新しい人生のはじめかた

2013年11月08日 金曜日

ダスティン・ホフマンエマ・トンプソン共演の2008年の映画「新しい人生のはじめかた(Last Chance Harvey)」。

仕事が追い詰められたまま娘の結婚式の為にイングランドに渡ったハーヴェイ・シャインだったが、離婚した元妻は別の男性と結婚しており、娘も義理の父親に付添人を頼んだりするのを目にし、自分の居場所はそこに無いと感じてしまった。同じ様に、ケイト・ウォーカーも自分の居場所を見つけようとしていたが、新しい男性とのデートも上手く行かなかった。その二人が出会い恋に落ちる。

非常に大人しい、ゆっくりと描いた恋愛劇。
始まりからの30分位の、お互いに勇んで行った場所には自分の居場所が無い事を突き付けられ、その居心地の悪さ、嫌な哀しさを交互に描くのが中々上手く、映画の導入としては良い感じ。そこを見せといて、その後にお互いの全く別の世界へ踏み入れても、元々別の世界の人だからこそお互いがいるから逆に居場所があるという描き方は上手い。ただ、ダスティン・ホフマンがわざわざ階段登り始め、長めに階段を登るのを見せた所で「まさか…?」と思ったら、見事に心臓発作を起こし二人は合えないという、まるでホラー映画の「出るぞ…。出るぞ…。」の演出張りの分かりやすい展開と、分かりやすい別れの危機の訪れで、物凄く王道、悪く言えば使い古された都合の良過ぎる展開に悪い意味で笑ってしまった。その後も、特に振りも無いまま急に仕事が上手く行くなんて物凄く都合良過ぎで、それまで良い感じで流れていた脚本だったのに、最終盤で脚本グダグダになり白けてしまった。
それに、50歳前後のエマ・トンプソンが、70歳過ぎのダスティン・ホフマンに惹かれるってどうなんだろう?まだ同年位なら分かるけれど、ダスティン・ホフマンってどう見てもおじいちゃんだし、中でも一応そこには触れるけれど、50近くの女性は絶対年齢の事を考え、これからの事も考えるだろ。このダスティン・ホフマンの役は、冴えない女性をちょっと強引に誘い、冴えない彼女を受け入れてくれからエマ・トンプソンが惚れる以上のモノが無いので、見ていても「エマ・トンプソンなんでそんなに?」の疑問が解決しない。
ただ、エマ・トンプソンの冴えない中年感は素晴らしい。この映画でゴールデングローブ賞の主演女優賞を取ったらしいけれど、何故か助演でなく主演で、しかもミュージカル・コメディ部門で受賞なのは意味不明。この映画コメディ?確かに終盤の展開はコメディ染みていたけれど。
それと、娘は良い子の感じで描かれているけれど、食事会ではアメリカから来た父親の席を末席に。結婚式では知り合って数年しか経たない母親の結婚相手に付き添いを頼み、結婚式でもダスティン・ホフマンは一番後ろの席。仕事で披露宴に行けなくなったとダスティン・ホフマンが言っても止めもしない。別にダスティン・ホフマンが悪い父親だったなんて描かれていないので、父親に対する思いやりの態度は見せかけだけで本当の父親に対する愛情が全然見えず、全てはこの娘が諸悪の根源にしか思えない。やっぱり親の離婚を恨んでいて、その原因はダスティン・ホフマン側にあったと今でも恨んでるのか?

やっぱり、近年の恋愛映画の邦題ってクソだな。「新しい人生のはじめかた」って、驚く程印象に残らない、味気も何も無い題名。これからの人生を「新しく始める」のではなく、歳も取った人の「最後の機会」をどうするのかの話だろ。もっとマシな邦題を付けて、埋もれさせない位の商売勘定すら日本の配給会社は出来ないのかしら?

この映画、始めはじっくりと自分の居場所を描き良い感じだったのに、結局は終盤で良くあるハリウッドの恋愛映画のベタな展開にしてしまい、非常に凡庸な恋愛映画と言う印象しか残らない。

☆☆★★★

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