めまい

2013年04月21日 日曜日

アルフレッド・ヒッチコック製作・監督、ジェームズ・ステュアートキム・ノヴァク共演の1958年の映画「めまい(Vertigo)」。

犯人を追跡中に屋根から落ちそうになり、高所恐怖症となってしまった為警察を辞めたジェームズ・ステュアートは、友人から何かに憑りつかれた様にフラッと行動している妻の調査を依頼される。彼女の行動を追って行くと、100年程前の女性の不幸な話が浮かび上がり、彼女と尾行している友人の妻が似ている事が分かって来る。

アルフレッド・ヒッチコックのサスペンス、ミステリーにしては物凄くのっぺりと退屈する様な映画。
始まりは、住宅地の屋上での犯人の追走劇で「何だろ?」と興味のある導入なんだけれど、それが終わるとジェームズ・ステュアートの高所恐怖症に関する会話劇が続き盛り上がりが無くなってしまい、しかもその高所恐怖症が活かされるのは随分後なので、導入でのつまづきが早い。その後、キム・ノヴァクを尾行する事になるけれど、追う方のジェームズ・ステュアートも追われる方のキム・ノヴァク、どちらも黙って行動し、ただ単にジェームズ・ステュアートが付いて行くだけの展開ばかりなので退屈してしまう。その後も、「そりゃあ、そういう展開になるだろうなぁ…」と思えるジェームズ・ステュアートとキム・ノヴァクの関係がまったりと展開され、中盤以降しょうもないメロドラマになってしまう。中盤で行き成りの展開があるのだけれど、キム・ノヴァクがいなくなった後は、またもやまったりと何も起こらない展開が進むと、突然新女性の登場でその彼女の話が中心になり、今までずっとジェームズ・ステュアート目線で進んでいた話が急に彼女目線で見せてしまう構成になってしまい、何の映画だったかあやふやになり始める。しかも、今まで良い人だけれど結構気の弱いジェームズ・ステュアートが突然ガンガン押しまくるサイコパスになってしまい、終盤が後付けした様な展開で、これまでとは別モノの様な雰囲気になってしまう。終盤に来て、何か変な展開と見せ方に加え、更に結末に至ると物凄い「あれれ…?」感ばかりで終わって行く。

ミステリー・サスペンスなのに、今見てしまうと笑ってしまう所も所々出て来てしまうのも痛い。初っ端から、ジェームズ・ステュアートが屋根から落ちそうになり、雨どいに掴まっているのを、仲間の警官が助けようと手を伸ばしたら、そのままストンと落ちて行ったのに笑ってしまった。屋根から自分から落ちてしまうコントの様。
また中盤の、教会の塔をキム・ノヴァクを必死に追いかけながら階段を上っているのに、一々下を見て「高い!怖い!」となってしまう可愛らしいジェームズ・ステュアートにも笑ってしまった。確かにそれがないと成立しない話ではあるけれど、結構わざとらしいし、「ホラー映画は怖くて見たくない!」と言いながら、顔を覆った指の隙間から見ている様な子供みたいに見えてしまった。
ジェームズ・ステュアートが見る点滅する悪夢が悪夢ではなく面白で、特にその悪夢の中で首だけで飛んで行くジェームズ・ステュアートには爆笑してしまった。もう、シュールコント。

わたしがジェームズ・ステュアートの若い時の映画ばかりを見ていたので、白髪頭で登場した彼に「うわ!老けた!」と思ったけれど、この時まだ50歳。にしては老け気味。
キム・ノヴァクは25歳だけれど、そんな若さには見えない老けがある。若いのにおばはん顔で、しかも美人かと言われると美女と普通の中間位なので、この映画全編で美女の雰囲気で撮っているのには結構微妙な違和感を感じてしまう。ただ、彼女が二役目で出て来た時は、全然気付かない程別人になっていて感心。化粧が濃いと言うのはあるけれど。

アルフレッド・ヒッチコックの中でも傑作の部類という評価らしいけれど、ミステリー、サスペンスにしては緊張感や恐怖感は無いし、話も大しておもしろくないし、大分退屈。特に前半ののっぺりとした盛り上がりの無い展開で一気に置いて行かれ、中盤の安易なメロドラマに辟易し、終盤はむしろジェームズ・ステュアートがそれまでと別人物なサイコパスになってしまい、更に置いて行かれ、結末の都合の良さと蛇足感で、結局「めまい」を起こしたのはわたしの方だった。

☆☆★★★

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