瞳の奥の秘密
2012年12月06日 木曜日アルゼンチンでは興行収入で11週連続1位になり、アルゼンチンアカデミー賞で13部門で受賞。第82回アカデミー賞外国語映画賞も受賞した、アルゼンチンとスペイン共作の2009年の映画「瞳の奥の秘密(El secreto de sus ojos)」。
定年退職した判事が、自伝的小説を書きながら25年前に担当した事件を思い出して行く。
全体的にヨーロッパ映画的とも言うのか、小説的と言うのか、非常にまったりと話は展開し、サスペンスとしては特に緊迫感はなく、どちらかと言うと犯罪に巻き込まれた人々の思いを淡々と描いている。ただ、その淡々と何か劇的な事が起こる訳でも無い展開で、どうにも集中力が続かない。
この、現在は事件を思い出し、それを小説として書きながら、その過去の回想が入り込んで来る構成は良いのだけれど、小説の執筆には参加していないはずの主人公以外の登場人物しか知らない出来事も出て来るので、そうなるとその部分は主人公の創作という事を早い段階で気付き、結局事件の事実を描く訳でなく、この映画全体が主人公の気持ちを描いていて、こちらとしては事件の事実を知りたいのに、段々と事件の捜査の顛末がどうでもよくなり興味が失せて来る。退屈な展開と演出もそれに加えて、一時間以上特に何か見えて来る訳でも無い展開に疲れて来る。
事件の展開にしても、ただ「被害者の写真の中に、彼女を見ている男がよく映っているから、こいつが怪しい!」で実際そうだったり、どうやってか分からないまま逃げ回っている犯人をあっさり発見したり、普通の人なのだろうに執念だけで犯人を見付け拉致、あんな簡単な檻で監禁出来、一切反抗もしないとか、場当たり的なのに事件解決に向かって進んでしまうご都合主義で非常に粗い。最終的に「あいつ可哀そうな奴だからなぁ…」で、トンデモない残酷な犯罪者をどうにもしないとか、主人公の正義がどっかへ行き、自分が気持ち良い方向へだけ行ってしまう締めにも呆れてしまった。
それと良く分からないのは、この主人公は判事なのに現場捜査をしている事。アルゼンチンではこれが普通なのか、それともこの判事が普段からこんな越権行為を普通にしている無法者なのか、それともこの事件だけなのかもさっぱり分からないので、どうも話に入って行けない。
映像的にも、動きが少なく人物を画面に収める様な構図だったはずなのに、途中急に走りまくる人物を手持ちカメラで長回しで追いかけるアクション・サスペンスの映像に切り替わり、何じゃこりゃな急激な変化。その後も、急にわざと画面をブレさす近年流行の緊張感を出す為の紋切り型の映像にしたり、やっぱり何じゃこりゃ…。
俳優は現在の老けた顔から、過去の若い時を見ると確かに時間の経過を感じられ、上手く年齢を表現しているし、演技でも若さと枯れた感じで年齢を出しているし、抑えた演技で中々良い感じ。他の演技や、演技部分での演出は中々良い。
この映画、正直何でアルゼンチンで大ヒットしたのか分からない。前半取り留めも無い展開で非常にダラダラと物語は展開し、その時点で真剣に見る気は失せる。事件部分の話は粗いし、雰囲気だけで持っている様な映画。
☆★★★★