マーニー

2013年04月22日 月曜日

アルフレッド・ヒッチコック製作・監督、ティッピ・ヘドレン主演、ショーン・コネリー共演の1964年の映画「マーニー(Marnie)」。

事務員や秘書として会社に入り、やがて大金を盗んで消える事を繰り返しているティッピ・ヘドレン。彼女は何故か赤色を怖がっていた。彼女が次に犯行を行なった会社の社長ショーン・コネリーにバレてしまうが、彼は何故か彼女を咎めなかった。

ヒッチコックってサスペンスの巨匠だからこの映画にもサスペンスを期待するけれど、非常に微妙なサスペンス映画。ティッピ・ヘドレンの「赤色のトラウマ」が物語の骨子なのに、延々ショーン・コネリーとのどうにも転ばない彼からの圧力的な有無を言わさない恋愛話ばかりでグダグダと引っ張り、同じ事を繰り返している様な時間の水増し感が強い。
それに結構メロドラマで「うわっ…」ってなる場面も多かった。雷を怖がるティッピ・ヘドレンの場面の甘々なメロドラマと言ったら。ショーン・コネリーが迫って来てのキスシーンって、当時は女性、男性共に盛り上がるモノだったのだろうか?物凄くネットリして、下衆っぽさが一杯なんだけれど…。
そして、そのショーン・コネリーの役が結構無茶苦茶。怖がって身動き出来ない女性に問答無用でキスしたり、病気で亡くなった妻の残した物が偶然壊れてしまっても、残念とかの感情も全く出さずに更に壊してお終いとか、物凄い軽薄。しかも、ティッピ・ヘドレンが連続窃盗をしていた事を知っても、彼女がそれでも嘘を付き続けていても、「君が好きだ。」で特に咎めもしないし、結婚までしてしまい、ただ抑えきれない性欲の為にしてはやり過ぎだし、この人物は一体何を考えているのかさっぱり分からない。「誰か他の男に知られたら、脅迫され、体を求められ、刑務所に入れられるぞ!」と言っているけれど、自分も犯罪をネタに結婚までして彼女に迫るし、言っている事とやっている事の整合性なんてないし。

構成も、前半はティッピ・ヘドレンの奇行とトラウマで彼女を見せていたはずなのに、中盤辺りからショーン・コネリーが彼女に対してどうするかが中心になって来て、主人公の急激な転換で同じ映画を見ている気がしなくなって来る。

ただこの映画、掴みが抜群に上手い。始まりは駅のホームを歩く女性の後ろ姿を無音で長く見せ、「何だ?」と思っていると、次の場面では「大金が盗まれた!」と、まんまと演出意図にはまる。その後のティッピ・ヘドレンの髪の毛の色を落として本当の自分に戻る所も良いのに、それもその辺りまで。以降は、話も演出も雑な感じ。

よく分からないのは、外での撮影。ほんの一分も無い様な外の場面でも全部室内でセット組んで、背景を画で描き、自動車を走らせて、わざわざお金と時間をかけている。何でそこまでするのだろう?だったら、普通に外で撮影すれば?と思ってしまうのだけど。一方で、建物の全景はもちろん実際の外の建物を撮ってはいるけれど、その背景がマットペインティングで合成していて、何でそこまでして作り物にするのかが、いまいち分からない。極端にセットでの撮影が多い割に、急に実際の外での撮影も入って来たり、でも外なのに合成も多かったり、映像的均衡の無さで非常に映像の出来が不安定。

始まりでグッと掴まれ、大金を盗み続けるトラウマを抱えた女性というサスペンスでおもしろそうな導入だったのに、それ以降はショーン・コネリー攻める、ティッピ・ヘドレンが拒否してトラウマ発動の繰り返しばかりでいい加減退屈し、最終的に「小さな女の子が叩いたら死んじゃいました」、そして盗みも何だか訳の分からないままで、全てが非常にしょうも無い感じで終わってしまい、ほんと「何だかなぁ…。」な映画。

☆★★★★

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