チャイニーズ・ゴースト・ストーリー

2013年06月04日 火曜日

レスリー・チャンジョイ・ウォン共演の1987年の香港映画「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(倩女幽魂)」。

借金の取り立て人のレスリー・チャンが謎の道士と出会い、謎の妖怪と出会い、不思議な事に巻き込まれるが、それは偶然出会った謎の美女ジョイ・ウォンに関係しているらしい。ジョイ・ウォンは無邪気で善良なレスリー・チャンに惚れ、レスリー・チャンも彼女に惹かれて行くが、彼女は実は…。

この映画が凄いのは、時代劇に、武侠モノに、ラブコメに、哀しい恋愛劇に、怪奇モノと色んな物を混ぜ込んでいて、しかもそれが上手く混ざり合い「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」と言う一分類になっている事。更に香港映画の特徴でもある、人物やカメラの動きあるワンカットの構図や、正面からや真っ直ぐではない斜めの画面の構図、人物の切り返しが早いカット割り、短いカットと長めのカットとの対照的な編集とか、非常に小気味の良い演出で、今見ても全然古くない構成と編集。アクション場面のワイヤーアクションによる人間離れした飛んだり跳ねたりの動きまくりの見せ方は流石香港映画。これの連続で、全然集中力が切れる事無く一気に見せる。特に冥界での道士のおっさんの一人での張り切りのカッコ良さや、敵の妖怪の体から無数の人の頭が飛び出して来る所とか、アクションや特撮や編集はCGバリバリの今の映画では無い興奮があるし、CGに慣れてしまった今見ると、その創意工夫に「ほ~!」と感心も。
でも、香港映画の特徴でもある、急に変な笑いを入れて来たり、きっちり振るけれど全然面白くも無い笑いを入れたり、各人物の主題歌とそのプロモーション・ビデオ的な映像が脈絡も無く入ったり、そのしょっぱさももちろんある。まあ、そこはニタニタする所なんだろうけれど。
あと、主題であるはずの恋愛話の部分は、全体的に結構早い展開で進み、余韻も無く終わって行くので哀しさがどうにも足りない感じはする。

レスリー・チャンって、思いっ切りジャニーズ顔。役柄的にも抜けていてるけれど真面目な青年で、お姉さん好みな男の子。
何時の時代か分からない昔の中国ではあるけれど、雰囲気が1980年代後半から1990年代前半のバブル期の感じ。特にジョイ・ウォンの化粧の時代性と言ったら、まさに。当時は美人だったのかもしれないけれど、今見ると美人と言われると微妙。だから恋愛劇にも身が入らないし、しかも映画内ではジョイ・ウォンが相手を騙して命を奪う役柄なので「レスリー・チャン、騙されるな!」とがんばれレスリー・チャン感が出て来てしまい、恋愛劇にいまいち乗って行けない。

途中で「般若波羅蜜(ハンニャハラミ)」と唱える場面があるのだけれど、広東語で「ハンニャハラミ」と言っているのを聞くと「for you follow me.」と言っている様に聞こえてしまい、何か変な感じ。確か「100分 de 名著」の「般若心経」の回見ていたら、この「般若波羅蜜」の部分はサンスクリット語の発音をそのまま音写していると言っていたはずだれど、サンスクリット語を漢字にしてその漢字を更に日本語読みで読めば、そりゃあ地域によって同じ言葉を喋っているはずなのに全然違うわ。だったら日本語での発音なんて最早意味無いじゃん。

この映画、荒唐無稽な漫画的な話を哀しい恋愛劇を主軸にする事で上手くまとめた、中々良く出来た映画。しかしこの話って、何の取り柄も無いけれど真面目さと一途さの若者が謎の美女に惚れられ、彼を助けてくれる人や敵となる妖怪と戦ったりって、今の日本のアニメ好きが好みそうな話。と言うか、良く知らないけれど今のオタク系アニメの元ネタの一つでもあるのだろうか?そんな題材や話を、見せるアクション場面もきっちり入れて実写映画でちゃんと作り上げているこの時代の香港映画って凄い。

☆☆☆★★

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