ソウル・キッチン
2012年12月10日 月曜日ファティ・アキン製作・監督・脚本の2009年のドイツ映画「ソウル・キッチン(Soul Kitchen)」。
倉庫街の様な寂れた所で冷凍食品を調理して出している様な大衆食堂のオーナーが、上海に行った恋人を追い駆けたい為に、料理の腕はあるけれど誇りを切り売りしないので客に文句を言い首にされた料理人を雇う。それでも今まで以上に廃れ始め、税金滞納や衛生局からも目を付けられ、仮出所中の兄も頼まれて雇い、オーナーもぎっくり腰と散々な中で、店を巡る人々のお話。
話的には、てっきり題名の「ソウル・キッチン」と序盤で物凄いアクの強い料理人が出て来たから、経営者と料理人で二人三脚で食堂を盛り上げて行く話かと思ったら、お客が気に入る音楽かけたら繁盛しました位の話で、食堂の話なのに料理が重要な要素でも無い。要は食堂に執着するけれど非常にいい加減なオーナーのドタバタした顛末記で、そこに兄弟関係の話も入り、人物は色々出て来る割りに「ソウル・キッチン」を中心に展開する群像劇でも無く、オーナーの話に収束して行く。
毛色としては全編ホワッとしたコメディ。要素としてはドタバタコメディなんだけれど、ドイツの雰囲気でなのか、ドタバタ色が強くない、非常に静かでサワッとくすぐる様な笑いで中々心地良い。そんな雰囲気でも登場人物達は皆陽気で、ちゃんとコメディな人々。中盤辺りまではこのフワッとした笑いで中々良い感じなのに、終盤になると急にコメディ部分がドタバタし始め、それまでのしっかりしたコメディからの雰囲気が崩れ始め、見ていてもちょっとしょうも無くなって来る。
いまいち分かり難いのは、ドイツでギリシア系で音楽はファンクやソウル・ミュージックだという事。ドイツ人的には普通なドイツの生活なんだろうけれど、ドイツの実情を知らないと、ドイツではギリシア系はどういった立場で、主人公兄弟が冴えないのが単なる個人的問題として描いているのか、それとも社会的実状の反映や比喩なのか良く分からないし、ドイツでファンクもどうにもピンと来ない。この違和感がすんなり入って行けない原因。例えばドイツ人が、大阪から東京に出て来てお好み焼きを始めた店でレゲエの演奏始めた日本映画見ても、これが何なのかさっぱり分からないだろうのと同じ感じ。
中盤辺りまでは店を中心に巡るほんわかとしたコメディだったのが、終盤で急にドタバタし、話や人物が散漫になり始め、何だか尻つぼみ的に終わってしまった印象。主人公の人生を見せる話なんだけれど、題名と料理を見せる序盤の展開と演出でレストランと料理の話を期待したのに、そこから徐々にずれ始めた展開にどうにも乗り切れずに「あれっ?」という感覚が抜けなかった。あと、主人公のギリシア系と言うのも、どうにもモヤモヤしたままの要素だった。
☆☆★★★