柳生一族の陰謀

2013年06月05日 水曜日

深作欣二監督、萬屋錦之介、三船敏郎千葉真一松方弘樹西郷輝彦、大原麗子、原田芳雄、丹波哲郎、夏八木勲、金子信雄、成田三樹夫、真田広之、志穂美悦子、福本清三等々有名俳優多数出演の1978年の時代劇「柳生一族の陰謀」。

徳川二代将軍秀忠が急死し、次期将軍候補の家光と忠長の跡目争いによって権力者達が反目し合う中、秀忠の遺体から胃袋が盗まれる。秀忠の意思では忠長が跡を継ぐはずだったので家光の家臣達が秀忠を毒殺し、その事を知った忠長側は証拠となる胃袋を持ち出そうとしたのだ。お互いが権力を握る為の策略を知り、本格的に争い始め、家光側は柳生一族を味方に付け邪魔者を実力で排除し始める。

これだけの俳優が揃っているけれど、全体的に非常に安っぽい。画的にも、セットや照明も音楽も音楽の使い方も効果音も自然な感じではなく、如何にもこの時代の東映太秦のTV時代劇を見ている感じ。
登場人物も非常に分かり易い者ばかりで、良い奴は良い奴でカッコ良い。悪い奴は嫌らしい。若い奴は無謀等、これ漫画の映画化か?と思う位のはっきりとした、し過ぎた役柄ばかり。成田三樹夫の公家の役なんて本当に漫画で、あ~あ…。
演技に関しても、萬屋錦之介は一人だけ物凄い大仰な時代劇演技で最早歌舞伎みたいで一人浮いているし、それ以外の武家もわざとらしい程の時代劇演技。しかし、松方弘樹はヤクザ映画演技だし、柳生の人達は結構現代劇的演技で、千葉真一は千葉真一だし、丹波哲郎も何時もの丹波哲郎。真田広之や志穂美悦子とかの若手は、如何にもこの時代の若手の下手クソ演技で、皆自分ばかりの演技で統一感など無く、物凄くバラバラ。他の人々も時代劇口調な上、やたらと叫ぶ様な大声で怒鳴るものだから何言っているか聞き取り難いし。
剣劇場面も時代劇の剣劇ではなく、JACのアクションで軽いチャンバラや飛び跳ねてのアクションで、時代劇のチャンバラとしての見応えも薄いし、人々の死んで行く所の安っぽさったら無い。最後の唐突な萬屋錦之介対丹波哲郎の対決で、萬屋錦之介真っ二つかと思いきやの場面の馬鹿らしさと安さと言ったら…。アクションも特撮映画とか、漫画的な感じ。

話的には、将軍する気だった家光は将軍に付けない事を知った周囲の人達によって争いに放り込まれ、一方の忠長は兄の家光に譲る気満々だったのに、同じく周囲の人達と家光側の人達によって争わなくてはならなくなってしまい、人の権威によって自分の欲望を満足させようとするドロドロした非常に胡散臭い世界が描かれ、結構おもしろい。大勢の登場人物をある程度万遍なく見せてはいるし、まとまってはいる。
ただ、一番最後の柳生十兵衛が家光の首取ってしまう所なんか、単に物語的爽快感を出す為だけの余計な無茶で、しかもこの首が完全に作り物、しかも安い作り物なので、萬屋錦之介が「夢じゃ!夢じゃ!」と言ってるけれど、誰が見たって「それ、柳生十兵衛の手作り偽物の首だよ…」と突っ込んでしまう最後の最後に台無しにしてしまう酷い場面で終わってしまうけれど。

話的には政治的策略を巡る話で中々おもしろく、これだけ大勢の人を見せてはいるけれど、役者が勢揃いな分本来は監督がまとめなくてはいけないのに、各自が自分の演技を押し通したままで演技的なまとまりの無さは酷いし、映像や音楽がTVドラマ的な安さで映画としてのまとまりや完成度は薄過ぎ、今見ても当時のオールスター映画と言う部分ばかりが強調され、正直時代性ばかりで真剣に見る気がして来ない。
テレビドラマみたいと思ったら、この映画後TVドラマ化されているんだな。

☆☆★★★

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