サイコ
2013年04月23日 火曜日アルフレッド・ヒッチコック製作・監督、アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー共演の1960年のサイコ・サスペンス映画「サイコ(Psycho)」。
ジャネット・リーは付き合っている彼氏の借金の事があり、仕事の金を横領し、自動車で逃亡。夜になり、モーテルに泊まる事にするが、その管理人アンソニー・パーキンスの言動が怪しく…。
この映画、話の構成や展開は結構おもしろいけれど、スリラー映画としては今見てしまうと結構微妙。
構成は、始まりはジャネット・リーの大金の横領と逃亡劇で引っ張っておいて、それが本筋だと思ったら中盤で彼女は退場し、話の主題はアンソニー・パーキンスへと移って行くという結構意外な展開。この移行も、序盤で延々と自動車を運転するジャネット・リーや、彼女を怪しむ警察官等、観客の目線を彼女の横領からの逃亡劇に振っておいてから、単なる脇役風にアンソニー・パーキンスを登場させ、始めは良い感じの青年から、何気無い会話から徐々に彼の心の闇を見せながら観客の興味を誘導させ、物語の主人公の移行を自然に行なっている。それに母親をかばう息子と言う誤誘導もちゃんと機能して、推理サスペンスとしても中々。
しかし、非常に説明的。ジャネット・リーが主人公の時や、中盤辺りまではサスペンスとしておもしろかったけれど、それ以降のジャネット・リー捜索になると一々登場人物達が説明的な台詞や、行動をし、話が間延びし白けて来る。最後の精神科医の不必要な程の丁寧な御解説なんて、分かり切った事で今更延々と説明を続けても二度手間感ばかりで、折角の最後で非常に台無しになっている。
また、ホラーとしては1960年の映画だけあって、物足りなさがある。
有名な、ジャネット・リーがシャワーを浴びている所に入って来てめった刺しという場面は、この場面だけ急にカット割りが多くなっているけれど、それでも今見てしまうと迫力が無い。残酷に刺している感、必死に抵抗している感が緩やかな、撫でる感じ位しか感じないし、血も少な目で、当時はどうだったか分からないけれど大して衝撃的な場面でもない。
それよりも、私立探偵が家の二階に上がろうとして、行き成り部屋から早足で歩いて来て一突きするのを真上からのカメラで撮っているという場面の方が衝撃的で、印象的だった。
それに、セットでの撮影が如何にも作り物のセットと照明なのが安っぽい。これはこの時代のハリウッド映画だからしょうがないと言っても、結構萎える。
この映画は当時ヒットして、後年の映画にも強い影響を与えたのは有名。劇中でアンソニー・パーキンスが延々鳥の剥製の話をしているけれど、今でもヤバい奴があんまり関係無い話を急に始め、それが実は後に関係している比喩だったというのは、この映画が走りかな?
それに今でも映画やTVドラマではモーテルで何かしらの事件が起こり、「モーテルって危ない所」という印象があるけれど、その走りもこの映画かな?
序盤の 金を盗んで逃げている自動車を運転しているジャネット・リーの正面の顔をずっと映し続けながら、別の所で起こっている出来事を音声のみで聞かせ続けるという説明方法は、結構おもしろい演出。今なら画面が単調になるので、絶対カットを割って別の場面を挟むけれど。
ジャネット・リーの序盤、アンソニー・パーキンスが登場しての中盤まではおもしろいのに、終盤のジャネット・リー探しになると、もっと早く畳み込んで行けば良いのに探偵や妹等の場面に無駄が多く結構グダッとして来てしまい、最後の精神科医の説明なんて余計だし、どうにも尻すぼみな感じ。終盤までの展開はおもしろいし、最後のアンソニー・パーキンスのいない母親の独白が彼の頭の中だけで聞こえているのなんて秀逸な締めな分、終盤の集中力の持たなさは結構大きい失点。それにサスペンスとしてはいいけれど、ホラー映画としては今見てしまうと微妙な評価になってしまう。
☆☆☆★★