次郎長富士

2013年11月09日 土曜日

森一生監督、長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎共演の1959年の時代劇映画「次郎長富士」。

子分の殺害に関して商売敵の親分黒駒へ手下の身柄の引き渡しを求める清水次郎長。次郎長組と黒駒組の対立になり、組同士の大きな抗争になる。そこに次郎長の子分清水二十八人衆達の話や、関係のある親分の話を盛り込みながら、要は名を成して来た清水次郎長軍団が更に勢力を広げる話。

浪曲で聴く次郎長物語はおもしろいのに、映画にしてしまうと単なるヤクザ、犯罪者の殺し合い以上のモノが無くておもしろくない。
要は切った張ったの世界で、博打の縄張り争いの中で新参者の次郎長が古参の親分にケンカ売って皆殺しにするだけだからなぁ。途中で、子分達が暴走して農民の家を燃やしてしまうのだけど、その後の次郎長と子分のやり取りが「親分に怒られたくないので仲間内で譲り合い」というコメディにしているのが、ヤクザ者の勝手さばかりで付いて行けず。
物語の構成としても、次郎長の話で始まったのに急に次郎長は登場しなくなり、暫くは森の石松の話に。それが次郎長の方に関係して来るのかと思いきやそうでも無いし、話がブツ切りの別な物語に変わってしまう。市川雷蔵目当てでこの映画見たのに、市川雷蔵登場するのは一時間も過ぎてから。しかも登場は20分だけで、大して活躍もしない。京マチ子も登場するけれど終盤のほんの少しだけで、人物登場の構成の配分の悪さったらありゃしない。なので、話も散漫。

剣劇も、竹光でのペタペタ舐める様な切り合いで軽過ぎて迫力が無く、「勝新太郎が奔放にチャンバラしてるなぁ…。」以上のモノが出て来ない。

役者は、次郎長演じる長谷川一夫はどうも微妙。新たに出て来た親分である次郎長なんだけれど、もうおっさんと言うか、おじいさん近くまで老けて見えるので、次郎長にあっていない様な。演技も何時もの長谷川一夫で、モゴモゴ話している時の聞き辛さったらない。
一番良いのは勝新太郎。見た目は二枚目、演じるのは女好きの三枚目と一番役が立っている。勝新太郎の森の石松を主人公にして話を回した方が良い感じがする。それと、何でか中村玉緒と勝新太郎が二人で会話する場面がわざわざ設けてあり、まだ結婚前なのにこの挟み込みは何なのだろう?

この映画、まるで義理人情モノみたいに良い感じにしているけれど、結局は賭博家業の犯罪者が「あいつら、無茶苦茶してる?よし、殺しに行くぞ!」と人を殺しまくって伸し上がった話なので、嫌な世界、嫌な時代、最悪の人々としか思わず。

☆★★★★

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