実の疑いでした」とはならない事は分かり切った事なので、先は分かってしまうし。
その割に、ブロディは黙ってばかりで感情が見て取れないので家族に対する想いが分かり難いのも微妙な所。延々と何を思っているか分からない人物を見せられ、最後の最後でやっぱり家族思い…って、シーズン通しての演出が微妙。しかも、ブロディは初めは深い傷を負った哀しい人物だったのが、話が進むにつれ、単なる自分勝手なクソ野郎でしかなくなり、序盤のキャリーとブロディ両方に気持ちが入りながら、半信半疑のどっち?で引っ張っていたのが、完全にキャリーの勧善懲悪モノになってしまうのも微妙な構成。
「人気があれば、引っ張って新シーズン制作」というアメリカのTVドラマの良くも悪くもある所がこのドラマで出ていて、結局何も解決する事無くシーズン1が終了。長い間引きの無い話で引っ張ったのに、更に次シーズンへと引っ張り、何かシーズン2見る気失せる。ただ、アメリカではシーズン重ねる毎に視聴者数は増えている様だけれど。

微妙なのはオープニング・クレジットも。最近のテレビドラマだとオープニング・クレジットは大体30秒位で、15秒位の短いモノもある中、このドラマは1分15秒以上もある。オープニング・クレジットは過去のニュース映像等を使っているのだけれど、吹き替え版だとそこまできっちり吹き替えてあり、それが何か安っぽくなってしまっている。長さといい、吹き替えといい微妙。アメリカのテレビドラマのオープニング・クレジットは内容をキッチリと示しているけれど、このドラマも「やりたい事をとにかく入れ込んでしまい、無駄にダラダラしている」という意味でも、そう。

主人公キャリーは、アメリカの女性が主人公のドラマでは典型的な、これと思い込んだら周りを巻き込んで突っ走る人物。上手いのは、その典型的人物を更に一歩進め、彼女が気分障害という病気を持っており薬を飲んでいるという人物にして、彼女の考えは単なる行き過ぎた妄想ではないのか?という、どちらが正しいのか、正しくないのかとボヤケさせる為の要素にもしている事。後半でその病気が爆発してしまうのは、他の犯罪捜査モノとは一味違いおもしろい所ではある。演じるクレア・デインズの不安定感は非常に良く、物凄くはまっている。
キャリーを助ける上司ソール・ベレンソンは、「クリミナル・マインド FBI行動分析課」のジェイソン・ギデオン役のマンディ・パティンキン。なのに、吹き替えは「クリミナル・マインド」のギデオンの後任デヴィッド・ロッシ役の小川真司。「クリミナル・マインド」見ている人からするとどうなんだろうな?

あと、意味が分からないのが、放送しているDlifeでは題名部分には「完全ノーカット版」と入れているのに、ドラマの初めには「極力オリジナルに近い内容で放送いたします。」と字幕が入っている事。結局完全無編集なのか、それとも日本独自に編集が入っているのか不明。サイトにも何も載せていないので、どちらが正しいのやら?
始めは「おっ!」と思ったけれど、最近感じ始めて来たDlifeの微妙さが出ているな。

「ホームランド」は前評判としてエミー賞だの、ゴールデン・グローブ賞だので各部門で受賞と、やたらと評判が高かったけれど、実際見てみると間延びしまくるので退屈。始めの三話位で「つまんない!」と思ってしまい、後半でやっとおもしろくなるので、これはシーズンを通しての構成の下手さ。序盤五・六話耐えないとおもしろくならないのはキツ過ぎる。全12話なのに、それでも長い位。
Dlifeは続けて第2シーズンを放送してくれなくて良かった。続けて放送だと、全然乗り気じゃあないのに義務感で見てしまうから。

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